2020.03.30
新潟アルビレックスBBとの2019-20シーズン開幕節。2シーズンプレーした琉球ゴールデンキングスを離れ、アルバルク東京に加入した須田侑太郎はまずまずの新天地デビューを飾った。
チームは87-59、94-84で2連勝、自身は1戦目に5得点1リバウンド1アシスト、2戦目に3本の3ポイントを含む14得点4リバウンド1アシストを記録した。数字を見比べると、2戦目の活躍が目立つが、「自分の中では大きく変わらない」と述懐する。「昨日(1戦目)は味方同士の連係でシュートまで持ちこみ、今日(2戦目)はその次の展開で僕にパスが来て、それを決めただけ」
第4クォーターでの相手を突き放す2本の3ポイントシュートなど、効果的に得点を重ねた須田はチームの貴重なピースとして存在感を示したが、それでも気を緩めない。「最初にターンオーバーをしてしまい、そこから修正して相手の出方を見ながらプレーを作れたし、苦しい時間帯でシュートを決めることもできた。ただ、いくつかミスもあったし、ターンオーバーはもっと減らさないといけない」
険しい顔で語る須田に「上々の出来だったのでは? 好調なのでは?」と柔らかくツッコんでみると、「調子が悪くない時こそ気を引き締めないと」と初めて表情を崩した。「プレーを作れたとか、シュートを決めきれたとか自分で言うのは珍しいですよ。それぐらい満足している部分はあるけど、ミスがあるとそっちに目が行っちゃいますね」
なかなか隙を見せないクールな雰囲気がある須田について、「Bリーグで一番カッコいいんじゃないですか」とは職場の同僚女性のいち意見だが、確かにモテそうだ。
さわやかな顔立ちはもちろんのこと、キレイなシュートフォームからの鮮やかな放物線を描くアウトサイドシュートに、グッと腰を落とした強度の高いディフェンス。涼しげな顔で淡々とプレーしているようで、時に負けず嫌いな一面を見せるところは、きっと女心をくすぐるのだろう。
「自分は怒りの感情がいい方向に働き、エネルギーに変わる。そういう自分の性格を知った上でうまく利用できている」。日頃の練習では、Bリーグ屈指のディフェンダーである菊地祥平とマッチアップ。チームメートのザック・バランスキーによると「負けず嫌い同士でバチバチやり合ってる」。そこから学ぶことも多い。「距離の縮め方だったり、スクリーンの阻止の仕方だったり、すごく勉強になる」(須田)
何より、夢中になっている男はカッコいい。「今はバスケをやってて日々発見があって楽しいし、少しずつ新しいものを吸収できている」。ルカ・パヴィチェヴィッチヘッドコーチの、ディフェンスからの速攻というバスケットスタイルについては「琉球でも似たようなプレーをやっていて、アジアチャンピオンズカップ(FIBAアジアチャンピオンズカップ2019)で試合を重ねるごとにフィットしてきた」。課題はピック&ロールの質を高めること。「琉球ではフィニッシャーとして最後にパスを受けることが多かった。アルバルクではボールを触る機会が増えたし、ピック&ロールをもっと使えるようになりたい」
NBA挑戦のため退団した日本代表の馬場雄大(ダラス・マーベリックス)と入れ替わるように入ったため、比較されることは避けて通れない。「比べられるのは当然だけど、自分には自分の良さがある。キャッチ&シュートもそうだし、ディフェンス、リバウンド、ルーズボールといった泥臭いプレーでは負けたくない」
須田にはもう一つ強みがある。東海大学でともに汗を流した同期の田中大貴、1つ下のザック、2つ下の小島元基の存在だ。ザックとはまだ公式戦で同じコートに立っていないが、田中と小島とはすでに息の合ったプレーを見せている。久しぶりの同時出場ながら「どういう選手かわかっているし、やりやすい。お互いに考えていることを理解しているから、アイコンタクトでプレーを展開できる」
新潟との2戦目では菊地、アレックス・カークとともにヒーローインタビューに呼ばれた。「昨日チャンピオンリングの贈呈式がありましたけど、僕も欲しいので、今シーズンぜひ一緒に戦ってもう一度優勝して、皆さんとチャンピオンリングを取れるようにがんばりましょう」とファンに語りかけた。A東京としては3連覇、自身は栃木ブレックス(現宇都宮ブレックス)での2016-17シーズン以来2度目のBリーグ制覇を目指す。
A東京の真骨頂であるスピーディーなカウンターに、ピック&ロールを駆使したテクニカルな崩し。そこにザックに比肩する実力派のシューター、須田が新たに加わり、的を絞らせないオフェンスが展開可能になった。さらにこのニューオプションはディフェンス力の底上げにも一役買う。狙いどおりにハマればA東京は3連覇に大きく近づくだろう。
ディフェンディングチャンピオンは嫌でも注目される。加えて、チームの成否を占う新加入選手となれば、時に厳しい目を向けられる。移籍やケガによってチームが困難な状況の中、須田は大事な開幕節で期待に応えたが、真価が問われるのはこれからだ。「苦しい時間帯や強い相手とのゲームで勝負を分けるのは、リバウンドやルーズボールなどの一つひとつの泥臭いプレー。それができなければ自分の存在価値はないし、そこにこだわってブレずに戦っていきたい」。この容貌だ。スターダムにのし上がる可能性を十分に秘めている。
文=安田勇斗
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