2023.08.18
6月10日、2021-22シーズン限りでの現役引退を発表したサンロッカーズ渋谷の広瀬健太が引退会見に臨んだ。
広瀬は島根県出身の現在36歳。松江東高校、青山学院大学を経て、2008年に当時JBLのパナソニックトライアンズでキャリアを始めた。2013-14シーズンに日立サンロカーズ東京(現SR渋谷)へ移籍すると、Bリーグ開幕後もSR渋谷でプレー。Bリーグでの6シーズンでポストシーズンを含め通算297試合、キャリア14シーズンで通算653試合に出場し、ユニフォームを脱ぐ決断を下した。
引退後は「2日に1回ぐらい寂しい気持ちがありました」というが、「今は新しいことに向かって、頑張っていきたいです」と胸中を明かした。キャリア14シーズンをプレーし、2009年からは日本代表に選出された経験を持つ。「短かったような、長かったような。よくよく考えれば、ルーキーシーズンのことをあまり覚えていないので、今はやっぱり長かったんだなと思っています」と笑顔を見せた。SR渋谷には前身を含め9シーズン在籍。2015年にはクラブとして2000年発足以降初のタイトルをもたらし、2020年にも二度目の天皇杯優勝を飾った。
「14年間でいろいろなことを経験させてもらいました。かつて所属したパナソニックトライアンズはチームがなくなり、ものすごく大きなショックを受けました。その中で最後(2013年)に天皇杯で優勝できました。その後、サンロッカーズに迎え入れてもらえて、天皇杯を二度獲ることができました。若手だった時からベテランと呼ばれる年齢になって、若い選手と接する機会も増えました。そういった選手とコミュニケーションを取っていくことで、人間としても成長できたと思っています。『あの試合、あの瞬間』というのは今出てきませんけど、14年間、総じていい経験をさせていただいたと思っています」
年齢を重ねてきたとはいえ、2021-22レギュラーシーズンは15試合の先発を含め56試合に出場。1試合平均のプレータイムは12分17秒だった。2019年に負った左膝前十字靭帯断裂という大ケガに苦しみ、それが引退を考える引き金になったようだ。
「今シーズンに限らず、前十字靭帯を断裂した時から引退ということを毎年考えていました。自分の体や気持ち、闘争心は、自分の想像している姿と離れてきている部分があったのかなと。若い時はコートに出たら、『全員を投げ倒してやる』というようなイメージでいましたけど、少しそういったことも薄くなってきました。(引退を決めたのは)この時、というのはありませんけど、シーズンをとおして、新しい道に行くことが自分にとっていい決断だと思ってきました」
6月からは日立製作所で働いているという。同社が持っている不動産を取り扱う部署で、「覚えることが多くて大変です」。現役生活を終えたあとも指導者などでバスケットボールに関わる選手も多いが、広瀬は「僕の考え方として、バスケットボールしかしてやってこなくて、そういう人生が嫌でした。1人の大人として対応できるようになりたいです。全く新しいことに飛び込むのは僕自身も楽しいですから。自分のアドバンテージから離れて、イチから鍛え直してもらおうかなと思っています」と、第二のキャリアについて持論を展開した。
所属チームの休部、リーグの分裂、そしてBリーグ誕生と、キャリアを通じて様々なことを経験。母校にあるホームアリーナの青山学院記念館にプロバスケットボール選手として帰還した当初は大学生時代の思い出が蘇ってきたというが、リーグの発展に伴い、渋谷の地にも企業チーム時代とは違った“非日常”の空間が広がった。
「バスケットは楽しい」。小学4年生の時に「サッカーにするか、バスケにするか迷った」少年がバスケットボールを選び、14シーズンものキャリアを全うした。
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