2022.02.27
2月26日、「FIBAバスケットボールワールドカップ2023 アジア地区予選」Windows2、日本対チャイニーズ・タイペイの一戦が沖縄アリーナ(沖縄県沖縄市)で行われ、日本は76-71で勝利。トム・ホーバス氏が男子日本代表のヘッドコーチとなってからの待望の初白星を飾った。
しかしながら世界ランクでも格下(日本は37位、チャイニーズ・タイペイは66位)で、今回は大学生などアマチュアとの混成チームを組んで臨んできたチャイニーズ・タイペイに、予想以上の苦戦を強いられた。実際、チャイニーズ・タイペイに40分中、28分半もの間リードを保つなど、わずかながら試合の大半でペースを握られた。
昨年11月のWindow1での対中国では2試合とも出だしの悪さが際立ち、連敗につながる大きな要素のひとつとなったが、この日も、試合開始直後の日本はどこか手探りの状態で序盤を戦っていたように見受けられた。対するチャイニーズ・タイペイは、前日の夕方にオーストラリアとの対戦があったばかりにも関わらずエネルギーを出した攻撃的なプレーで勢いを得た。
今回のWindowでの注目ポイントのひとつは、ホーバスHCが採用する「ファイブアウト」のスタイルに選手たちが慣れ、実践することができるかだった。だが前半では、3ポイントシュートは数こそ多く打ててはいたものの、選手もボールも動いた中でオープンな者が打つといった目指す形ではなく、ホーバス氏が東京五輪で銀メダルに導いた日本女子代表のような爆発力を発揮することはできなかった。
「第1クォーターでのうちのオフェンスのバランスはまったくだめで、打った3ポイントは14本、2ポイントは4本だけでしたが、これはうちのやりたいことではありません。うちとしてはそこのバランスを50-50かもしくは2Pのほうが少し多いくらいという具合にしたいのです」
試合後の会見で、ホーバスHCはこのように述べている。女子代表が3ポイントを多用したこともあって、メディアやファンはホーバス氏の男子代表についてもどうしても3Pばかりに焦点を当てがちだ。しかし「3Pを多く打つ」は正解ではなく、実際は、2ポイントはリングをアタックすることと、ペイントの外からのいわゆる「ロング2」を打つくらいなら得点効率の良い3Pを打つことでより得点効率を高める「アナリティクス・バスケットボール」の重視というのが彼のやろうとしていることなのだ。
前半での反省を生かしつつ、後半の日本はかなり選手の動きが多くなり、この日のヒーローとなった西田優大(シーホース三河)を中心により積極的にドライブインが見られるようになり、そこからそのままレイアップ、あるいはキックアウトパスが決まるようになっていった(チャイニーズ・タイペイは前日のオーストラリア戦から連日の試合となり、肉体的疲労があったようにも思われた)。
「うちのチームではファイブアウトに真剣に取り組んでいますし、段々と良くなってきています。5人が外でプレーするファイブアウトをやろう、と言うのはシンプルですが実際には慣れるのには時間がかかります」
ホーバスHCはこのように語っている。
ちなみに同HCはタイムアウト時、東京五輪で女子代表まったく使っていなかった作戦ボードを用いて指示を出していた。前述のWindow1でも使用していなかったはずだ。練習で繰り返しやってきたことを改めて試合の時にボードに書いて示す必要はないというのが彼の持論だが、Bリーグのシーズン中で短い合宿期間では「繰り返しやってきた」というレベルに持ってこられていない難しさがあるからこそ、そのようになったのではないか。
チャイニーズ・タイペイの新帰化選手で211センチと長身のウィリアム・アルティーノにはポストプレーからの得点を許す場面が多く、全体のリバウンドでも49-38と負けている。また記録したスティールがわずか3本で相手からのターンオーバーも7本しか奪えなかったことなど、「しつこさ」を強調するディフェンス面でもかなり課題が残ったように思われた。
休むまもなく27日夜には、オーストラリア戦(世界ランク3位)が控える日本。この日の反省や課題を生かしつつ、どれだけホーバス氏の標榜するバスケットボールを表現できるだろうか。
文=永塚和志
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