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12月24日、高校バスケの真の日本一を決める「SoftBank ウインターカップ2025 令和7年度 第78回全国高等学校バスケットボール選手権大会」は大会2日目。東京体育館の女子2回戦に、福井県代表の福井工業大学附属福井高校が登場した。
創部2年目でウインターカップ初出場を果たした福井工大福井は、1回戦に続き京都両洋高校(京都府)との2回戦も99-73で制し、ベスト16入りを決めた。
試合は第1クォーターこそ競り合う展開となったが、第2クォーターに27-17と突き放すと、後半も攻撃の手を緩めず。キャプテンの小池昌鈴(2年)がゲームハイの28得点と12リバウンド、留学生のサジョ レイ(2年)が24得点10リバウンドを記録。攻守で圧倒する内容を見せた。
試合後、小池は「留学生のセンターの強さや、周りのスピードについていくことができた」と手応えを口にした。序盤の停滞についても、「自分たちの調子が上がらない中で、『ディフェンスから』と全員で声をかけ合いました。リバウンドを取ってから走る自分たちのペースに持っていけたことが大きかったと思います」と振り返った。
新潟県出身の小池は、全国中学校大会出場の経験を持つ。あえて伝統のない新設チームを選んだ理由は、かつて県立足羽高校をウインターカップで3位へ導いた林慎一郎コーチの存在だった。
「林先生のもとで教わりたい、そして留学生と一緒にやってみたいという思いがありました。高校に来て、先生からディフェンスの意識を徹底的に教えてもらい、最近になってやっと形になってきたと感じています」
今夏のインターハイで全国大会初出場を果たし、ベスト16に進出した。そして、この冬、チームは「ベスト8」という明確な目標を掲げている。小池は「ディフェンスでリズムを作り、そこから前に走るブレイクを徹底したい。初めてのウインターカップという舞台で、全国に福井工大福井の名を広めたいです」と力強く語った。
チームを率いる林コーチは、県立足羽高校を退職後、1年の準備期間を経て、新たに女子バスケットボールの強化を決めた福井工大福井に着任した。
伝統のある県立足羽では、チームの一員としての心がけに始まり、声の出し方やウォーミングアップのメニューに至るまで、先輩が後輩へと自然に受け継がれていた。そのため、林コーチが細部まで直接指導する必要はほとんどなかった。
しかし、創部間もない福井工大福井では、そうした「当たり前」を一から言葉にして伝える必要があった。「伝統がないから、一つひとつ言葉を尽くして話していかなければならない。今の2年生とは、今のバスケット、1対1の強さや速さにどこまで挑戦できるか、ずっと話をしてきました」。
加えて、かつての指導スタイルからの変化も実感している。
「今の『Z世代』と呼ばれる子たちには、心に火をつけるための工夫が必要。僕らの時代とは動機付けが違う。黒板に明確なメッセージを書き、感謝の気持ちを言葉にする。足羽時代よりも、子供たちとの対話は圧倒的に増えましたね」と笑顔を見せる。
林コーチが目指すのは「点数を80点取って、相手を60点で抑える」走るバスケットだ。この日の99得点は、その理想を体現する形となった。そして明日、チームは大一番を迎える。対戦相手は、高校バスケ界の女王・桜花学園高校(愛知県)だ。

福井工大福井を率いる林慎一郎コーチ[写真]=SoftBank ウインターカップ2025
林コーチにとって、桜花学園は特別な存在。同校を率い、高校女子バスケットボール界の名門へと築き上げた指導者が、昨年末に亡くなった井上眞一氏である。林コーチは県立足羽の強化のために井上氏の門をたたき、指導を仰いだ経緯がある。さらに、アンダーカテゴリーの女子日本代表では、その志を継承した立場でもあり、公私にわたって縁の深い先輩指導者だった。
「去年、井上先生が亡くなった翌日にお宅へお参りに行きました。だからこそ、今大会でどうしても桜花と戦うところまで行こうと、選手たちとも話してきたんです。井上先生が『林が来たか』と待ってくれているような気がして。井上先生からバトンを受け取った一人として、今の自分がどこまで挑戦できるかを見せたい。明日は勝っても負けても、一生懸命やりたいと思います」
福井のレベルを上げたい、福井を盛り上げたいという林コーチの情熱は、新たな教え子たち受け継がれていくことだろう。
「少しずつ伝統になっていったら。明日がまた、この子たちの財産になればいい」
伝統校のプライドと、新設校の挑戦が交錯する第3回戦。福井工大福井が、女王・桜花にどこまで迫れるか注目が集まる。
文=入江美紀雄