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「田中(こころ)さんや黒川(心音)さんが油断しないようにと声をかけてくれていたけれど、スタートだけでなく、(メンバーの)15人やスタンドにいる(チームメート)全員に少しだけ心の余裕というようなものが出てしまい、その一瞬の油断につけ込まれて、このような結果になってしまったと思います」
12月26日に行われた「SoftBank ウインターカップ2023 令和5年度 第76回全国高等学校バスケットボール選手権大会」の女子準々決勝、岐阜女子高校(岐阜県)に敗れた桜花学園高校(愛知県)の福王伶奈(3年)は、このように試合を振り返った。
2年ぶりの王座奪還を狙う桜花学園にとって大会最初の山場となった一戦。序盤こそ岐阜女子に先制を許したものの、その後は田中こころ(3年)、福王、深津唯生(2年)らで得点を重ね、前半を31ー19とリードする。後半も点差を広げていく桜花学園。第4クォーター序盤には一時21点のリードを奪った。
しかし、粘る岐阜女子に3ポイントシュートをねじ込まれると、徐々に点差が縮まり、残り40秒には1点差にまで詰められてしまう。桜花学園は残り約3分から自らのミスも影響して無得点。最後は残り10秒、岐阜女子のセンターであるジュフ ハディジャトゥ(3年)にリバウンドからのシュートを決められてしまい、60-61で敗れた。
この試合、相手センターのハディジャトゥを8得点12リバウンドに封じるなど、体を張ったプレーで盛り立てたのが福王だ。それでも、試合後は「(それまでの)3試合、留学生センターのいるチームとの試合が続いていて、今日も頑張ろうと思っていました。でも、相手には絈野さんもいたので、留学生に意識を取られていたところを最後は絈野さんにスピードでやられてしまいました」(福王)と、悔やんだ。
この結果により、桜花学園はベスト8で姿を消すことに。それと同時に、最上級生の福王も高校バスケットにピリオドを打つこととなった。
「同じ轍を踏んでほしくないというか、負けて悔しくて縮こまっている自分たちの姿は見せたくなかったですし、見てほしくないです。負け続けたことで後輩たちはこれからどん底から這い上がって行くと思います。後輩たちには花道だけを歩んでほしいし、昨年や今年の分まで笑顔で戦って、勝ってほしいです」
思い描いていた結果にはならなかったかもしれない。だが、毎年優勝候補に挙げられ、高校チームにおいて『女王』といわれるプレッシャーは計り知れない。特に福王の在籍した3年間は、井上眞一コーチが体調不良によりチームを離れるといった時期もあった。そうした中でも田中、黒川のダブルキャプテンを中心に3年生たちは前を向き歩を進めてきた。その過程は胸を張れるものであり、大切な時間だ。だからであろう、桜花学園での3年間について問われた福王は、真っ先に仲間や支えてくれた人たちへの感謝を口にした。
「後悔もたくさんあります。特にこの1年間はケガなどに悩まされて、すごくもがいてきました。でも、自分にとって桜花学園というのは感謝すべき存在で、保護者の方やコーチ、チームメート、応援してくれている方々のすべてに感謝の思いを伝えたいです」
桜花学園としてのプライドを持ちつつ、どんな状況でもひたむきに戦った3年生たち。その思いは、しっかりと後輩たちに引き継がれているはずだ。
取材・文=田島早苗