Bリーグ公認応援番組
『B MY HERO!』
5月27日、韓国プロバスケットボール(KBL)が2020-21シーズンよりアジア枠を導入することを発表した。初年度のアジア枠は日本人選手のみに適用されるルールだ。KBLからの情報では、すでにBリーグからKBLに進出する日本選手との交渉に入っているとのことから、ここではKBL側から見たアジア枠と、隣国である韓国のプロリーグ事情について紹介したい。
ちょうど1年前、BリーグとKBLはBリーグファイナルが行われた5月11日、横浜アリーナにて日韓の交流とアジア枠導入を目的とした、両リーグ提携の調印式を行った。その後、Bリーグでは昨季の11月に2020-21シーズンからのアジア特別枠(中国、韓国、台湾、フィリピン、インドネシア選手)の導入を発表しているが、日本より遅れること半年、韓国では今年の5月に正式に決定の運びとなった。
KBLの発表によると、今シーズンは日本人選手のみの受け入れとなり、KBLからBリーグへの移籍も可能。今後はさらに拡大していく方向で、中国とフィリピン選手の受け入れに向けて協議を進めていくという。アジア枠として保有できる日本人選手はチームに一人まで。KBLは国内選手のサラリーキャップ制を導入しており(25億ウォン、日本円で約2億5000万円)、アジア枠選手の年俸はサラリーキャップに含まれる。
過去にKBLでは外国籍選手の身長制限が実施されているが、2018-19シーズンには2人保有のうち186センチ以内と2メートル以内という“奇妙な”ルールが導入された。現場の反対意見が多かったことにより、イ・ジョンデ総裁は就任後に外国籍選手の身長制度を廃止している。
また近年のKBLは観客の減少が見られ、変革のときを迎えていた。90年代にはアリーナがアイドルのコンサートのような熱気で埋め尽くされるほどバスケットは人気スポーツであり、近年では、若手スターが躍動して初優勝を遂げた安養KGCの人気が急上昇した2011-12シーズンにKBL歴代最高観客数である1,333,861人(プレーオフまで含む観客数。レギュラーシーズンは平均4,409人)を樹立している(だがFA等でKGCの人気メンバーは数年で解体)。チーム別に見れば、電子ランド、SK、KCC、LGには熱狂的なファンが多い。しかし、2017年から2シーズンはレギュラーシーズンの観客数は平均3,000人を切るまでに落ち込んでしまった。
KBLは各チームが週に2~4試合行う過密日程のリーグなのだが、昨季の2019-20シーズンには平日の試合を減らして家族連れが観戦できる土日に多くの試合を組み込んだところ、平均3,131人まで盛り返している。そこで、さらなる変化が必要となったのが、今回のアジア枠導入である。
今回のアジア枠導入に向けて、日韓の架け橋となるエージェント業務を担った株式会社ウィルの鄭竜基(チョン・ヨンギ)代表はこのように語る。
「ここ1、2年のBリーグとKBLは、リーグ関係者が互いに試合を視察し、月に一度は電話やウェブで会議をして急速に進展していきました。4月にKBLのFA(フリーエージェント)リストをBリーグに渡したところ、実際に数チームから問い合わせがあり、また韓国選手からも『日本でプレーしたい』という声もありました。今は新型コロナウイルスの影響で先行きが見えないところはありますが、どちらのリーグもアジア戦略を図りたい思いは一致しているので、このアジア枠によって互いに競争し、5年後や10年後の発展を目指す足掛かりとなってほしい」
ただし、KBLのアジア枠において一つ残念なのが、日本からKBLへの移籍基準である。KBLの発表をそのまま表記すれば「日本への帰化選手、二重国籍選手、混血(ハーフ)選手を除いた選手が対象」となっている。ハーフ選手が対象外になったのは、そもそもKBLのルールが整備されていないためである。
韓国では過去にアメリカ国籍を取得し、アメリカで育ったハーフコリアン選手数人がKBLでプレーしているが、彼らがKBLでプレーする際には代表入りを考慮して韓国籍に帰化したうえで、特例のドラフトが行われた経緯がある。そのため、過去の歴史のままルールが整備されておらず、今回のような規定になった。今後は移籍基準が変わり、門戸を広げてほしいものである。
また、KBLにはサラリーキャップとドラフト制度があることから、NBAのようにトレードや移籍市場が盛んであり、生き残りをかけた競争は年々激しくなっている。さらには、20代の選手には約1年半~2年の兵役があり、KBLに復帰した際には、自分の居場所を確保する厳しい戦いが待ち受けていることから、日本人選手がKBLに参戦すれば、日本とは違った競争世界を体感することになるだろう。一方で、日本の競技人口の多さや、さまざまな経歴を持つ選手と対戦することは、韓国選手にとっては大きな刺激となるはずだ。これまで兵役があることから、なかなか外の世界に飛び出す機会を持てなかった韓国選手に新たな選択肢が広がったのだ。
こうした、隣国でありながらも異文化の中で戦うことは、視野を広げて対応力をつけることにつながる。言葉の壁といった課題もあるが、このアジア枠は長期的な視点に立てば、両リーグが掲げる国際競争への第一歩となる。水面下で繰り広げられている移籍情報の発表を待ちたいところだ。
文・写真=小永吉陽子
◆チーム数:10球団(所属地)
原州DBプロミ(ウォンジュ)
仁川電子ランドエレファンツ(インチョン)
安養KGC人参公社(アニャン)
高陽オリオンオリオンス(コヤン)
ソウルサムソンサンダース(ソウル)
ソウルSKナイツ(ソウル)
全州KCCイージス(チョンジュ)
蔚山現代モービスフィバス(ウルサン)
昌原LGセイカーズ(チャンウォン)
釜山KTソニックブーム(プサン)
※都市+企業名+ニックネーム(KGCのみニックネームなし)
◆試合方式
・レギュラーシーズン:6回戦総当たり54試合/各チーム
・プレーオフ:6強戦/3戦先勝、セミファイナル/3戦先勝、ファイナル/4戦先勝(最大17試合)
※各試合にエントリーできる選手=12名
◆国内選手規定
・新人ドラフト制度あり
・サラリーキャップ制:25億ウォン(約2億5000万円)
・28歳までに約1年半~2年間、兵役に就くが、その間はKBLに選手登録ができない(ただし国軍体育部隊の『尚武』(サンム)への入隊が認められた者は尚武所属として選手活動ができる)。
◆外国籍選手規定
・2人保有、オンザコート1
・年俸は2選手の合算で700,000USドルまで(一人上限500,000USドル)
※身長制限は2019-20シーズンから廃止
※外国籍ドラフトは2018-19シーズンより廃止で現在は自由契約