2024.07.29

放映権を失ったTNTがNBAを相手に訴訟「マッチングを不当に拒否した」

NBAコミッショナーのアダム・シルバー[写真]=Getty Images

■ 巨額契約のウラ側

 NBAの経済規模を大きく左右する放映権は、昨今のオフコートで最もホットな話題の一つとして大きな関心を集めている。

 そして、遂にリーグは7月25日(現地時間24日)、2025-26シーズンから2035-36シーズンの11シーズンにおよぶ新放映権のパッケージを正式に発表。『ウォルト・ディズニー・カンパニー』傘下にある『ABC/ESPN』、『NBCユニバーサル』が展開する『NBC/Peacock』、そして最注目だった『Amazonプライム・ビデオ』の3社が権利を獲得し、契約金の総額は11年間で760億ドル(約11兆5520億円)という莫大な規模とされている。

 しかし、この放映権を巡って事態が複雑化する可能性がありそうだ。現行契約でNBAを放送する『TNTスポーツ』の親会社『ワーナー・ブラザース・ディスカバリー(WBD)』は、新たな放映契約へのマッチングをNBAに拒否されたとして、リーグを提訴するようだ。

NBAが第三者のオファーに対する我々のマッチングを不当に拒否したため、我々は権利を行使するべく、法的手続きを取るに至りました。これは契約上の権利であるだけでなく、TNTやMaxをはじめとするWBDの配信プラットフォームを通じて、業界をリードするNBAのコンテンツを我々が提供する選択肢と柔軟性をもって見続けたいと願うファンにとっても最善の利益となると信じています」

■ 人気アナリストの“行方”にも影響

放映権契約は人気解説者の去就にも影響。中央がチャールズ・バークレー氏[写真]=Getty Images


 制限付きFAと同様に、既存の放映権を所有する『ワーナー・ブラザース・ディスカバリー』は、ライバル企業からのオファーに応札する権利を所有していた。しかし、リーグは同社の条件が『Amazonプライム・ビデオ』のオファーに一致しなかったとして、マッチングを棄却。その理由として『TNTスポーツ』もストリーミングサービスを所有しているが、『Amazonプライム・ビデオ』と比較するとリーグが求めるリーチやアクセスの最大化で劣るため、これが要求を却下した原因とされている。また、『ワーナー・ブラザース・ディスカバリー』からの訴訟に対して、リーグは「根拠がない」とし、今後の話し合いは法廷に持ち込まれる見込みだ。

 言わずもがな、『TNTスポーツ』はアメリカを代表するNBAコンテンツの配信プラットフォームである。『NBA on TNT』は1989年から続く長寿番組で、現在はシャキール・オニールやチャールズ・バークレーらによるお茶目で切れ味抜群のプログラムとして絶大な人気を誇っていた。

 しかし、『ワーナー・ブラザース・ディスカバリー』が放映権を失ったことにより、『NBA on TNT』は必然的に消滅。また、名物アナリストのバークレーは番組の終了にともない、業界からの引退を表明。だが、これを受けて放映権を所有する『ABC/ESPN』と『Amazonプライム・ビデオ』は同氏へ破格のオファーを提示しているとされている。

『The Athletic』は、『ワーナー・ブラザース・ディスカバリー』が『Amazonプライム・ビデオ』のパッケージを引き継ぐことは難しいとする一方、裁判の結果によって損害補償や、現在の契約に基づく権利として、試合の放送権やハイライトアセットを要求できるという。

 法廷まで持ち込まれた放映権問題。果たして、NBAと『ワーナー・ブラザース・ディスカバリー』の決着はいかに。

文=Meiji

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