2023.06.19
「いろいろな経験ができました」
5月1日(現地時間4月30日)からWNBAのニューヨーク・リバティのキャンプに参加していた馬瓜ステファニー。最終的には2023シーズンに向けたロスター入りはならなかったものの、約3週間にわたるアメリカ挑戦をこのように語った。
移籍で今シーズンより加入した女子アメリカ代表のブリアナ・スチュワートをはじめ、リバティには世界の名だたる選手が集まっている。「リバティというチーム自体がモンスター級というか、『WNBAといえばこの人』という選手たちがいたので、まずはそういった人たちの普段の生活や練習と試合に向けた準備を間近に見ることができました」と、馬瓜。そしてその選手たちと一緒にコミュニケーションを取りながらの練習では、「日本とはまた違った考え方」を知ることができたそうだ。
馬瓜は、6シーズン在籍したトヨタ自動車アンテロープスや日本代表でのポジションはパワーフォワードだが、リバティでは1〜3番ポジション。それでも、「やったことないポジションでしたが、周りの選手たちのおかげでできるようになりましたし、全く通じないとは思いませんでした。ピック&ロールも普通にできたし、外のシュートもよくわからないけれど(試合では)入っちゃいましたね」と、笑顔を見せる。一方で、「詰めの甘さなどは、今までずっと(そのポジションを)やってきた選手とは違うなとも感じました」と、新たな課題も見えたようで、そういった経験のすべてを「楽しかった」と表した。
気づきも多かったアメリカ挑戦だが、これまで日本で積み上げてきた経験も生きたという。例えばプレーの中で「『こういうカット(の動き)があるんだよ』と教えてもらったときに、『そのカットって何?』となると先に進まないんです。でも、それこそ呼び方は違えど、『日本でいう、この動きだな』というのがたくさんあって。そこは蓄積された引き出しの中から選べばよかったので、ありがたかったですね」と、言う。
また、「私はこれまで自由にというか、型にはまることなく育ててもらったので、ガードの動きやセンターの動き、それこそトヨタ自動車に入団してからはディフェンスでもいろいろなことを学ぶことができました。そういったことのお陰で、(リバティでは)戸惑うことが少なかったと思います」とも語った。
リバティのサンディ・ブロンデロヘッドコーチは、女子オーストラリア代表のヘッドコーチを兼ねており、馬瓜もこれまで日本代表として対戦してきた。「私のことを知っているからこそ、やりやすかったのはあります。だって、変に背伸びしたところでバレるじゃないですか、自分がもともとそんな選手じゃないってことは(笑)」(馬瓜)
その指揮官からは、ディフェンスを評価されたことでキャンプに参加できたと馬瓜は言い、ディフェンスでは、「人生で一番ファイトオーバーしましたよ。びっくりするくらい」と、プレシーズンマッチなどでもアグレッシブな動きを見せた。
加入当初、HCからは、「1〜3番をやったことはないのはわかっているので、失敗を恐れずにやってほしい」と声を掛けられた。「それはそうだよなと。高いレベルで今までとは違うポジションをいきなりできるわけがないよなと思いました」と、その言葉で最初から気負うことなくプレーできたとも明かしてくれた。
「みんな聞けば何でも教えてくれて。選手一人ひとりが声を掛けないことがほぼないといったぐらいに『このときはこうした方がいいよ』と言ってくれるので、本当にやりやすかったです」と、チームメートの存在も大きかった。そういったトップレベルの選手たちから受けた刺激や吸収したものは、活動中の日本代表につなげたいと今は考えている。
現在は帰国し、女子日本代表の合宿に参加中。「相手にとって嫌な選手であるようにというのは日本代表だけでなく普段から意識しています。相手が取りたかった点をどれだけ抑えるか。相手にしたら取られるはずのなかった点をどれだけ取るか。そういったところを少しずつ、からんでいけたらいいなと思います」と、意気込む。
リバティのブロンデロHCからは「あなたの成長には、私もすごくびっくりした」と言葉をもらった。「逃した魚は大きいぞと思わせたいですね」と、馬瓜。
取材・文・写真=田島早苗
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