2024.03.16

アジア系NBA選手のパイオニア的存在〜ジェレミー・リンに聞く「ユウタとルイの印象」

現在ジェレミー・リンはニュー台北キングスに所属 [写真]=井口基史
バスケットボールコメンテーター

「アジアにルーツを持つ選手のことは気になるよ」

 アジア籍のガード系ポジションの選手が、NBAで成功するのは無理だと思われていた時代に、「リンサ二ティー(熱狂のリン現象)」と称され、旋風を巻き起こしたジェレミー・リン(35歳/台湾プラスリーグ・ニュー台北キングス所属)。NBAで一時代を築いたジェレミーに2人の日本人NBA選手の印象を聞いてみました。

 ジェレミー・リンは残念ながら足のケガによりEASL FINAL4の出場を見送りましたが、準決勝の前日練習後の会見に登壇。まずは渡邊雄太(メンフィス・グリズリーズ)についてコメントしてくれました。

「得意のスリーポイントでリーグを驚かせているのはよく知っているよ。以前カリフォルニアで一緒にワークアウトもやった仲間だし、SNSで彼のハイライトを見かけるとうれしい気持ちになるね」

 続いて、八村塁(ロサンゼルス・レイカーズ所属)についても話してくれました。

「レイカーズでプレーすることの大変なプレッシャーは知っている(自身も2014−15シーズン、レイカーズに所属)。それを感じさせずに、プレーしているのは本当にすごいことだよ。ルイとは練習を共にしたことはまだないけれども、2人の活躍はもちろん知っている。彼らだけではなく自分と同じアジアにルーツを持つ選手がいれば、いつもチェックするようにしているし、もちろん気になる」

 ジェレミーは開催地セブ島に多く駆けつけた地元フィリピンメディア向けに、フィリピン人の祖母を持つ帰化選手のジョーダン・クラークソン(ユタ・ジャズ所属)についても言及しました。

「台湾代表でプレーしたい」の前に立ちはだかるルールの壁

会場に姿を見せただけで歓声を浴びていたジェレミー [写真]=EASL


 試合に出なくても会場となったHOOPS DOMEに姿を現すだけで大歓声を浴びたジェレミー。バスケ大国フィリピンでの高い人気もうかがえた。そして、かねてから直接聞いてみたかった台湾代表への想いについて聞いています。

「その質問が一番苦しく、難しい質問の一つです。私の両親は台湾人であり、私自身はカルフォルニアで育った。母国のためにプレーできないことの悔しさは何度も尋ねられたが、過去は変えられないので受け入れるしかない」と代表への情熱があることはわかりました。

 台湾プラスリーグ関係者にも確認しましたが、16歳以降で台湾籍を取得したジェレミー・リン、そして弟のジョセフ・リンが台湾代表でプレーするには、現在のところ帰化選手としてプレーするしか方法がありません。近年の台湾には身長211センチのウィリアム・アルティーノというビッグマンの帰化選手がすでにおり、サイズ優先だとするとリン兄弟が代表でプレーする可能性は今のところ低そうです。アジアでのバスケ人気発展のためにも残念でならないですね。

EASLは自分にとって国を代表してプレーする貴重な経験」

 次にジェレミー・リンの実弟、ジョセフに台湾代表やBリーグでのプレーの可能性について記者会見で質問をぶつけてみました。

兄と一緒にプレーするジェセフ [写真]=井口基史


「もしすべての規定がクリアになれば、台湾代表でプレーしたい気持ちはもちろん強い。国際試合や海外でのプレー経験が少ないことは悔しいからね。このEASLは自分にとって国を代表してプレーする貴重な経験になっている」

 現在のBリーグの規定では台湾国籍を持っていてもアジア特別枠でプレーすることはできない状況を知らなかったようで「もしBリーグのアジア特別枠でプレーできるなら、それは自分の海外挑戦という夢の一つでもある。え⁉ オレはアジア特別枠に該当しないの⁉ それは残念すぎる。チャンスがあるかと思っていた…」とBリーグ挑戦への夢を台湾プラスリーグ関係者も同席する会見の場で公言しました。

 偉大な兄にばかりこまで注目が集まりましたが、弟ジョセフはセミファイナルの千葉J戦で素晴らしい活躍を見せ、ジェッツブースターにもインパクトを残しました。ルールが改正されれば、Bリーグでもやれる片鱗を見せました。
(千葉J戦スタッツ:出場時間34分で21得点4リバウンド5アシスト1ターノ−バー)

千葉J戦で21得点をマークしたジェセフ [写真]=EASL

Bリーグが世界第2位のリーグを目指すなら

弟のジョセフ(左)に声をかける兄のジェレミー(右) [写真]=井口基史


 以前から台湾バスケ関係者にリン兄弟が日本でのプレーする可能性について話を聞いていましたが、今回、2人に直接話が聞けて光栄でした。Bプレミアへの発展を目指すBリーグは『NBAに次ぐ世界第2位のリーグを目指す』との目標があります。アジア籍NBA選手のパイオニアである兄と、Bリーグ挑戦を公言する弟がすぐ隣の親日国にいる。彼らにも門戸を開いてほしいなと体感できたのもEASLがあったからこそ。この大会の価値を実感したインタビューでした。

Bリーグ「選手契約および登録に関する規程」より抜粋
第5節 アジア特別枠選手制度
第48条〔アジア特別枠選手制度の目的〕
アジアの多様な選手との日常的な対戦を行うことによる、強度の高いバスケッ
トボール環境を構築し、アジア市場での事業価値を向上させることを目的とする。
(1) アジア特別枠選手制度の対象国は以下の通りとする。
① 中華人民共和国
② 大韓民国
③ フィリピン共和国
④ インドネシア共和国
⑤ 中華民国(台湾)
(2) 前項各号のいずれかのみの国籍を選手が保有する場合は、アジア特別枠選手として登録を認める。ただし、当該選手が帰化により前項各号のいずれかの国籍を保有している場合は、帰化前の国籍が前項各号のいずれかの国籍である場合に限り、アジア特別枠選手として登録を認める。
(3) 複数の国籍を選手が保有する場合は、全ての国籍が第1項各号に該当する場合に限り、アジア特別枠選手として登録を認める。ただし、第1項各号に該当する国籍と、該当しない国籍を双方保有する場合でも、第1項各号の国の代表選手(カテゴリーを問わない。ただし、3x3競技については除く)としてFIBAにより登録された実績を有する場合においては、アジア特別枠選手として登録を認める。当該FIBAによる登録区分が帰化選手枠である場合はこの限りでない。

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