
2025.06.13
「いいプレーをしないと試合に出られないということも自分の中では覚悟して富士通に来たので、その中でこういう賞を取れたことはすごくうれしいです」
富士通レッドウェーブの宮下希保は、2024-25Wリーグ・プレミアリーグにおいてベスト6thマンを受賞。移籍1年目でのタイトル獲得となった。
宮下は、178センチのパワーフォワード。足羽高校(福井県)を卒業後、アイシンウィングス(当時はアイシン・エィ・ダブリュ)で4シーズンプレーしたのちにトヨタ自動車アンテロープスへ移籍し、トヨタ自動車には3シーズン在籍した。そして2024-25シーズンから富士通へと活躍の場を移す。オールラウンドなプレーが持ち味で、2024-25シーズンは35試合すべてに出場。そのうち31試合がベンチからの出場で、得点だけでなくディフェンスなど攻防においてチームの皇后杯とWリーグ連覇に一役買った。
自身の成長といろいろなバスケットを学びたいという理由などで富士通へ入団した宮下は、「トヨタ自動車も間違いなく成長させてくれたチームですが、同じポジションの宮澤(夕貴)さんの存在だったり、学ぶことがたくさんあったりして、この一年は本当に成長できた一年だったと強く感じます。移籍という自分の決断は間違いではなかったなと感じています」と、富士通1年目を振り返る。
ただ、新天地では「トヨタ自動車以上に得点を求められるようになり、そこでうまくいかないことがずっと続いて、『やらなきゃ』と思っているけれど、『もういいかな』と気持ちが切れそうになったときもありました」と、苦悩の時期があったことも明かしてくれた。それこそ富士通はパクシンジャカップ(韓国/8⽉31⽇〜9⽉8⽇)と中国開催の「FIBA女子バスケットボールリーグアジア2024」(9月26〜28日)に出場し、「8月からシーズンが始まっていたような感じ」(宮下)と、長くタフなシーズンを過ごした。その影響や自身のパフォーマンスがなかなか上がらないこともあって12月中旬の皇后杯の頃が「個人的には一番苦しくて、気持ちが落ちているわけではないけど切れてしまいそうだった」そうだ。
その苦しい時期を乗り越えることができたのは一緒に戦う仲間の存在が大きかった。
「(年齢が)上の人たちが引っ張ってくれました。『ここまでやらないと優勝できないのか』と感じるぐらい上の人たちの存在は大きかったですね。それにチームには下を向いてる人が一人もいなくて。目標を立てながらみんなで頑張っていたので、ここで自分が切れてしまったらチームのためにならないと思ってギリギリのところで頑張っていました。みんなが個人練習やチームミーティングから優勝に向けて上を向いてたので、そこは自分も気を引き締めなくてはいけないと思うことができました」と、宮下。また、同級生の江良萌香、赤木里帆の2人も「プライベートで遊んだり、ご飯行ったり。話がしやすいし、自分を出しやすいチームメートがいてくれた」と、悩んだ時期にも支えとなってくれたようだ。
トヨタ自動車時代、3年目(2023-24シーズン)はスターターだった宮下は、バックアップメンバーを務めるのはトヨタ自動車の2年目以来。そのため、富士通で再びバックアップでの出場に「最初は久しぶりでやりずらさがあった」という。しかし、「トヨタ自動車の2年目はシックススマンとしての役割、経験ができたなと感じていたので、あのときの楽しかったことを(今シーズン)思い出すことができました」と、声を弾ませた。
苦しい時期を「踏ん張ることができたら少しずつリングに向かうようになっていった」という宮下。チームとしても最終的には皇后杯とWリーグとの2冠を獲得し目標を達成した。
結果を残したといえる1年目だが、本人はまだ納得はいっていない。
「スタートメンバーもシックススマンもそれぞれ責任があると思います。私は与えられた立場、環境の中でやっていくだけなので、スタートとして必要ならスタートで頑張りたいですし、シックススマンとして必要なら今シーズン以上にもっと頑張らないといけないと思っています。絶対に現状維持だけはしたくないので、自分のプレーを成長させて、もっともっといろんなことができるようになって、求められる立場で精いっぱい頑張りたいです。どれだけチームの流れを変えられるかは意識したいし、今シーズンは得点面であまりチームに貢献できなかったと思っているので、来シーズンはそこも伸ばしていけるように頑張ります」
Wリーグでのキャリアは8年。実直な富士通の新戦力は、しっかりとした口調で次なる戦いを見据えていた。
文=田島早苗
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