2022.12.25
今回、『ハイスクールキング』の企画として、Bリーグのユースチームを初めて取材。それが横浜ビー・コルセアーズU18チームだ。ここまで練習模様、選手たちへのインタビュー、ダンクパフォーマンスの動画をアップした。そして、今回の企画の最後にアカデミーディレクター/ユースチーム ヘッドコーチの白澤卓氏のインタビューを掲載する。横浜BCのユースチームの目的や現状に加え、将来についてもお話をうかがった。
取材・文=入江美紀雄
――ユースチーム、特にU18のチームの目的や目標はどういうところに置かれていますか。
白澤 我々のアカデミーが掲げているのは世界に通用する選手を輩出することです。もちろん今の段階ではまだまだ及ばないことも多いのですが、いかに時間を使って近づけてあげるかが重要だと考えています。また、Bリーグでプレーする選手を育てることも大切なのですが、仮にユースの選手がトップチームに入ったときに「こんなプレー知りませんでした」とか、「この用語何ですか?」というようなことはないようにしたいとも思っています。「この練習や戦術はユースでもやっていたよね」と思い出してもらえれば。違和感なくトップチームになじめるようにしておくことも、僕らの役割ではないかと思っています。
――現在U18の目標は何でしょうか。
白澤 U18から直でトップチームに選手を送り込むことが目標ですね。やっぱりそこに近づく選手や、ユースチームを経由してプロに上がっていくような選手を早く出さないといけないなという使命感もあります。だからそれができる環境を作らなければいけないですね。クラブとしても「それを達成するためにU18がある」というものが、社長を含めGMも共通認識として持っているので、早くそこにたどり着きたいなと思っています。
――選手のトライアウトは1年にどれくらい行いますか?
白澤 U18はだいたい月に1回トライアウトをしていています。時期によって色々で参加できる選手の人数が変わりますが、大体5人から10人くらいが毎回受けに来てくれて、大体1人、もしくは2人が合格してします。ですので、新しい仲間がどんどん増えていくような感じです。また、その日で上手くいかなくて、例えば1カ月どこかでみっちり練習してきて再チャレンジしてくれる選手もいるんですよ。そのように努力してくれる選手もいるので、僕らはその1回で終わりではなく、入口はどこにでもあるようにして、急激に背が伸びたり、プレーが変わったりすることがあるので、そこの間口はちょっと広めに置いています。
――キング選手はU15の1期生とうかがいました。
白澤 当時の関係性は今でも残っていて、「チワッス」みたいな感じでやって来て、「最近フリースロー入らないですよ」とか言って。ちょっとじゃれ合ったりきたりして懐かしいなと思います。でも彼の取り組み方や考え方とか、色んな取材を通じて彼が発信する力を見ていると、「この子すごいな」と感じることはあります。逆に我々コーチたちの方が、身が引き締まるというか、そういう可能性がある選手と関わっていると。みんなに「夢は何?」と聞けば「Bリーガー」や「NBA選手」と明確な答えが返ってきます。そうであるなら、そこへたどり着くに道をちゃんと作ってあげなきければいけない。そう感じていますね。
――ジェイコブス晶選手は特別指定選手としてトップチームでプレーしました。
白澤 彼の場合、元々はアメリカに住んでいたのですが、コロナ禍の中、日本に帰ってくることになり、ネットで調べてバスケができる場所を探していました。元々Bリーグの存在も知っていたし、本人も将来日本でプレーしたいという希望もあって、我々の門を叩いてくれたのですが、僕らもちょっとびっくりしたというのがいう正直なところです。ただ、いい意味でこのような素材を預かって、トップチームとU18の選手がどうやって行き来できるかなど、本当にとても勉強になりました。スケジュールを調整して、トップチームに行くときは誰かしらアカデミーのコーチがついて行くようにするなど、もちろん苦労もしましたけど、本人がだんだん慣れていき、トップチームで仲良くしてもらったり、面倒を見てもらって、すごい刺激になったようですし、体制とかシステム的にどうやっていくかをトライアルできたというか。そういう存在ではありましたね。
――トップチームから学ぶものは多いですね。
白澤 ベンチ入りメンバーから外れたときも、チームに帯同させてもらいました。ベンチではチームメートの3ポイントシュートが入れば、立ち上がったりして声を掛け合いますよね。でも、最初は恥ずかしくてそれができなかった。僕らが「それはダメだよ。ベンチにいても一緒に戦っているんだからやりなよ」と、アドバイスをしていたぐらいでした。それが活きたのがU18の日本代表に選ばれてFIBAアジアU18選手権に出場したときです。残念ながらケガをして試合には出られなくなってしまったのですが、それでもベンチで積極的に声を出していました。それを見て、これも成長の証だと思いましたね。
――多くの経験を自分の財産にできていますね。
白澤 取材に対しても最初はずっとモゴモゴ話していたのが、急にハキハキと受け答えができるようになりました。最初は日本語にちょっと自信なかったっていうこともあると思いますが、そういう点でも成長しています。
――今トップチームには河村勇輝選手がいます。彼がいることによって、ユースの選手たちに何か影響を与えていますか。
白澤 その影響は見えないところで大きくあると思っています。例えば、それこそあのサイズであれだけのプレーができることを証明しているわけですから、自分たちにもできると信じられることだけでもかなり大きいと思うんですよ。ガードでもサイズがないと代表に選ばれないという時期がありましたが、それが小さい選手でも使ってもらえて、生きる道がある。富樫勇樹選手(千葉ジェッツ)も含めてですけど、やっぱり彼のスピード、シュートだけではなく、ディフェンスでも体を張ってでかい選手をちゃんと守れることを見せてくれます。ユースの選手にとっては本当に勉強になりますし、しかも自分のクラブの一員として、ある意味先輩として普段からチャンスがあれば身近に見られるということは非常に貴重だと思います。素晴らしいお手本が同じチームにいるということは、やはりユースチームの利点と言えます。
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