2023.08.06

練習生が最終ロスター12名を争う選手に成長…富樫、渡邊も評価する川真田紘也

ニュージーランド戦でも川真田のハッスルプレーは健在 [写真]=伊藤大允
バスケットボールキング編集部。これまで主に中学、高校、女子日本代表をカバーしてきた。また、どういうわけかあまり人が行かない土地での取材も多く、氷点下10度を下回るモンゴルを経験。Twitterのアカウントは @m_irie3

 8月25日に開幕するFIBAワールドカップ2023の最終ロスター12名に入るための争いは最終局面を迎えようとしている。トム・ホーバスヘッドコーチの指揮のもとで行われる練習は、ベテランの比江島慎宇都宮ブレックス)でさえ「明日、切られるというメンタリティで臨んでいる」といい、7月28日から強化合宿に合流した渡邊雄太(フェニックス・サンズ)は、「昔から日本代表の練習は緩いなと思ってましたけど、今はそんな心配をする必要はない」と、厳しい雰囲気の中で行われているようだ。

 そんなサバイバルの中でに身を置きながら、この名前を挙げると代表チームの誰もが笑顔になる選手がいる。もちろんその選手とは川真田紘也滋賀レイクス)だ。

 8月2日、4日、オープンハウスアリーナ太田で行われた「バスケットボール男子日本代表国際強化試合2023 太田大会」で日本代表はニュージーランドと対戦。川真田は、第1戦19分16秒の出場で2得点4リバウンド、第2戦20分28秒の出場で4得点5リバウンドのスタッツを残した。

 しかし、川真田の特徴は数字に現れない泥臭いプレー。この大会でもルーズボールに頭から飛び込み、リバウンドやブロックショットに体を張った。ホーバスHCは「川真田はカバーディフェンスで頑張っていた」と、一定の評価を与えている。

 第2戦のあと、取材に応じた川真田は「自分の仕事はリバウンド、ディフェンス、ブロックショット。古いなりのセンターという感じでやらせてもらってます」と、自身の役割に言及。「代表に入って国際ゲームをすることで自分に可能性があると思いました。もちろんトムさんのバスケット、3ポイントを主体とするスタイルについても新しくフォーカスできるかなと感じます」と前を見据える。

太田大会でもボールへの執念を見せた [写真]=伊藤大允


 そんな背番号99についてキャプテンの富樫勇樹に聞くと、「みんなうれしいんじゃないですか」と笑顔で答えてくれた。

「最初(代表合宿に)呼ばれたときは練習生でした。サイズがあり、これからの選手としての期待もあったと思いますが、それでも人一倍怒られながら練習をしてきて。でもこの2年で最終メンバーを争う一人になったなって思いますよ。リバウンドやルーズボールに体を張ってくれて、あそこまでチームを助けてくれる。そんなプレーがうれしいんだと思います」と、富樫は表情を崩した。

「トムさんにかなり怒られる日もあれば、逆に『良かったよ』と言われることも増えてきた。それに僕や(渡邊)雄太は逆に褒めていたりもします。それで彼が自信につながって成長してくれたらいいなと思いますね。何より雄太がかなり気に入っていて、期待していると思います」

 これも富樫が明かしてくれた話だが、川真田は合宿に同流した渡邊に片ひざをついて話しかけたという。「彼なりのリスペクトの表現だと思いますが、雄太はそういうのは嫌いではないので(笑)」。

 それを本人に確認すると、「初っ端が大事だと思って、ちょっと面白く行こうと狙ってました」と理由を明かす。

「代表で一緒にプレーする以上、何ていうかチームワーク的にも仲良くなりたい選手の一人でもありますし、NBAでプレーされている経験や技術を学びたくて。『川真田良いよ』って言ってくれるときもありますし、俺がミスをすれば『もっとこうすればいい』とアドバイスもしてくれます。本当に頼りになる先輩です」と食い気味に言葉をつなげた。

 渡邊へのファーストコンタクトは、まさに狙いどおり、“つかみはOK”といったところだろうか。学ぶ姿勢も貪欲だ。

 ファンの反応も変わってきた。川真田がメンバーチェンジの準備をすると、「何かやってくれる」と期待を込めた拍手で迎え入れる。コートでダイブすればより大きな歓声が沸き起こり、川真田のプレーを後押しする。

 もはや単なる盛り上げ役ではない。ホーバスジャパンの重要なピースになろうとしている川真田。愛されマイキーは今後の強化試合でさらなる成長を見せてくれそうだ。

笑顔でファンの歓声にこたえる [写真]=伊藤大允


文=入江美紀雄

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