2022.10.23
ワシントン・ウィザーズのプレシーズン4試合で、八村塁が飛躍を感じさせるパフォーマンスを見せた。
すべての試合で2ケタ得点、最終戦となった15日(現地時間14日、日付は以下同)のニューヨーク・ニックス戦ではベンチから30分の出場でチーム最多の20得点、8リバウンドをマーク。4試合で平均26.6分出場し、クリスタプス・ポルジンギスに続くチーム2位の14.8得点、リバウンドはチームで最も多い7.5本を記録した。
「オフシーズンに力を入れてやっていた」というウエイトの成果で一層力強くなり、そこに「NBAのゲームに慣れた。そこが1番」という自信と知識、素早い判断力が加わり、伸び伸びとプレーしている。
そんな八村に、確固たる自信を持っているのが、エースのブラッドリー・ビール。トレーニングキャンプの間には、「この夏ずっと言っているけれど、塁は最高だ。自信に満ちあふれているよ。目覚ましいシーズンを送ると思うし、チームにとって大事な選手になると思う。我々には彼が必要だということを彼自身も分かっている。彼が万全である限り、このチームも大丈夫だ」と話していた。
八村自身も「スペーシングとか、自分の長所、例えばドライブ、速攻とか、トランジションだったり、ミッドレンジだったりとか、僕のポジションに簡単に行けるようになってきた」と目を輝かせ、「僕もこのチームではブラッド(ビール)の次に長いので、ウィザーズのカルチャーというのをほかのチームメートに教えていけたらと思っています」とリーダーとしての自覚も芽生えている。
八村は日本でウォリアーズとプレシーズンゲームを行った2試合ではスターターだったが、アメリカに戻ってからの2試合ではベンチから出場している。シーズン開幕後にどちらで出場するかは、プレシーズンゲームが終了した時点で明らかにされていない。
ただ、その一方で「それぞれのグループの力の均衡を見極めなければならない。厳しい判断だ。だが、私は誰がスターターになるかということよりも、それぞれの選手がどのように勝利に貢献できるかということをより考えたい。ベンチからのスタートであれば、チームが勝つために我々がその選手に必要としていることだ」とも加えた。
実際、八村自身も「大事な場面で出てくるというのが一番大事じゃないかなと思うので、スタートとか、そういうのは僕はあまり気にしていません。コートに入った以上は、誰にも負けないという気持ちでやるので」とスターターで出ることよりも、勝敗に影響する場面での出場を望んでいる。
ウィザーズでは昨シーズンレイカーズからトレードで入団したカイル・クーズマがパワーフォワードとしてスターターの座をほぼ不動のものとしており、スモールフォワードではデンバー・ナゲッツ時代からアンセルドJr.HCとの信頼関係が強いウィル・バートンがいる。ケガがなければデニ・アブディヤやコーリー・キスパートもスターター候補だ。
ビールは「このチームはさまざまな才能で溢れている。無限大だよ。いろんなラインナップで挑むことができる。コーチは大変だ」と期待をこめて話したが、そういったウィザーズの特徴の代表的な存在が、八村になるのかも知れない。
開幕前日の18日までにウィザーズと延長契約を結ばなかった八村。ルーキー契約最終年の今シーズンは、来シーズン以降の契約に向けて重要なシーズンとなる。だが、本人が目指すものはプレーオフ進出だ。
「プレーオフは絶対に出たい。昨シーズン出られなかったので、そこは絶対にやっていきたい」と力を込め、「契約のことは気にしていません。ただこのチームの勝ちに貢献すること、プレーオフに出ることを目標にやっていきます。そうすればすべてのことは、あとからついてくると思います」と淡々と語った。
昨シーズンは「個人的な事情」により、トレーニングキャンプからチームを離脱。チームにとっての試合数がシーズンの半分に到達しようとしていた1月に復帰した際には、「休みが必要だった」と明かした。だが、チーム施設に戻って個人練習を始めるまでの間も完全にバスケットボールから離れることはせず、自分で練習していた。復帰してからの3ポイントシュートの急成長は、試合に出ていなかった間もどれほど努力していたかの証だ。
その離脱中に自分のハイライトをたくさん見ていた。その中でも特に見ていたのが、2年目のプレーオフで戦ったフィラデルフィア・セブンティシクサーズ戦。新型コロナウイルス感染拡大の影響により観客動員数は限られていたが、それでも熱気に包まれており、八村はウィザーズが唯一勝った試合で貴重な3ポイントシュートを決めた。そんな場面を目にしながら、バスケへの思いを育んでいた。
文=山脇明子
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