2018.05.08

ジャスティン・バーレルが語るタフショットの極意「1本のショットのために常に準備している」

バスケットボールキングプロデューサー(事業責任者)

 毎節、プロの華麗な技や激しいダンク、試合を決める極限のシチュエーションから厳選されたスーパープレーをピックアップする「BEST of TOUGH SHOT Weekly TOP5 presented by G-SHOCK」。B1リーグに集うプロフェッショナルの中で、今シーズンこのスーパープレー集に複数回選ばれた選手がいる。それは名古屋ダイヤモンドドルフィンズのキャプテンであり、チームの絶対的なエースでもあるジャスティン・バーレルその人だ。ニューヨーク州出身の彼はB1リーグ初となる外国籍選手のチームキャプテンでもあり、リーグを代表する“魅せる”選手の一人と言っても過言ではない。

 現在30歳のバーレルは、204センチ111キロのパワーフォワード兼センター。これまで横浜ビー・コルセアーズ千葉ジェッツなどでプレーし、2015-16シーズンから名古屋Dに所属する。バーレルはパワー、スピード、テクニックを兼ね備えたリーグでは稀有な存在で、「外国籍の選手と言えば大型ではあるが機動力の低いセンタープレーヤー」という現在のリーグの常識は当てはまらない。走力を活かし、速攻の先頭を切ったかと思えば、ゴール下の激しいリバウンド争いを制し、アリーナのどよめきを誘うような激しいダンクを叩きこむ。

 3月4日にはB1リーグ個人通算100ダンクを達成したバーレルは、横浜時代に、ゴールを破壊するほどの豪快なダンクを披露したこともあるホットな選手でもある。毎試合コート狭しと駆け巡り、主戦場であるゴール下で鋼のような肉体をぶつけ合い、タフな戦いを繰り広げるバーレルにBリーグのこと、チームのこと、そして自身のプレーについて話を聞いた。

インタビュー=村上成
写真=本美安浩、Bリーグ

■試合中に難しいショットを打つ場面でも入るという自信がある

――Bリーグでの2シーズン目はいかがですか?
バーレル 本当に面白いシーズンになっています。昨季優勝したチーム(栃木ブレックス)が、今季は全然違うというのも不思議です。しかし、リーグ全体の成長はとても楽しみながら見ています。新しい選手、素晴らしい選手がやってくる中で、Bリーグ自体がどんどん成長できると思います。Bリーグはファンの拡大もすごくがんばっているので、試合以外の面でもとても楽しみです。

――これまでアメリカ、フランス、bjリーグでプレーしていましたが、それらと比べてBリーグはいかがですか?
バーレル できたばかりの若いリーグですが、正しい方向に向かっていると思います。他のリーグは全体的にバスケットボールがメインでやっていますが、Bリーグは、バスケットボールはもちろん、エンターテインメントを意識しているところが素晴らしいと感じます。

――これまで対戦してきた選手や、一緒にプレーしている選手の中で気になる日本人選手を教えてください。
バーレル Bリーグには、レベルの高い日本人選手が多いと思います。見ていて楽しく、一緒にやるのも素晴らしい選手はチームメートの笹山(貴哉)です。あと、中東(泰斗)も若くて、いろいろな力を持っています。あとはシーホース三河の6番、比江島(慎)選手もリーグの中では優秀なガードだと思いますし、千葉ジェッツの富樫(勇樹)選手もリーグ有数のポイントガードとして目を引きますね。

――三河は同じ愛知県のライバルチームになると思いますが、比江島選手のすごいところは?
バーレル 比江島選手は試合を“乗っ取る”力がありますね。得点を取ることだけではなく、ディフェンスのヘルプシチュエーションにもしっかり入ったり、リバウンドを取ったり、試合をコントロールできて仲間をうまく動かせたり。本能でプレーできている感じもします。自分が比江島選手と対戦する時、彼のメンタルタフネスを試す意味も込めて試合中にわざとぶつかることがありますが、彼は絶対に下がりません。それでもプレーできるタフネスも持ち合わせています。

――比江島選手が三河で大事なシュートを任されるように、バーレル選手も重要なところでシュートを任されることが多いと思います。プレッシャーは感じますか?
バーレル これまで1人で1000回ぐらいはそういった状況でのショットを決めていると考えるようにしています。頭の中だけでなく体でも同じです。練習後のシューティングで、1試合に1回あるかないかのようなショットも打っています。練習で何回も繰り返すことで、試合中に難しいショットを打つ場面でも入るという自信があるから、プレッシャーは感じません。1本のショットのために常に準備をしています。

