2023.05.15

横浜BC、序盤から“エナヅー”全開で川崎に連勝…琉球とのSFも「全員で戦えば必ず勝てる」

「今年のチームは『全員が主役』」と森井は胸を張った [写真]=B.LEAGUE
元バスケットボールキング編集部。主に国内バスケ(Bリーグ、高校・大学バスケ)を中心に取材活動中。バスケでオウンゴールしたことあります。

序盤からたたみかけ、2連勝でセミファイナル進出

『FULL THROTTLE』

 川崎ブレイブサンダースが今季のスローガンに採用した言葉だが、横浜ビー・コルセアーズにもそれに負けない合言葉がある。川崎市とどろきアリーナで行われた「日本生命 B.LEAGUE CHAMPIONSHIP 2022−23」のクォーターファイナル第2戦、横浜BCは試合開始から“エナヅー”全開のプレーでたたみかけた。

 エナヅーとは「エナジー」を表す言葉なのだが、そうなった経緯は少々照れくさいものである。今シーズンの開幕前に行われた「B.LEAGUE 2022−23 SEASON TIPOFF カンファレンス」にキャプテンの森井健太が登壇した際、クラブの『ココロ、たぎる。』ポイントとして「エナジー」とフリップに書いたのだが、その文字が「エナヅーにしか見えない(笑)」といった具合でビーコルブースターの間で話題となり、今となってはすっかりブースターやチームの間で定着したのだ。

 34−15。勝てばセミファイナル進出が決まる一戦は、最初の10分間で大きな差がついた。前日のGAME1では立ち上がりから0−11のランを許した横浜BCだったが、GAME2ではデビン・オリバー長谷川技との1on1から連続でタフショットを沈めると、スティールからダンクも決めて6−0。次の守備では森井健太が相手のミスを誘ってファストブレイクポイントを奪い、開始約2分で川崎にタイムアウトを取らせた。

 再開後はオールコートプレスで揺さぶりをかけて12−0とし、中盤にはオリバー、森井が連続で3ポイントシュートをヒット。第1クォーター残り4分47秒にコートインした河村勇輝も、いきなり2本連続の3ポイントを射抜いた。

 横浜BCは攻守で圧倒し、第1クォーター残り3分34秒で18点差。この時点で川崎は前半のタイムアウトを使い切った。それでも流れは変わらず、終盤にはパトリック・アウダが6本中6本のフリースローをマーク。レギュラーシーズンでの成功率は56.7パーセントとなったものの、最終節の富山グラウジーズ戦から19本中1本しか外していないアウダの変貌ぶりには、この日もビーコルブースターから「おぉ!」という歓声があがり、その声は喜びよりも驚きに近いようなトーンだった。
 
 横浜BCは第2クォーター以降もリードを活かして優位に試合を進め、最終スコア104−84で勝利。この40分間で、青木勇人ヘッドコーチが一度もタイムアウトを請求することはなかった。序盤から大量リードを作れたことが大きな要因ではあるが、指揮官はじっくりと戦況を見守った理由をこう明かす。

「今日に関しては1つのプレーでダメでも我慢して、2度続けてやられたら取ろうという考えがありましたけど、選手たちがしっかりと修正してくれました。むしろタイムアウトを取りたいのは川崎さんの方でしたし、相手に息をつく時間を与えるよりは、そのまま時間を流して修正するタイミングをあげたくなかったです」

横浜BCの青木HCは「選手たちがしっかりと修正してくれました」とコメント [写真]=B.LEAGUE

次なる航海は『沖縄経由、横浜行き』をかけた戦い

 一時はニック・ファジーカスの3ポイントやターンオーバーからの失点で嫌な雰囲気が漂う場面もあった。だが、横浜BCは次のポゼッションでしっかりと決め返し、ベンチスタートの大庭岳輝森川正明らも要所での得点が光った。外国籍選手0人での戦いを強いられた川崎に対してプレータイムも分散でき、ベンチワークでも余力を残しての2連勝。「最初から全員でバトンを繋ぎながら表現できた」と青木HCが振り返ったように、横浜BCは出場した11人が得点を挙げ、100点ゲームの快勝で新たな歴史を作った。

「青木HCもよく言うんですけど、本当に今年のチームは『全員が主役』です。一人ひとりが自分の強みを活かせればどんな相手に対しても戦える、そういったチームを目指してやってきました」

 そう話す森井をキャプテンに据えて戦ってきたチームは、第33節が行われた4月19日、開幕前に掲げた「チャンピオンシップ出場」という目標を達成。しかし、以降の試合は負けが続き、レギュラーシーズン5連敗という状況で初の大舞台に踏み入れた。

 CS開幕前は「僕も含めなかなか前を向けていなかった」と森井は言う。それでもチームは「CS優勝」という新たな目標を定め、まずは神奈川ダービーをものにするために全力を注いだ。そして再び心を一つにし、見事に琉球ゴールデンキングスへの挑戦権を獲得。今季のレギュラーシーズンでは1勝3敗で終えたものの、天皇杯とCSの結果を踏まえれば、クラブとして初めて川崎に勝ち越すこともできた。

「『今まで支えてくれて方々が今週の川崎戦を実現してくれた』という感謝の気持ちを持って戦おうと話し合いました。本当にいい準備ができたなかで土曜日の試合に入れましたし、それが2日間で勝ち切れた要因だと思います。来週はまたチャレンジになりますし、僕たちは天皇杯のセミファイナルで負けた悔しさがすごく残っています。厳しい戦いになりますけど、全員で戦えば必ず勝てると思うので、また来週に向けてマインドセットしていきたいなと思います」(森井)

森井は体を張ったディフェンスでチームをけん引した [写真]=B.LEAGUE


 試合後、会見場に向かうため一度アリーナの外へ出ると、空はティップオフ前とは違って雨が降っていた。小学校低学年くらいだろうか。「5」の数字がプリントされた白いロングTシャツを着た少年とすれ違った際、聞こえてきた一言が印象的だった。

「勝利の雨だな」

 あいにくの空模様でさえも、ポジティブに変えられる結果をブースターへ届けることができた。今の横浜BCには、1週間でさらに進化できる強さがある。海賊らしく、敵地でも屈しない強さがある。『沖縄経由、横浜行き』の切符をつかみ取る航海へ、勢いよく舵を切った。

取材・文=小沼克年

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