2023.08.27

バスケW杯初戦黒星の中で得た手応え…フィンランド戦に向け指揮官は「後半のバスケができれば」

ホーバスHCは敗戦の中で手応えを感じた [写真]=伊藤大允
バスケットボールキング編集部。これまで主に中学、高校、女子日本代表をカバーしてきた。また、どういうわけかあまり人が行かない土地での取材も多く、氷点下10度を下回るモンゴルを経験。Twitterのアカウントは @m_irie3

「FIBAバスケットボールワールドカップ2023」が開幕。初日の8月25日、世界ランキング36位の男子日本代表が同11位のドイツ代表と対戦した。

 大会前から日本のトム・ホーバスヘッドコーチは「とにかく初戦が大事。ドイツ戦に焦点を合わせた練習をしている」と初戦に焦点を合わせていた。一方で、大会前の強化試合の中で、試合開始からスタートダッシュがうまくできずリードを奪われ、それを追う展開になってしまうことにホーバスHCは不満を隠さなかった。

 特にゲームのリズムを作り出すポイントガードには、富樫勇樹千葉ジェッツ)と河村勇輝横浜ビー・コルセアーズ)のどちらを起用するのか。ホーバスHCが目指すアップテンポのバスケを引き出す役割を担うのが大切な役割だけに、慎重にならざるを得なかった。さらにはそれ以外のポジションではPGとの組み合わせも考慮、その試行錯誤を続けていた。

 大会直前、8月15日から有明アリーナで行われた「SoftBank CUP 2023(東京大会)」ではPGに河村、SGに富永啓生(ネブラスカ大学)、SFに吉井裕鷹アルバルク東京)の布陣で臨んだが、前日の公式会見で日本のトム・ホーバスヘッドコーチはスターターの入れ替えを示唆。そして迎えた初戦、ホーバスHCが選んだのは富樫勇樹原修太(千葉J)、馬場雄大渡邊雄太(フェニックス・サンズ)、ジョシュ・ホーキンソンサンロッカーズ渋谷)の5名。これまでにない先発5名は秘策と言えたかもしれない。特にディフェンスを買われて最終選考から本戦出場を勝ち取った原の起用はドイツのオフェンスをまず抑え、試合冒頭から日本のペースに持ち込みたかった。

 ティップオフ直後、イニシアティブを握るために渡邊が積極的に攻防に参加。立て続けにブロックショットを2本決めて、詰めかけた日本のファンのボルテージは一気に上がった。さらにはマンツーマンディフェンスをゾーンディフェンスを繰り出し、ドイツの攻撃を抑えにかかった。

 しかし、ドイツは慌てない。前日の会見で「ゲームの入りが大切」とエースのデニス・シュルダー(トロント・ラプターズ)が語っていたように、日本のある意味揺さぶりに対して動揺はなかった。この日のドイツは、シュルーダーの縦の突破をマークする日本の守りに対して、ワグナー兄弟(ともにオーランド・マジック)、ダニエル・タイス(インディアナ・ペイサーズ)らがゴール下から加点。第1クォーターを23ー11とリード。

 試合のメディア対応でキャプテンの富樫は「自分たちの作戦がハマっていた部分はあったと思います。しかし、ドイツは試合の中でアジャストしてきた」と語ったように、ドイツは日本の出方を見て対応。前半で43−31とリードを奪い、それを守って初戦に勝利した。

 残念ながら初戦を落とした日本だが、試合後の会見でホーバスHCは「僕は心配していないです」と表情は明るかった。富樫は「後半は相手のやりたいバスケットを止めることはできていたと思います」とコメント。後半のスコアは32-28とドイツを上回り、「今後、勝敗プラス点差も(順位に)大きく関わってくるので、前半から切り替えて後半は勝てたというのは大きいことだと思います」と力を込めた。

キャプテンの富樫も「自分たちのバスケができた」時間帯があったと振り返る [写真]=伊藤大允


 渡邊も「後半は、点差を離されそうなときにみんなが食いしばって、40分間戦い切った」と敗戦の中に手応えを見出した。「あとは自分がシュートを入れれば流れを変えられたと思います」と、第2戦での活躍を誓った。

エースの渡邊は「あとは自分がシュートを入れるだけ」と第2戦での活躍を誓った [写真]=伊藤大允


「みんなは同じ目標に向かって、同じ船に乗って、同じ場所に向かっています」とホーバスHCも敗戦の中でチームが崩れなかったと評価。「後半のバスケができれば。今日できたディフェンスからリバウンドのバスケができれば勝つと思います」と迷いはない。

 もちろん初戦のドイツ戦同様、第1クォーターでの戦い方がポイントであり、先発メンバーを替えることも予想できる。日本チームにとって今大会の大きな目標である「アジア1位になりパリオリンピック出場権獲得」のためにも、フィンランド戦での戦い方に注目だ。

文=入江美紀雄

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