Bリーグ公認応援番組
『B MY HERO!』
12月23日から29日の期間、都内で開催される「SoftBank ウインターカップ2019 令和元年度 第72回全国高等学校バスケットボール選手権大会」。高校バスケット界で最も注目の集まる“冬の祭典”に向け、バスケットボールキングでは大会の注目チームをピックアップした。
23日に幕を開ける2019年のウインターカップ。福岡第一高校(福岡県)の連覇に待ったをかける最有力候補として挙げられているのが、京都府代表の東山高校だ。
なぜなら、夏のインターハイでは最終的に14点差で敗れたものの、第3クォーター終了時点では45-49と肉薄。そして、10月に行われた交歓大会では76-59で勝利し、福岡第一に今シーズン初黒星を与えたからだ。
加えて、同大会ではインターハイベスト4の開志国際高校(新潟県)にも勝利しており、「そこで勝ちきれたというのは僕も選手たちも自信になったと思います」と大澤徹也コーチも手応えを感じている。
「うちはオフェンスからリズムをつかむ」と指揮官が強調するように、東山はディフェンスに重きを置く多くの強豪チームとは反対にオフェンス型のチーム。しかも今年は、どこからでも得点の取れる布陣で、「元々走れる選手たちなので、ハーフコートにプラスアルファで速攻でも点を取れる」(大澤コーチ)。
チームの軸は1年次から先発を務める司令塔・米須玲音と、膝まで届きそうなくらいの長いウィングスパンを誇る206センチの“ジャンピ”ことムトンボ・ジャン・ピエール(ともに2年)。さらには「そこを止めにきた時に3年生の2人が打開してくれるのも強み」と、大澤コーチも信頼を寄せる松野圭恭、脇阪凪人のオフェンス力も強力だ。
「一番得意なのはドライブとジャンプシュート」と口にする松野は、ディフェンスとの距離ができれば迷わず3ポイントも射抜く得点源の1人。一方の脇阪は166センチと身長ではハンデを背負うが、それを補って余りあるシュート力とディフェンス力を併せ持つ。主将としてもチームを引っ張る存在でもあり、そのキャプテンシーはチームメートや指揮官からも一目置かれているほどである。
「自分が引っ張ろうと意識しすぎるとプレッシャーになるので、そこは脇阪が5人分くらいやってくれています(笑)。なので自分は好き勝手にやらせてもらってる感じです」(松野)
「チームとして彼に対する思いは強いですね。相手のエースをマークするのも彼ですし、チームの流れが悪い時に奮い立たせるのも彼です。色んな部分で要求は多いですが、それに応えてくれる選手なので、脇阪に関しては心配していないですね」(大澤コーチ)
そして、この4人とともに先発に名を連ねるパワーフォワードの中川泰志(2年)も中学時代は点取り屋。しかし、今年はチームの勝利を最優先し、リバウンドなどの献身的なプレーで汚れ役を担う。「役割としてはチームにとってすごく大事です」と大澤コーチも踏んでおり、優勝へのキーマンとも言えるだろう。
先発メンバーの完成度が高い東山だが、インターハイでは主力5人がほぼ出ずっぱりの状態が続いた。当然、最大6試合に及ぶトーナメントを5人だけで勝ち上がれるほど、1年の集大成であるウインターカップは甘くない。
大澤コーチは課題である控えメンバーのレベルアップについてこう話す。「今回の国体で1年生を試す機会があったことはありがたかったです。国体に出た選手たちは非常に伸びましたね」。
具体的には西部秀馬、堀陽稀(ともに1年)に加え、3年生の横井裕史の名前を挙げ、「ここらへんが(先発メンバーに)絡めるかなと。夏よりも成長してくれているので楽しみです」と期待を寄せており、控えメンバーの成長にも注目が集まる。
組み合わせでは第4シードの報徳学園高校(兵庫県)が所属する左下のブロックに入った東山。「手を抜ける試合は1つもないですが、徐々に上げていける組み合わせになった」と、感触を述べた大澤コーチ。選手たちも互いに勝ち進めば準決勝で対戦する福岡第一に対し「苦手意識はない」と口をそろえ、王者との再戦を望む。
福岡第一を倒したことで周囲の期待値も一気に上がった。その期待に応え、2016年以来となる決勝まで駆け上がるには「勝ちきる力」(大澤コーチ)があるかどうか。東山が今回のトーナメントをかき回す存在になることを期待したい。
攻撃重視の東山のスタイルを体現するスモールフォワード。積極的なアタックでドライブやアウトサイドからも得点を取ることができ、大澤コーチからは「とにかく点を取れ」と言われるほどだ。
「インターハイまでは、自分が今までやっきたことをしっかり出すことを心掛けていて、それが全国でも通用しました。あとは自信を持ってやるだけなので、これから技術面を向上するとかではなく、堂々とやれば自分のポテンシャル以上のことが出せると思っています。自分自身、次のウインターカップは高校に入ってから5回目の全国大会。まだメインコートに1回も立てていないので、まずはそこを目標に初戦から走って点を取っていきたいです。今年のチームは思っていたよりもすごくいいチームで、試合していて楽しいですし、負ける気がしないです。日本一になれるように、チームのためにできることをやるだけです」
