2019.10.18
宿敵が相まみえた伝統の一戦、10月13日に行われた大阪エヴェッサと琉球ゴールデンキングスの対戦はオーバータイムまでもつれ込む大接戦となった。12日のゲームが台風の影響で延期となり、調整が難しい中で試合を迎えたが、時間帯によって両者の強みがコート上で発揮され、見応え十分の一戦になったことは間違いない。
ド派手なエンターテインメント性の高いオープニングからスタートしたゲームは前半から一進一退の攻防を繰り広げていくが、28-4というファストブレイクポイントの差にも現れているように、両者の命運を分けたのが「速さ」の部分であった。ホーム開幕戦となった大阪は琉球から加入したアイラ・ブラウンを先発で起用し、外国籍選手2人と同時出場させる“ビッグ3”のラインナップを敷いている。一見すると高さでのアドバンテージを予想してしまうが、この布陣で生まれる本当の意味での強さをゲームで見ることができた。
速い展開のバスケットは、今シーズン目指そうとしている大きなポイントであり、生命線の一つでもあると言ってもいいだろう。ボールを保持した瞬間にチャンスと見るや、ブラウンや橋本拓哉を中心に外国籍選手も含めて、一気に相手コートに向かって走り抜ける姿が何度も見受けられた。また司令塔の伊藤達哉や合田怜も素早い展開でボールを運ぼうとする意識が非常に強い。最終的に90-85のスコアで大阪がゲームを制したが、オーバータイムでのファストブレイクポイントが4得点と最後まで強みを活かすことができたのは勝因の一つになった。
試合後、チームを率いる天日謙作ヘッドコーチも「橋本も含めてウイングで懸命に走っていますし、チームとして走ろうとしている選手が見えています。伊藤や合田もボールをプッシュしていて、自分たちはアップテンポなゲームをやろうとしています」と、手応えをしっかりとつかんでいるようなコメントを残した。
オーバータイムで持ち味のユーロステップからのドライブでバスケットカウントを奪い、勝利を決定づけたプレーも含め、チームに勢いを与える得点で勝利に貢献した橋本は「トランジションに関しては手応えを感じていますし、僕らウイングが走ることによってビッグマンも走ってファストブレイクにつながるシーンがやっぱりあって、これからも続けていきたいと思います。こういう接戦を勝利できて、自分たちのプレーに関する自信と強さを感じています」と、HC同様にいい感触を得ている様子だった。
そして、“ビッグ3”の大活躍の陰には、もう一つの「速さ」が隠されている。それはボールを展開する速さだ。チームでしっかりとボールをシェアしながら、いいスペースを作った形でシュートを放っていく場面が多くあった。その裏付けとしてチームアシスト数25本の数字を生んだのである。チーム全体でのもう一つの意思統一がなされていると言っていいだろう。
古巣との対戦となったブラウンは、3ポイントシュート3本を含む20得点を記録。「今日は自分自身がベストを出せるようにという気持ちでゲームに臨んで、結果としてチーム一丸となって戦って勝利できました。非常にうれしいです。ここでは自分のスキルや強みを最大限発揮できていると感じていて、その裏には非常にいいパスをくれる選手が多くいるというのがあります。これをしっかりとシーズンとおして継続していきたいです」と笑顔で語った。
ブラウンに負けず劣らず、外国籍選手2人も非常に素晴らしい活躍を見せて勝利に貢献。21得点5アシストを残したショーン・オマラは「後半にチーム全体でステップアップして厳しい延長戦を激しく戦い、勝利できて良かったです。このチームはセルフィッシュな選手がおらず、全員がチームに貢献できてプレーに関わる事ができるのが強みですし、そこに自信を持っています。自分はこのリーグでの典型的な外国籍選手とはタイプが少し違っているかもしれませんが、コーチが自分を活躍できるような場をくださったことに感謝していますし、自分がその中で役割を果たせていると感じています。この大阪での生活も出身地のシカゴと似ている大都市ということもあり、人々と一緒に過ごすことが好きな自分にとってはいいことで満足しています」と、公私ともに充実している様子をうかがわせた。
そしてヨーロッパでの実績も十分なベテラン、リチャード・ヘンドリックスはゲーム最多の28得点に加えて、13リバウンドに3ブロックと攻守で大暴れ。焼肉、しゃぶしゃぶ、寿司など日本食が大好きだという彼は、勝利に対しての充実感とともにベテランとしての責任感も話した。
「ホームでの勝利は非常に大切なことだと考えています。その中で今日はオーバータイムでもそうでしたが、チームメートと良いケミストリーから素晴らしいプレーが何度も出て勝利できました。シーズンとおして自分の経験を活かして、チームメートとコミュニケーションを取りながら責任を果たすことができればいいなと感じています。オンコートでもオフコートでも非常に優れた人間性を持っているチームメートがいる、この大阪で目標でもあるチャンピオンシップ進出を達成したいですし、自分がここで何ができるのかという部分を証明していきたいですね」
チームとして戦える人間性を持つメンバーを補強し、チームとしての速さを追い求めて戦う大阪。過去の悔しさを払拭するために、この速さをいかに継続できるかがカギになるだろう。最後まで走り抜くことができるのかに注目していきたい。
文=鳴神富一
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