――しっかり準備したシュートが、試合で決まった時の気分は?
バーレル そういったショットを打つチャンスをもらえるだけでうれしいです(笑)。ただ、ブザービーターでは「やった!」と喜べますが、大半はすぐにディフェンスに戻らなければいけないので喜んでいる時間はありません。試合後に、難しいショットが入ったのを映像で見ると、少し誇らしくなりますね。

――逆のシチュエーションとして、任されたシュートを外してしまうこともあると思います。
バーレル 自信のある選手としてプレーするためには、記憶力が短くないとダメです。外したことは、起こらなかったこととしてすぐに忘れること。これはプロとして何度もトライをしなければならない立場としてはポジティブな意味で大変重要なことだと思います。

――昔から切り替えは早いのですか?
バーレル そういうわけではないです。自分は完璧主義な性格なので、昔は大事なショットは避けていました。失敗を恐れて打ちたくなかったという思いもありましたが、徐々に変えていって今に至ります。

――変えるきっかけになったことは?
バーレル バスケットボールをやり続けている中で、自分の失敗を悔やむ時期もありましたが、少しずつ失敗した過去を振り返っても良い結果につながらないことを学んだのだと思います。何か特別に起きたわけではないので、自分が成長してきただけだと考えています。


 

■リーダーとして、各選手の良さをもっと引き出してあげたい

――試合中は激しくバスケットボールをしている印象があります。バーレル選手のように、タフにファイトするにはどのような心掛けが必要ですか?
バーレル 自分のようなインサイドプレーヤーにはタフネス、フィジカルの強さが必要です。バスケットボールを始めた頃から、ペイントエリアに入るためには強くないといけないなとわかりました。肘が飛んできたり、体がぶつかったりしましたが、ペイントエリアで結果を残すには、それを乗り越えて真のインサイドプレーヤーにならなければいけませんでした。

――インサイドでプレーしていて、一番大変なことを教えてください。
バーレル 走る距離が一番多いことかな(笑)。味方のゴール下で戦い合ってリバウンドを取ったら、すぐに速攻に移って相手のゴールを目指して走る。味方のシュートのリバウンドに入って、相手に奪われるとすぐに戻る。あれだけがんばってまた逆サイドまで走るのかと思うと(苦笑)。リングからリングまで、インサイドプレーヤーは走る距離が長くて大変だよ。

――にも関わらず、ベンチからは「もっと走れ!」と言われることもあると思います(笑)。
バーレル ありますね(笑)。でも、本当はインサイドでプレーするのが好きです。タフにプレーをするために必要とされるフィジカルさも好きだし、リバウンドも好きだし、中での駆け引きや戦いが本当に楽しいです。

――Bリーグが発表している『BEST of TOUGH SHOT Weekly TOP5 presented by G-SHOCK』には、笹山選手からのアリウープ(第3節第2戦vsサンロッカーズ渋谷)、あとはブザービーターに近いローポストからのプレー(第1節第1戦vs川崎ブレイブサンダース)が選出されています。リーグの数あるプレーの中から、自身のプレーが複数選ばれていることに対してどのように感じますか?
バーレル リーグから認められるのはすごくうれしいことで、光栄なことだと思います。ファンから支援されるようなシチュエーションももちろんうれしいのですが、この『BEST of TOUGH SHOT Weekly TOP5 presented by G-SHOCK』のようにリーグや関係者などのプロの目で選ばれることはまた格別な想いです。

――今後さらにあなたが進化していくためには何が必要ですか? また、どのような選手になりたいですか?
バーレル もう少しリーダーシップを取れるようになりたいです。今までは背中で引っ張るというか、自分の行動でキャプテンシーを発揮しようとしていました。しかし、もう少しチームメートと話すことを意識して、いつ、どのタイミングで喋るのかなどコミュニケーション面でうまくなりたいという気持ちがあります。引き続きリーダーシップを取って良いならば、みんながそれを受け入れてくれるという自信を持ちたいと思います。正直なところ、今は少し遠慮しているところがあります。バスケットボールのスキルという面では、いつでもどこでも伸びることはたくさんありますけど、まだまだ伸び続けたいと思います。自分の性格、態度、姿勢が少しアグレッシブすぎるところがあるので、うまくコントロールできればもっと成長できる部分も多いと思いますが……。戦う気持ちは間違っていませんが、そのコントロールが悪いと、良くない方向に向かってしまうので(苦笑)。

――キャプテンとしてチームを引っ張っていくことも大変ですよね。
バーレル リーダーとして、各選手の良さをもっと引き出してあげたいです。例えば、笹山はオフェンスでもディフェンスでも今以上に伸びると思います。中東も、もっと素晴らしいプレーができると信じています。自分だけでなく、選手一人ひとりが仲間意識を持って言い合える、兄弟のような関係にしていきたいですね。

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