気持ちを全面に出し、声でもプレーでもチームをけん引する“絶対的主将”。高確率でリングに吸いこまれる3ポイントが最大の魅力であり、脇阪自身も「緊迫した試合の方がシュートが入るので、大一番で活躍できる自信はあります」と豪語する。
「インターハイでは自分の3ポイントは入った印象ですけど、自分がいくら決めても試合に勝てなければ意味がないので、満足はしていないです。インターハイ後、チームとしてはディフェンスのポジションや細かい部分を詰めていて、個人的にはインターハイで上手くいかなった留学生をかわして打つシュートやピックプレーでどれだけ勝負できるかを練習しています。全員日本一しか見ていないですし、(準決勝では)福岡第一と当たりたいです。福岡県が事実上の決勝と言われるのが嫌なので、第一も大濠(福岡大学附属大濠高校)も倒して日本一になりたいです」
「自分の仕事はリバウンドを取って、ファストブレイクで走ること」と語る中川は、泥臭いプレーでチームを支える。周りの選手にマークが寄れば、スペースに飛びこんで確実に得点につなげ、ピック&ポップからの3ポイントも得意だ。
「インターハイでは1、2回戦は自分としてもよかったと思います。だけど、福岡第一戦は(クベマジョセフ)スティーブのブロックを意識しすぎてしまい、いつものプレーができなかったので悔しかったです。夏以降は外のシュートが入らない時に中に切り替えて、ドライブからキックアウトしたりとアシストが増えたかなと思います。まだミドルシュートの確率に波があるので、そこも上げていきたいです。インターハイで負けたのは自分の責任もあると思うので、個人的にも借りを返したいですし、3年生を日本一にさせてあげたいです」
東山のゴール下にそびえ立つ206センチのセンターは、バスケットIQが高くシュートタッチも柔らかい。長いウィングスパンを活かしたブロックショットは、相手にとって驚異でしかない。
「インターハイが終わってからはシュート、とくにミドルシュートの練習をしてきました。個人的には少し上手くなったと思います。また福岡第一と試合がしたいし、留学生の(キエキエトピー)アリは一緒の中学だったのでマッチアップできたら嬉しいです。ウインターカップではリバウンドとブロック、シュートを頑張ります」
チームメートを変幻自在に操る2年生ポイントガード。最大の武器である“分かっていても止められないパス”は引き出しも増え、昨年以上に伸び伸びとプレーする。
「今年は誰にパスを出してもシュートを決めてくれるので、とてもやりやすいです。1年生の時は練習中から倒れてばかりでしたけど、体幹を鍛えたことで当たられても倒れなくなってきました。インターハイでは自分たちが最後のフィニッシュを外しすぎたので、相手よりかは自分たちのミスで負けた印象です。今年は2年生になって遠慮する部分も減ったので、司令塔としてどう周りを使っていくのかと、自分があがらないように落ち着いたプレーを意識して一戦一戦を戦っていきたいと思います。福岡第一にはウインターカップで勝たないと意味がないので、そういう面では第一を倒して優勝したい気持ちはあります」
身長は180センチだが、フィジカルが強く主にディフェンス面でチームに貢献。オフェンスでは「速攻やノーマークのシュートを確実に決めたい」と意気込む。
「今年は外のシュートもあって、ジャンピのインサイドも強くバランスが取れているチームです。あとは僕ら控えメンバーがどれだけ力になれるかだと思うので、そこを頑張っていきたいです。まずは流れを崩さないように気を付けて、1戦1戦気を抜かずに戦っていきたいです」
リバウンドとドライブを得意とする西部は、国体を経験したことでよりリーダーシップをとるようになった。チームとしても西部がどれだけリバウンドとディフェンスで貢献できるかがカギとなりそうだ。
「インターハイの時は緊張して自分のプレーができなかったので、ウインターカップでは自分のプレーが出せるようにしていきたいです。オフェンスだけでなく、ディフェンスやリバウンドでも頼りになる存在になりたいですし、チームが声の出ていない時に声を出せる選手になりたいです」
インターハイはケガのため不出場だった1年生の堀。188センチながら走力があり、指揮官も「外回りは遜色なくプレーできると思います」と期待を寄せる存在だ。
「チームではディフェンスと走ることを求められています。まだまだ実力不足ですが、シュート力やフィジカル強化に力を入れて少しでもチームに貢献できるようなプレーをしたいです」
取材・文=小沼克年