2023.10.01
この春に大学を卒業し、いよいよBリーグでプロアスリートとして本格的なキャリアをスタートさせる“新卒”の選手たち。バスケットボールキングでは、そんな選手達のなかでも特に注目すべき5人の選手をピックアップして、その経歴やパーソナリティーを紹介する。4人目に紹介するのは、仙台89ERSの渡部琉だ。
文=小沼克年
渡部琉が中央大学に入学した当初、チームはまだ関東2部リーグにいた。しかし、1年目で1部昇格を果たすと、渡部は強豪校がひしめく舞台でもスコアラーとして存在感を放った。この時はまだ2年生。オフシーズンには秋田ノーザンハピネッツの特別指定選手としていち早くプロのコートに立ち、8試合の出場で13得点を記録した。
大学3年からは、名実ともに中央大の絶対的エースに君臨。大学界屈指の点取り屋は、この年のリーグ戦で得点王の称号を手にした。2021年12月からは広島ドラゴンフライズの特別指定選手として活動したが、3月の活動期間が終わるまでに6試合の出場に留まっている。それでも渡部は「試合に出ることがすべてではなかった」と広島での活動を振り返っており、日々の練習やオフコートでも多くのものを吸収したようだ。
身長193センチのサウスポーという希少な存在ながら、渡部はどこからでも点が取れる非凡なオフェンス能力を兼ね備える。そのスキルは正智深谷高校時代から突出していた。当時の恩師である成田靖コーチは言う。
「得点を取る能力、嗅覚はすごいものを持っていました。3ポイントにしてもドライブにしても、タフショットが彼の中ではストロングショットに変わってしまうこともありましたから」
現在プレーする仙台89ERSでは、4月22日のアルバルク東京戦でキャリアハイとなる12得点をマークした。しかしながら、プレータイムが0分や10分以下の試合もあり、まだチームの信頼を勝ち取るまでには至っていない印象だ。
無論、“これから”のルーキーではあるが、プロの世界ではより結果が求められる。渡部がその競争に勝ち続けるためのヒントになり得る言葉を、前述した成田コーチが語っていたので紹介したい。
「琉は自分を押し出そうとするタイプなので、高校時代は結構交代することが多かったです。 彼主体でバスケットをやっている時はいいんですけど、自分がチームのカラーに寄せようとするとあまりうまくいかない。大学でどう変化したかは分かりませんけど、プロではその部分を変えて頑張ってほしいなと思います」
かつての恩師からのエールが本人の元へ届き、何かのきっかけになってくれることを願う。
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