2022.07.22
7月3日、「FIBAバスケットボールワールドカップ2023 アジア地区予選」Window3、日本対チャイニーズ・タイペイがメルボルンのジョン・ケイン・アリーナで行われ、日本は89-49の勝利を収めた。
この試合では、同1日のオーストラリア戦では登録外となった河村勇輝(横浜ビー・コルセアーズ)が出場。A代表デビューを飾り、得点こそなかったものの、両軍を通じて最多の8アシストを挙げるなど、ポイントガードとして力量を発揮した。
第1クォーターはベンチで試合を見届けた河村だったが、第2クォーターの先発メンバーとしてコートに送り出されると、ほどなくしてスティールでボールを奪い、そしてそのまま須田侑太郎(名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)のレイアップをお膳立てするアシストをマーク。その1分半後には、今度は味方のターンオーバー誘発から生まれたファストブレークでボールをプッシュし、右を走るエヴァンスルーク(ファイティングイーグルス名古屋)へのノールックパスを決め、得点につなげた。
初めてシニアの代表で日の丸のユニフォームを身に着けたにも関わらず、緊張の様子はまったくと言っていいほど感じられなかった。昨季、東海大を中退しプロ転向した河村は、この第2クォーターだけで4アシスト4スティールをマークし、持ち味を見せた。
広い視野と判断力の良さで後半も4つのアシストを加えた。アシスト以外でも、相手選手にインターセプトされないように、バウンズパスで味方へパスを送るなど、細かいところにおいても冷静さと丁寧さがあった。また、日本がマークした6本のスティールのうち、5本が彼によるものと、ディフェンスでも存在感を示した。3本のリバウンド(うち2本がオフェンスリバウンド)を取ったのも、運動量とボールへの執着の証左で、こちらも良かった。
「チーム全員、日本代表としてプライドを持って40分間、最後まで戦い抜くことができたことが勝利につながったと思うので、プライドを持って戦うことが大事だなと再認識できた試合になりました」
河村は自身のA代表デビュー戦を、21歳とは思えない落ち着いた口調でそう振り返った。
試合終了直後のテレビ局によるインタビューでトム・ホーバスヘッドコーチは、A代表デビューとなる河村がどれだけできるかわからなかったもののディフェンスから良い仕事をした、と満足した様子だった。
ただ、来年のワールドカップ、そして2024年のパリオリンピック出場を目標に掲げる河村にとって、このチャイニーズタイペイ戦のパフォーマンスは「合格点」はクリアしていても、ホーバスHCに諸手を挙げて喜ばせるものとまではいかなかったかもしれない。
ひとつには、14分間の出場の中で、シュート試投数および得点がゼロだったことが挙げられる。類稀なアシストセンスを持つ河村は、ホーバスHCも指揮した日本女子代表の町田瑠唯(WNBAワシントン・ミスティクス)を想起させるが、町田も同HCや現在所属のミスティクスで自ら得点できる時には狙いに行け、と繰り返し言われている。そうしなければ、相手ディフェンスに的を絞らせやすくしてしまうからだ。
事前の合宿でも、まずは得点を狙っていくことを求められるホーバスHC指揮官の代表とそうでない横浜BCでのスタイルは「まったく別物」ながら、自らを対応させねばならないと、河村は話していた。
もっとも、これからインドネシア開催のアジアカップもすぐに控えており、今後、河村が代表で経験を積む機会は増えていきそうだ。代表とクラブのスタイルは「まったく別物」かもしれないが、ドライブからのペイントアタック、そしてそこからの得点やキックアウトパス等を武器とする河村の、ホーバスHCの標榜するバスケットへの親和性は高いはず。彼と同じように小兵の富樫勇樹(千葉ジェッツ)が戻ってきた時に同HCが選考をどのように考えるかはわからないが、PG陣の争いは、良い意味で激化してくる可能性がある。
「選ばれるためにはこういった(代表合宿と試合への参加)積み重ねがすごく大事だと思いますし、A代表で練習をしたり、試合をすることに慣れていくことも必要になってくると思います」
パリオリンピックの舞台に立つ目標へ向けて、河村は合宿ではこのように語っていた。
持ち前のパスセンス発揮で自らのプレゼンスを大いに示したA代表デビュー戦となったが、河村のアカツキファイブでの伸びしろは、まだまだあるように思える。
文=永塚和志
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