2023.05.14

運命の決戦で自らのバスケを取り戻して勝利したA東京…すべてをかけて最終戦に臨む

第3戦も「泥臭いことをチーム全員で」戦うことを誓ったA東京の安藤 [写真]=鳴神富一
スポーツジャーナリスト

 もはや運命と言っていいだろう。2シーズン連続でチャンピオンシップのクォーターファイナルで顔を合わせた両チーム。さらに昨シーズン同様に島根スサノオマジックのホーム、松江市総合体育館が決戦の地となった。島根対アルバルク東京の第1戦は、ペリン・ビュフォードがB1初となるCSでのトリプルダブル(33得点17リバウンド14アシスト)を達成。86−71のスコアで攻防にわたりA東京を圧倒、過去最高の入場者となった4486名のブースターを喜ばせた。

 A東京にとって負けられない第2戦は、序盤から激しいチームディフェンスで島根に流れをつかませず、オフェンスでもフィジカルかつインサイドを徹底的に突く戦術で得点を重ねていく。それでも第2クォーターでは島根の日本人選手たちのアウトサイドシュートやビュフォードの獅子奮迅の活躍で逆転を許す。しかし、第3クォーターに安藤周人が躍動してスコアラーとしての役割を存分にコート上で披露。シュートが外れてもセバスチャン・サイズアレックス・カークの両外国籍選手がオフェンスリバウンドを次々と獲得して逆転する。ラストの10分間でもコート上の選手たちのプレー強度は落ちることなく、そのまま逃げ切って82−72と勝利を収めた。

 この試合、前日のアクシデントでライアン・ロシターをさらに欠いて、窮地に立たされたが、本来の自分たちの姿を取り戻してA東京は1勝1敗のタイに持ち込んだ。

「昨日の反省点であるゲームに対する集中力、そしてメンタルのミスをいかに減らすことが今日のカギでした。40分間近く、選手たちは集中力を継続して我々のスタイルをやり切った。今シーズン、ベストの集中力とエネルギーレベルで勝利をつかんだと思います。そして、我々の強みであるオフェンスリバウンドからセカンドチャンスポイントにつなげましたし、選手の状況判断も素晴らしく、オープンを作っていいシュートを決め切ったのは非常に良かったです」と満足した様子でゲームを振り返ったのは、指揮官のデイニアス・アドマイティス。

 一方、安藤は自分たちのバスケットが展開できたことに満足しつつも、サイズの試合前の言葉がマインドを変えるスイッチになったことを明かしてくれた。

「サイズが試合前の円陣で『今日を楽しもう』と言ってくれたおかげで、全員の気持ちが晴れたというか、自分たちのやるべきことに一丸となってフォーカスできたと思います。あの一言がなかったら、たぶん全員が色々と気負ってしまったかなと。相手の得点を70点台に抑えて勝利できたは良かったのですが、今日勝てば終わりではないので。昨シーズンは第3戦にここで敗れたので、いい準備をして月曜日を迎えたいです」

A東京の安藤は試合前のサイズの一言で集中できたと語った [写真]=鳴神富一


 同じ対戦相手、同じ会場、そして1勝1敗で最終戦を迎える同じシチュエーション。さらに、第2戦までのゲーム内容も全く同じと言っていいぐらい昨シーズンと同じだ。運命の第3戦、A東京の選手たちが昨シーズンの途轍もない悔しさを晴らすために「いかに今日のようなゲーム内容を展開して、相手のオフェンスを止めるチームディフェンスを展開する。そして、このシリーズを勝ち取りたい」とアドマイティスHCは強調する。

試合後の会見で「このシリーズを勝ち取りたい」とアドマイティスHCがコメント [写真]=鳴神富一


 安藤は「これもなにかの縁かもしれない」と今置かれている状況を率直に語りつつ、全てを決する第3戦への意気込みを語ってくれた。

「我々が2連覇してから時間が経ち、本当にチャレンジャー精神でやらないといけない中で今シーズンは全員が揃わず苦しかったのは事実です。でも、ケガ人がいたから勝てなかったという言い訳は、もうしたくない。昨シーズンと同じ相手、同じ場所……そして第3戦になってしまったのも、何かの縁だと思っています。そのうえでここを突破すれば、いい流れになると感じていいますし、第3戦でも今日のように泥臭いことをチーム全員で一層レベルを上げてやることが重要だと感じています」

 運命の相手との決戦は1日置いて、5月15日19時5分にティップオフ。昨シーズンの涙を、悔しさを、無念さを――その全て晴らすために、そして二度と繰り返さないために。自分たちにフォーカスして、A東京の選手たちはコートに立つだけだ。

取材・文・写真=鳴神富一

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