Bリーグ公認応援番組
『B MY HERO!』
日本バスケットボール協会(JBA)がメディア向けの参考資料として、各校にアンケートを実施した結果を配布している。そこにはロースターのプレーの特徴が記されているのだが、彼女の欄には「チームの軸であり攻撃の起点。リズムを使い分け、見ている人を楽しませるガード」とある。
小林高校(宮崎県)のポイントガード、フェスターガード・ヤヤ(3年)のことである。
「SoftBank ウインターカップ2019 令和元年度 第72回全国高等学校バスケットボール選手権大会」の女子2回戦、小林は倉吉北高校(鳥取県)と対戦し103-62で快勝した。前半こそ倉吉北のゾーンディフェンスに苦しみ、得点が思うように伸びなかったが、ハーフタイムで立て直すと後半だけで59-24と圧倒し、3回戦進出を決めた。
「ハーフタイムに前村(かおり)コーチから『攻め気がない。これが最後の試合になるかもしれないのに、これでいいの?』と言われ、確かにこのメンバーでやる最後に試合になるかもしれないと思ったら、今のゲームを楽しもうという気持ちになって、後半に入ることができました」
ヤヤはゲームのターニングポイントをそう振り返る。
前半はもう1つシュートタッチの定まらなかった老山花歩(3年)の3ポイントシュートが立て続けに決まり、「あれで選手たちも安心したというか、表情がよくなって楽しそうにプレーし始めました」と前村コーチ。
そこから小林の“SHOW TIME”が始まった。ハードなディフェンスからヤヤが起点となってトランジションバスケットを展開していく。ノールックパスでのゴール下への合わせがあったかと思えば、コーナーで待つシューターに矢を射るようなストレートなパスを供給する。相手がそれを警戒すれば、ディフェンスの間を自らがアタックで切っていく。
第4クォーターにはアウトレットパスを受け、ゴールに向かった瞬間にヤヤが笑いながらドリブルを始めるシーンもあった。
「速攻に入ったとき(その直前に3ポイントを決めていた)高橋(小春)が笑っていたので、パスを出せばまた3ポイントシュートを決めてくれると思って、笑顔で応えました」
笑顔でコミュニケーションは見事、高橋の3ポイントに結びついている。なんとも楽しそうなバスケットではないか。その源について聞くとヤヤはこう答えた。
「みんなが好きだし、バスケットをやるのも好きなので、どうせやるなら楽しい方がチームも上がるし、自分のプレーも上がってきます。でもそれを始めたのは今年の代になってから。3年生は12人いるんですけど、みんな個性が強いんです。その12人が楽しんでプレーをすると、チームもうまくいくし、1、2年生もそんな3年生についてきてくれる。だからかな」
そう言って、はにかむような笑顔を見せる。
コートで笑顔を見せ、ベンチに戻れば、味方のシュートに奇声のような美声を響かせて笑顔を見せ、そしてコートの外でもまた――。
ウインターカップ2019でのチームスローガンは“世界一楽しもう!”だと前村コーチが教えてくれた。ラグビーのワールドカップを見ていて、このチームでプレーする最後の大会を選手もファンも楽しめる大会をしようと考えたそうだ。
3回戦の相手は留学生ビッグマンを擁する高知中央高校(高知県)。宮崎県内でも高さのあるビッグマンとしのぎを削り合ってきた。経験がないわけではないし、もちろん苦手意識もない。
となれば、どこまでゲームを楽しんで、笑顔でプレーできるか。
世界一楽しむ小林のバスケットをリードするのはもちろんフェスタ―ガード・ヤヤである。
文=三上太