2019.12.26

「日本一になりたい」…能代工業の佐々木駿汰が明かす来年に懸ける想い

桜丘に敗戦後、能代工業の佐々木が来年に懸ける強い想いを明かした[写真]=大澤智子
本格的に取材を始めたのが「仙台の奇跡」と称された2004年アテネ五輪アジア予選。その後は女子バスケをメインに中学、高校と取材のフィールドを広げて、精力的に取材活動を行っている。

「3年生の力に少しでもなれたら……そう思っていたんですけど、回戦が上がるにつれてまだまだ実力のなさを実感しました」

 能代工業高校(秋田県)の2年生、佐々木駿汰はゲームをそう振り返った。

「SoftBank ウインターカップ2019 令和元年度 第72回全国高等学校バスケットボール選手権大会」の男子3回戦、能代工業は桜丘高校(愛知県)と対戦し、60-77で敗れた。

 立ち上がり、能代工業は0-8といきなり大きなビハインドを背負う。しかし男子日本代表のヘッドコーチを務めたこともある小野秀二コーチはタイムアウトを取らず、状況を見守った。そんな展開の中でチームとして最初の得点を挙げたのが佐々木の3ポイントシュートだった。

 スタメンとしてコートに立った佐々木は、30分のプレータイムで3ポイントシュートを4本沈めている。前半こそベンチに下がる時間帯も多かったが、後半はほぼフル出場。彼のスタメン起用について、小野コーチは「彼はシュートがうまいんです。体はまだまだ弱いですが、ドライブからレイアップシュートに行く感覚もいい。サイズもあるし(188センチ)、将来のことも考えて、2番、3番をやってほしいと考えているんです」と構想を明かす。将来を見据えてのスタメン起用というわけだ。

小野コーチも佐々木の成長に期待を寄せる[写真]=大澤智子

 本人も「昨年に比べて3ポイントシュートの確率は確実に上がっていますし、メンタル面でも攻め気が強くなってきています」とウインターカップで手応えを感じている。

 しかしそれ以上に課題が多い。マークマンを見失うディフェンスは改善の余地が多く、ボールマンディフェンスも相手のポイントゲッターを抑えるだけの脚ができていない。佐々木自身もそれを認めている。

「能代工業は伝統的にもディフェンスが激しくなくてはいけません。個人としても、チームとしても来年はそれをもっと磨いていきたいです」

 また、フィジカル面も大きな課題だ。近年の能代工業は、フィジカル自慢の留学生を擁するチームに弱いというイメージが根付きつつある。今回敗れた桜丘にも2人の留学生がいて、佐々木は見事なまでに彼らのフィジカルコンタクトに当たり負けをしていた。本人もそれを自覚する。

「フィジカルも鍛えなければいけないと思っています。能代工業はディフェンスで鍛えられているので、下半身は強いと思うんです。でも上半身が、僕を含めてみんな細い。留学生だけじゃなく、上位に進めば進むほど、日本人でもフィジカルの強い選手がいるので、これからはトレーニングにもしっかり取り組みたいです」

 正式には決まっていないが、2年後、能代工業は他校と統合され、校名が変わる可能性も示唆されている。つまりは来年が「能代工業」として最後の年になるかもしれないのだ。

「その最後になるかもしれない年に日本一になりたいです」

 佐々木はそう口にする。まだエースと呼ばれるには程遠いが「エースになりたい」と口にする。それは小野コーチが彼に求めていることでもある。

 その道はけっして楽なものではない。課題も多い。いや、課題のほうが多い。それでも「バスケの街・能代」を背負う覚悟で、今日の敗北から佐々木は立ち上がる。

文=三上太

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