2023.10.06
中国・杭州で開催さ入れているアジア競技大会、女子準決勝の韓国戦は81−58で完勝。速い展開からパスがよく回り、韓国のディフェンスを崩して、速攻と3ポイントで得点を重ねる理想的な展開で勝利した。
日本の良さがいちばん出たのは第3クォーターだ。前半は40−33で日本がリードしていたものの、韓国に7点差まで粘られていた。だが、後半は自在なオフェンスで韓国を翻弄。その起点となっていたのがインサイドの髙田真希だ。韓国のエースである198センチのパク・ジスを封じたうえに、相手のディフェンスが引けば3ポイント、出てくればドライブの判断で自在に得点を重ねた。東京オリンピック時に身につけたこのスペースの活用こそが日本の肝であり、この判断ができることによって、サイズのないチームでも効率のいい攻めができるのである。
大会前に赤穂は「今回、インサイドの選手があまりいないので、自分は3番(SF)から4番(PF)に変更になります。ならば、自分の良さを生かして機動力を生かした4番になろうと思う」と話していたことが、大一番で出たのだ。試合後には、「自分の良さである走るプレーが出せたし、チームとしても準備してきたことを、出し惜しみしないでやれました」と笑顔を見せた。
問題は、この機動力を決勝の相手である中国に出せるかどうかだ。中国は平均身長185センチで日本の176センチより9センチも上回り、7月のアジアカップ時よりベストメンバーを組んでいる。2メートルを超えるインサイド2枚、WNBAでプレーする得点源にタイプの違うポイントガードが3人。今大会はアジアカップ時には不在だったシューター陣も加えている。
韓国戦を終えて髙田は「相手が自分の3ポイントを止めにくるのはわかっているので、それに対して自分はドライブができるのが強み。逆に、自分がこの役割をできないと日本はリズムに乗れないので、相手の出方によって、中と外のプレーの選択を判断できるかがカギになります。今日はその部分でしっかりやれました」と韓国戦を総括したが、中国戦ではまた役割が変わるという。
「中国戦ではオフェンスが大事なのはもちろんですが、中国戦での自分の役割はまずディフェンスです。2メートルの選手に簡単にボールを持たれないように守らないといけない」
現在の中国はインサイドを抑えても、アウトサイドのシュート力があり、タイプの違うガードも揃う。サイズがあって走れる厄介な存在へと成長している。ましてや、今回の日本はインサイドが手薄だ。中国戦に関しては赤穂も「オフェンスでは4番でも3番でもやることは変わらないけれど、問題はディフェンスでインサイドを抑えなければならないこと」と髙田同様にディフェンス面での課題をあげる。
「アジアカップの決勝では中国に敗れて悔しい思いをしました。その一方、大事な課題を私たちは手にしたと思っています。その課題とは決勝の残り5分で、私たちのやりたかったことができなかったこと。集中できずに相手にアジャストされ、戦う気持ちが薄れてしまったところが、最後のクロスゲームで差をつけられてしまった敗因です。その敗因をクリアにすることにフォーカスしてきたので、決勝で課題を克服して勝利を勝ち取りたい」
最後になるが、この大会を最後に代表からの引退を表明している韓国代表のキャプテン、キム・ダンビについて触れておきたい。日韓戦のあと、日本の選手からキム・ダンビの代表引退を労って花束が贈呈された。このシーンはテレビ中継に映し出され、話題になった。
日韓戦のあとに花束を渡すことは日本選手たちの希望だった。キム・ダンビは昨季のWKBLでレギュラーシーズンとプレーオフでMVPを受賞した韓国の顔と言える存在で、代表歴14年目のベテラン。日本では憧れの存在にしている選手も多い。
韓国とはアジアのライバルとして競い合うだけでなく、日韓の各クラブはオフシーズンに行き来をして手合わせをする間柄。今夏も両国で行われたカップ戦でも戦っている。また、過去には多くの指導者が韓国から日本に渡ってチーム作りをしてきた歴史があり、日本は多くのことを韓国から学んできた。こうした背景から、選手同士はとても交流が深いのである。
現在33歳のキム・ダンビが代表入りした2010年当時は、韓国が日本に連勝していた時代だった。しかしその後は日本が著しい成長を遂げ、アジアで5連覇を達成し、対韓国戦ではFIBA主催の大会において、2012年以降は負けなしで現在に至る。
キム・ダンビは日本からのサプライズに対して感謝の気持ちを述べたあと笑顔で記念写真に収まった。そして、日本代表と後輩たちにこのようなメッセージを贈った。
私は日本に勝っていた時代から代表でプレーをして、時が流れ、日本に逆転されることも味わった選手。後輩たちには、これからも日韓でお互いに競争してぶつかり合ってほしい。そうすれば、私たちの時代よりもはるかに良い成績を残せるでしょう。3決は北朝鮮に勝って笑顔で終わりたい」
文・写真=小永吉陽子
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