2019.12.26

延岡学園の楠元コーチが語る母校と恩師への想い「夢は渡邊雄太のような選手を育てること」

延岡学園の楠元コーチ(写真中央)は尽誠学園の色摩コーチとの師弟対決に臨んだ[写真]=大澤智子
バスケットボールキングプロデューサー(事業責任者)

 12月23日より開幕した「SoftBank ウインターカップ2019 令和元年度 第72回全国高等学校バスケットボール選手権大会」。大会4日目の男子3回戦、延岡学園高校(宮崎県)と尽誠学園高校(香川県)が激突。延岡学園を率いる楠元龍水コーチにとって、母校尽誠学園の色摩拓也コーチとの師弟対決となった。

 試合はムヤ・カバンク・フランシスの力強いリバウンドからスタートするファストブレイクで仕掛ける延岡学園に対し、小柄ながらもアウトサイドのシュート力と粘り強いディフェンスを活かした尽誠学園が一歩も引かず、一進一退の好ゲームに。どちらに転んでもおかしくないシーソーゲームとなったが、第3クォーターに一気に抜け出した延岡学園が90-76と最後までゲームを諦めない尽誠学園を突き放し、準々決勝へと進出した。

第3クォーターに32点を挙げた延岡学園が試合を制した[写真]=大澤智子

 試合後の取材に応じた楠元コーチは、まず試合に臨むチームの姿勢に言及し「(今日の)試合に臨む前に、実は9月に一度、(尽誠学園と)練習試合をさせていただき、そのときは負けました・・・」と明かす。続けて「ウインターカップに入ってからの尽誠学園の2試合をスカウティングして、選手も私自身も尽誠学園は強い。といい意味でリスペクトを持って、試合に入りました」と語った。この試合の勝因として25歳と若い青年指揮官が挙げたのがデェフェンス。

「ディフェンスには満足しています。母校ということもあり、分かっていることもありますが、試合中にうまく修正できた部分もありました。スカウティングをして約束事を追加したことがうまくはまって結果を出せたのではと思います」と事前の準備が功を奏したことに胸をなでおろした。

 大舞台での母校との対戦について問われると「感慨深い。非常に感慨深いです」と言葉を噛みしめると、続けて「指導者になって悩みがあったときには、今でも尽誠学園の色摩先生によく相談に乗ってもらっています」と感謝の言葉を口にする。「今回の試合結果を受けて、“恩師越え”などと考える方がいるかもしれませんが、恩師越えの“お”の字もありません。そんな次元では語ることが出来ないくらい、人としての指導もバスケの指導も色摩先生には追いついていないのが現状です」と恩師への溢れるリスペクトを表現した。

試合終了後、楠元コーチは色摩コーチに深々とお辞儀をしながら握手を交わした[写真]=大澤智子

 楠元コーチは高校時代、現在はNBAで活躍する渡邊雄太(メンフィス・グリズリーズ)とチームメートとしてプレーした経験を持つが、渡邊選手とプレーした経験が指導者といて活きているかとの質問に対し、色摩先生からのアドバイスを引用し「(色摩先生から)尽誠のやりかたでやりたいと思うけれど、土地柄や留学生、その地域ごとのチームカラーに合わせてチームを作っていかないとダメだ。でも自分でも大事だと思うことは、高校時代に(渡邊)雄太にも譲らなかったように、自分が信じることを譲らずにやったらいいのではないかとアドバイスをいただきました」と述べ、続けて「今までの延岡学園を受け入れながら、自分ができる指導をしっかりとしてチームを作っていきたいと思います」とチームの更なる飛躍へ尽力する決意を口にした。

 楠元コーチは、指導者としての道を歩み始めてまだまだ日が浅いが、宮崎の地へ赴いてからの夢がいくつかあると言う。その夢は、日本一のコーチとなること、日本代表に選手を輩出すること、渡邊雄太のような世界へ羽ばたく選手を育てること。そして、「選手たちのおかげで夢が一つ叶いました」と笑顔を見せ、母校に勝つという一つの夢をこの試合で果たしたことを明かす。

 ともに高校時代に切磋琢磨した親友渡邊雄太のような選手が育つ日を心待ちに、宮崎の地で奮闘する若き指揮官に注目しよう。

文=村上成

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