2023.12.28

代表活動にキャプテン就任…“ゴール下を支配する看板娘”大上粋奈が過ごした怒とうの3年間

高校最後のウインターカップは3回戦敗退で終わったものの、広島皆実で充実した3年間を過ごした [写真]=伊藤大允
フリーライター

 実力差はほとんどなかった。それでも最後に3点上回ったのは聖和学園高校(宮城県)。県立広島皆実高校(広島県)は1点リードの最終盤に3つのターンオーバーを犯し、全国ベスト8には届かなかった。

 両チームがぶつかり合った「SoftBank ウインターカップ2023 令和5年度 第76回全国高等学校バスケットボール選手権大会」女子3回戦は、最終スコア55-58で試合終了。広島皆実は1点リードの残り37秒、背番号4の大上粋奈(3年)がハイポストでボールを受けた。「相手が寄ってくるのはわかっていたんですけど、それでも絶対に自分が攻めるという気持ちでした」。リングへのアタックを試みたが、ダブルチームで抑えにきた相手にボールを奪われ、逆転を許してしまった。

「最後の最後で自分たちの集中力が切れてしまって……。自分たちのミスで勝つチャンスを逃してしまったことがすごく悔しいです」

 大上は力のない表情で試合を振り返ったが、キャプテンかつ不動のセンターとして40分間コートに立ち続けた。チームは、ともにフル出場を果たした松前結奈(3年)が27得点を挙げて攻撃をけん引。大上も16得点13リバウンドの活躍で攻守を引っ張り、「自分がシュートを外してもリバウンドを取ってくれるし、チームのミスもカバーしてくれる選手なのでとても頼りがいがありました」と、松前は主将の頼もしさを語った。

聖和学園戦では16得点13リバウンド2スティールを記録 [写真]=伊藤大允

「ゴール下を支配するチームの看板娘」

 182センチの高さを誇り、入学当初から先発を担ってきた大上にはそんなキャッチコピーがある。

 文字どおり、彼女は3年間をとおして広島皆実のゴール下に君臨し続けた。U16、U17、U18の日本代表にも選出され、チームと代表活動を並行。「FIBA U17 女子バスケットボールワールドカップ ハンガリー 2022」ではアメリカやドイツなど強豪国とも戦った。代表合宿に参加するため、広島から関東までの移動を何度繰り返したかわからない。さらに今年は広島皆実のキャプテンにも就任し、精神的にもチームを支える立場になった。

「キャプテンとしてコートでもコート外でもチームをまとめないといけないし、 チームで結果を残さないといけないなかで、自分が得点を取れなかったこともありました。自分のことで精一杯なのに、チームのことも考えないといけないという両立がすごく難しかったです」

 大上は「すごくしんどかったし、大変な時期もあった」とこの1年を回顧したが、「その分、自分が一番成長できた」とも話した。

「高校に入ってきた時は本当に何もできなかったです。でも、とにかく素直に努力を積み重ねて、一つひとついろいろなことができるようになっています」

 以前、そんな言葉で大上のことを話していたのは広島皆実の村井幸太郎コーチ。怒とうとも言える日々を駆け抜けた本人は、3年間での成長をどう感じているのだろうか。大上は言う。

「中学校の頃は、得点を取るというよりリバウンドで貢献する選手で、チームの中心選手ではなかったです。けど、高校に入って代表選手に選ばれたり、3年間スタメンで試合に出させてもらったりしたことで、“考えるバスケ”をしっかり学びました。自分自身が中心選手となって点を取ることもそうですし、人間的にもすごく大きく成長できた3年間だったなと思います」

 ゴール下を支配する広島皆実の看板娘は、これからさらにプレーの幅を広げて飛躍を目指す。コートを支配する日本の看板娘になるために。

文=小沼克年