2021.06.09

半年ぶりの公式戦を経て夏の全国へ…仙台大明成史上、これ以上ない大型チームの挑戦

リバウンドと声でチームを支える仙台大学附属明成のキャプテン丹尾久力[写真]=小永吉陽子
スポーツライター

全試合100点ゲームだが課題は山積み

 6月7日、昨年のウインターカップ王者の仙台大学附明成高校が危なげなく宮城県予選を勝ち抜き、インターハイの出場を決めた。県予選の準決勝では東北高校に134-75、決勝では東北学院高校に102-62。前半から大勢の選手を起用したうえでの100点ゲームは貫禄勝ちと言えるだろう。ただ、内容としてはエンジンがかかるのが遅く、佐藤久夫コーチが今年のテーマに掲げる「相手に噛みつくように闘志を出す『Mの狂犬』」にはなりきれず、様々な課題が出た予選だった。

 それも致し方ないことだった。明成は公式試合を行うのが昨年のウインターカップ決勝以来で、実戦からは約半年も離れていた。宮城では県の新人戦、東北ではブロック新人戦が中止。また追い討ちをかけるように、3月中旬から県の緊急事態宣言の発令により、春休みもゴールデンウィークも一切の練習試合ができなかった。3月13日に盛岡市立高と東日本大震災の復興祈念試合を行い、4月24日に仙台89ERSが企画した白鷗大学とのエキシビションマッチを行っているが、対戦したのはその2チームのみ。コロナ禍において満足に試合ができないのはどこの高校も同じだが、他の強豪校に比べて、圧倒的に対外試合の経験が少ないことが課題だった。だからこそ「公式戦が教えてくれたことはとても多かった」と佐藤コーチは語る。

「これまで対外試合ができていない割にはまあまあの内容でしたが、それは3年生が頑張ったから。今年は2年生がガードを務めていますが、その2年生に経験がなくて、(山﨑)一渉と(山崎)紀人(ともに3年)を生かすためにどうしようかとミスを怖がっている状態。一渉も紀人も自分がどう生きるか模索中です。だから実際に公式戦をして、『もっとやらないとダメだ』と選手たちが実感したのではないでしょうか」

チームに活力を吹き込み、カギを握る3年生の山崎紀人[写真]=小永吉陽子

目指すは「明成史上、最高の大型チーム」

 昨年のウインターカップで日本一を遂げた3本柱は健在。エースの山﨑一渉はもはや30得点するのは当たり前で、決勝の東北学院戦では37得点を叩き出した。山崎紀人はインサイドプレーのみならず、持ち味のパスセンスを発揮してチームを機能させる潤滑油的存在。ビッグガードの菅野ブルース(3年)は、膝の怪我でプレーができなかった昨年の悔しさを高校最後の年にぶつけようとしている。彼らの経験値と195㎝を超えるサイズからすれば、インターハイの優勝候補にあげられるのは当然のことだろう。

 ただ、昨年優勝したメンバーが残るからといって、今年も順調にチーム作りが進むかといえば、そんな簡単なことではない。昨年はサイズのある選手たちをオールラウンドに鍛え、ディフェンスの機動力を生かしてウインターカップを制した。とくに前線から激しいディフェンスで当たる一戸啓吾(日本大学1年)、越田大翔(明治大学1年)、山内ジャヘル琉人(大東文化大学1年)らガード陣のアグレッシブさは際立ち、ベンチから出てくる選手のサイズと選手層で凌駕した。今年のチームは現時点では昨年のようなディフェンスの強度も、選手層にも及んでいない。そうした中では、オフェンスをよりバージョンアップさせようと、オンボールとオフボールのスクリーンを仕掛けるボールムーブを構築し、スモールラインナップも鍛えているところだ。

 今は模索中とはいえ、昨年も「大型化を目指す」と宣言をして日本一にたどりついた佐藤コーチの手腕と覚悟、そして、選手たちのスケールの大きさにはやはり期待せずにはいられない。

 先発だけでいえばサイズでは昨年を上回る。予想されるスターティング5は、菅野ブルース(197㎝)、山﨑一渉(199㎝)、山崎紀人(195㎝)ら3年生に加え、ポイントガードに挑戦している2年生の内藤晴樹(188㎝)と1年生で起用されているウィリアムス・ショーン莉音(198㎝)が並ぶ。

「目指しているのは、今までの明成の中で“これ以上大きくならない”というくらい大きくして、オールラウンドにプレーすること。面白いチームにしたいですね」と佐藤コーチ自身が壮大な挑戦に心を躍らせて指導にあたっているのだ。

 チームを支える丹尾久力キャプテン(3年)は力をこめて言う。「これからは一渉とブルースがU19日本代表で抜けるかもしれないし、東北大会も中止になってしまいました。でも僕らには毎日の練習があります。チーム内で切磋琢磨してインターハイに臨みます」

取材・文=小永吉陽子

宮城県予選の5試合を100点ゲームで制した仙台大学附属明成[写真]=小永吉陽子

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