2019.07.04
どんなチームにも主役がいれば脇役もいる。強いチームであればあるほどその脇役の存在感も光るものだが、現在リーグ全体の首位を走り続けている千葉ジェッツでそのポジションに鎮座しているのは石井講祐だ。富樫勇樹やギャビン・エドワーズといったリーグを代表する選手を抱えるチームにあって、貢献度の高さでは石井も彼らに全く引けを取らない。秋田ノーザンハピネッツの大黒柱だった田口成浩がスターターになれないのも、同じポジションの石井の存在があるからだ。
3月13日のアルバルク東京戦も、先制された直後に11-0のランの口火を切る3ポイントや、即得点につながるフロントコートでのスティールなど、要所で石井の働きがチームに勢いをもたらし、昨季ファイナルで大差で屈した相手に14点差をつける快勝の立役者になった。「昨季のファイナルでああいう負け方をしたので、今季は最後に勝つために強豪としっかり戦って勝ちきる力をつけないといけない。相手はピック&ロールや強度の高いディフェンスをずっと続けるチーム。昨季はそれを嫌がって自分たちから崩れることが多かったのが、今は我慢できるようになったと思います」
石井といえば、この試合でも4本中3本決め、成功率47.7パーセントで堂々のリーグトップを誇る3ポイントの印象が強い。確率良く決めている点については、本人も「チームのオフェンスのリズムに自分が合ってきている」と好感触を得ているようだ。しかしながら、石井の真骨頂ともいうべきはディフェンスだろう。スティールは現在1試合平均1.4個でリーグ7位。シーズン序盤から安定して数字を積み重ねてきたが、リーグ戦の中断期間が明けた3月は5試合で13個、1試合平均2.6個とペースが上がっている。シーズン終盤にさしかかり、「チームとしてもディフェンスから走るのが一番の強みなので、もう1回ディフェンスをしっかりやろうということをバイウィークの間にチームで話をして練習してきました」とディフェンスへの意識はチーム、個人ともにさらに高まっているとのことだ。
練習生から這いあがり、今や優勝候補チームの不動のスターターとして地位を確立した石井。その泥臭いディフェンスこそが、エリート街道を歩んでこなかった石井の本当の魅力と言っていい。ディフェンスマインドを強調する千葉において、その中核を担っている石井を脇役と呼ぶのはふさわしくないのかもしれない。
文=吉川哲彦
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