2021.01.21
一昨年のチャンピオンチーム、トロント・ラプターズは今シーズン、厳しい船出を強いられている。マルク・ガソル(ロサンゼルス・レイカーズ)、サージ・イバカ(ロサンゼルス・クリッパーズ)という、ビッグマンにして精神的支柱だった2人を失ったダメージは想像以上に大きかったのだろうか。10試合を消化した時点で、勝率はわずか2割(2勝8敗)。これにはヘッドコーチのニック・ナースも頭を抱えているに違いない。
チームが軌道に乗るためには、ケミストリーの再構築と主力陣のさらなるコンディション向上が必要不可欠だ。このような状況を受け、カナダの日刊紙大手『Toronto Star』は「ラプターズの問題を全て解決するわけではないが」と前置きをしたうえで、2Way契約の渡邊雄太とルーキーのマラカイ・フリンをキーマンにピックアップしている。
同紙は「NBAとGリーグのラプターズ・905で時間を割く運命にあり、優先順位が高くなかった渡邊は、ロスターのバランスを保ち、複数のポジションを守れるディフェンダーとして、ベンチからトロントにエネルギーをもたらしている」と、渡邊のストロングポイントを評価。
一方、渡邊本人も「チームメートと競い、ともにプレーすることを楽しんでいます。でも、このチームを手助けするためには、もっといい働きをしなければならない感じています」とコメント。そして「僕にはまだやるべきことがたくさんあります。でも、ここのチームにいれることをとてもうれしく思っています」と続け、ラプターズの環境に満足している反面、自身のプレーレベルをさらに高める必要があると改善を誓った。
では、起用の鍵を握るナースHCは、渡邊をどのように評価しているのだろうか。フェニックス・サンズ戦後に『Toronto Sun』の記者から渡邊についての質問を投げかけられた同コーチは、以下のようにコメントしている。
「アクティブかつハードにプレーしていたし、カットやムーブなどの動きも良かった。ただ、対戦相手がポイントガードにプレッシャーをかけてきたから、何度か消えてしまったし、その点はあまり評価できないね。ただ、私たちは彼にもっとリリースポイントを作ってあげる必要があると思う」
「彼のサイズや汎用性の高さは気に入っている。パスやカット、スリーも打てる。何より、素晴らしい努力を見せてくれているよ」
1月12日(現地時間11日)に開催されたポートランド・トレイルブレイザーズ戦では、5試合ぶりに出場機会をもらえなかった渡邊。しかし、ナースHCは、試合後にローテーションメンバーについて問われると「ロスターの脇を固める雄太とマラカイも大事な存在だ」と、出場時間がなかった2人にも言及し、構想内であることを強調していた。
そこで気になるのは、Gリーグ開幕後の渡邊の処遇だ。2月に入れば、オーランドのウォルト・ディズニー・ワールド・リゾート内にある隔離施設、通称「バブル」でGリーグが集中開催される。『Raptors HQ』は、ゲイリー・ペイトン2世らを補強したラプターズ・905のロスターを紹介すると同時に、現在トップチームでプレーする数名にも触れ、渡邊については「現時点では、ニック・ナースのローテーションの一部」と評価し、トップチーム残留を予想している。
ラプターズは、育成にも定評のある球団だ。現に、同球団のロスターにはパスカル・シアカムをはじめ、Gリーグでプレー経験のある選手が数多く存在する。いずれにせよ、渡邊のラプターズでの旅路はまだ始まったばかり。今後のさらなる飛躍に期待したい。
文=Meiji
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