2022.02.28

オーストラリア戦敗退も司令塔の富樫は「少しずつステップアップできれば」と前向き

オーストラリア戦でチームハイの19得点を挙げた富樫[写真]=伊藤 大允
スポーツライター。前英字紙ジャパンタイムズスポーツ記者。Bリーグ、男女日本代表を主にカバーし、2006年世界選手権、20219ワールドカップ等国際大会、また米NCAAトーナメントも取材。他競技ではWBCやNFLスーパーボウル等の国際大会の取材経験もある。

 2月27日、「FIBAバスケットボールワールドカップ2023 アジア地区予選」Window2、日本対オーストラリアが沖縄アリーナ(沖縄県沖縄市)で行われ、日本は80-64で敗れた。

 その中で輝きを放ったのが富樫勇樹千葉ジェッツ)だった。28歳のポイントガードは3ポイントシュートを5本成功させるなど19得点、アシストも5本を挙げ、とりわけ後半は劣勢だった日本の中で奮闘した。

 前日のチャイニーズ・タイペイ戦では第4クォーターに「ようやく」ギアを上げて2本連続で3ポイントシュートを決めた富樫。この日は試合開始直後から立て続けにジャンプシュートを2本決めるなど、得点を取りにいく積極さを見せた。

 前半を42-40と2点のビハインドで折り返した日本はしかし、ディフェンスで修正を加えてきたオーストラリアの前に第3クォーター、相手に2ケタ以上の差をつけられた。その中で富樫が3ポイントシュート3本をヒット。このクォーターでの日本の全得点を挙げ、気を吐いた。

 その3ポイントシュートも、完全オープンなオープンからというよりも、スクリーンを使ってオフドリブルからすかさず速射する、日本では富樫以外からはなかなか見られない技巧的なものもいくつかあり、あらためて彼が特別な存在であることを示した。

 Bリーグでは4度、年間のベストファイブに選出され、2019年にはMVPに輝くなどトップ選手として活躍する富樫も、日本代表ではなかなか力量を十全に発揮できずにいたところがあった。昨夏の東京五輪に出場しながら、ポイントガードにもサイズを求めたフリオ・ラマス前代表ヘッドコーチの方針もあり控えに甘んじた。

 以前のインタビューでは、ラマス氏後のHCが自分のような、167センチという小さなポイントガードは必要ないという方針ならそれも仕方ない、と話していた。その後、トム・ホーバス氏が日本代表の指揮官に就任し同ポジションの選手には身長の高さを必ずしも求めないとし、富樫は再び、日の丸のユニフォームを纏うこととなった。

 しかし、今や代表でも上の年齢となり司令塔というポジション柄もあって、ホーバス氏の富樫へ求めるものは大きい。キャプテンに指名し、背中だけではなく声でもリーダーシップを発揮してチームを引っ張ってほしい、と期待を示した。

 オーストラリア戦での富樫は、それに応えるかのようなパフォーマンスだった。試合中、コート上で味方に大声で、半ば怒鳴るような形で、指示を出す姿もあった。

 自身もリーダーシップが課題であると認識する富樫だが、常にポジティブな姿勢でいるところは千葉でも知られている。それは今回の代表戦でも感じられた。

「ファイブアウト」など、Bリーグのチームが採用しない、難しいシステムを用いるホーバスHCのバスケットボールを、ここまで日本代表はなかなか体現できていない現状だ。オーストラリア戦後の富樫はしかし、「昨日(チャイニーズ・タイペイ戦)よりも今まで練習してきたものが出せたと思いますし、少しずつステップアップできれば」と、言葉はいつも通り淡々としてはいたものの、反省の弁を並べるというよりも前向きな「いつもの」姿勢を貫いた。

 代表ではいま一歩、本領を発揮できていなかったところがあった富樫だが、ついに「らしい」プレーで殻を破ったと言えるのかもしれない。

文=永塚和志

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