2024.01.15

韓国代表の顔として活躍したキム・ダンビ…日本代表からの花束に「感謝と感動」

韓国はもちろんのこと、日本でもファンが多いキム・ダンビ [写真]=田島早苗
フリーライター

 昨年10月に行われた「第19回アジア競技大会(2022/杭州)」。この大会では女子日本代表の全試合がテレビ放映されたが、準決勝の試合後には、普段は目にしないような光景が映し出された。

 準決勝で対戦した韓国の選手で、同大会をもって韓国代表を引退するキム・ダンビ女子日本代表の選手たちが花束を贈呈。記念の集合写真を撮るなど、彼女の輝かしいキャリアを祝ったのだ。

 キム・ダンビが韓国代表として国際大会でデビューを飾ったのは2010年の女子世界選手権(現・女子ワールドカップ)。稀代のシューターはそれから長きにわたりエースとして韓国を引っ張ってきた。華やかなプレーで魅了したポイントゲッターには日本も幾度となく苦しめられた。また、WKBLのチームとWリーグのチームは互いに行き来して練習試合を行うなど、かねてから交流があるため、日本でも仲の良い選手や憧れを抱いた選手は多い。

 もちろん、韓国国内での人気も高く、1月7日に行われたWKBL主催の『WKBLオールスターフェスティバル』にも出場。今回は、そのオールスターにて特別に時間を割いてもらい、ファンの存在や韓国代表、また日本代表などについて話を聞いた。

インタビュー・文=田島早苗

「言葉では言い表すことのできない感情が沸き上がってきました」

――今年のオールスターは所属するウリ銀行のホームコートでの開催です。
キム・ダンビ(以下KD)
 ウリ銀行のホームコートでできることをうれしく思っているし、オールスター選手として選ばれたことにも大変うれしく思っています。

――人気選手ですので毎年参加されていると思いますが、オールスターはどのような場だと感じていますか?
KD 
オールスターは、ファンの方への感謝の気持ちやオールスターに選び続けていただいているということに対するプレイヤーとしての誇りといったことを感じる場所だと思っています。特にシーズン中にも関わらずファンの方と交流ができるすごく貴重で大切な時間になるので、このときにしっかりとファンの方たちと交流をし、コミュニケーションを取ろうと意識しています。選手同士も、ナショナルチームのときは同僚、レギュラーシーズンではライバルですが、オールスターは仲間。一緒になって来ていただいていた方たちに楽しんでもらうようにしたいと考えています。

――昨年はWKBLの選手がWリーグのオールスターに、そして今年はWリーグの選手がWKBLのオールスターに参加しました。
KD 
とても意義のあることだと思います。韓国の若手選手たちが日本に行きましたが、若い選手たちが日本の文化やオールスターの雰囲気を知り、コミュニケーションを取ることは意味があるし、とても大事だと思います。今回で(オールスターの交流が)2回続いていますが、これが継続することを願っています。

――WKBLのオールスターを見て感じたのは、韓国の選手のダンスがうまいことです。
KD 
あー(笑)。私は違いますよ。私は何年もオールスターに選ばれて踊っているけれど、一向にうまくならないです。若い選手は多少踊れなくても若さで踊れるような雰囲気を出しているのがすごいですよね。

――話は変わりますが、アジア競技大会をもって韓国代表を引退。準決勝後には日本チームから花束が贈られましたが、改めてそのときの感想を聞かせてください。
KD 
とてもビックリしたのと同時に感謝し、とても感動しました。今まで異国の選手たちにそうやって評価をしてもらうことはなかったので驚きましたね。それまでは韓国代表として、ただただ一生懸命やってきたので、今は日本の方が上手だと思うのですが、その国の選手たちから花束をもらい、(引退を)祝ってもらったことは認めてもらった、応援してもらったと改めて感じる貴重な時間でした。日本の選手たちには本当に感謝しているし、言葉では言い表すことのできない感情が沸き上がってきました。どう言葉で表現すればいいのか分からないけれど、本当に感謝。いろんな方への感謝の気持ちが一気に込み上げてくるような出来事でした」

アジア競技大会準決勝の韓国戦後、花束が贈られた [写真]=小永吉陽子


――日本でダンビ選手に憧れている選手は多いです。
KD 
本当ですか⁉︎ それはもっと強調して言ってください(笑)。あと、髙田(真希/デンソーアイリス)選手に長くやっちゃダメだよって、代表チームは一緒に引退しようとメッセージも伝えてください(笑)。確か彼女とは同年代ですよね。あ、でもこれは冗談です。髙田選手は『コワイ』ですから(笑)」

印象に残っている日本代表は大神雄子と間宮佑圭

――髙田選手の名前が出ましたが、日本代表で印象に残っている選手はいますか?
KD 
大神雄子(現トヨタ自動車アンテロープスHC)さんですね。私が初めてナショナルチームに入ったとき、彼女にディフェンスでついたのですが、全然守れなくて怒られました。それと大神さんのワンドリからのジャンプショットは、実際に見ながら『こうやって打つんだ』と勉強になりました。ナショナルチームの初年度に大神さんのマークに付いたことはすごく印象深いです。

 センターでは間宮佑圭さん(現姓・大﨑)。センターとしてはすごく背が高いわけではないのですが、賢く頭のいいプレーヤーだった印象があります。あのサイズで自分にはない賢いプレーで戦ってきた姿は、私がそういったプレーができない分、本当に見習うことが多かったです」

――韓国代表として思い出に残っている試合があれば教えてください。
KD 
初めて代表に選ばれたときのチェコで行われた世界選手権でのブラジル戦ですね。その試合はクロスゲームとなり、大変な試合ではあったのですが、最後に逆転シュートで韓国が劇的に勝つことができました。自分自身のキャリアの中では一番思い出のある試合です」(※キム・ダンビは30分の出場で13得点2リバウンド1アシスト2スティールをマーク)

――10年以上韓国代表として戦ってきましたが、国の代表ということの意義をどのように感じていますか?
KD 
ナショナルチームの活動はトレーニングのときから試合に出るときまで、国を背負って出るというプライドや姿勢をしっかり持ってやらなくていけないものだと考えていました。ですから、それをひしひしと感じる時間が多かったです。韓国代表を引退した今でも、韓国代表として現在戦っている選手たちを見たときには、どうやったら韓国が世界で結果を出せるか、どうやったら勝っていけるのだろうかということは考えてしまいます。それほど、代表として国を背負って戦うことは、いろいろな人が様々なことを考えて努力をしなければいけないものではないかと思っています。

――最後になりますが、日本のファンへメッセージをお願いします。
KD 
日本に私のファンがいることは今聞いて初めて知りました。まさかファンの方がいるとは思っていなかったのでうれしいです。残りどれくらいのシーズンを選手として活動するのか分からないですが、その間、応援してくださる方々に恥ずかしくないようなプレーを最後までしたいと思います。それと、今は日本のバスケットが(韓国より)上手なので、少しでも習っていくこともそうですし、そのためにこういった交流がずっと続いていくことを望んでいます。また、少しでも韓国のバスケットのいいところを伝えていくことができるように、これからも頑張っていろいろな方々が喜んでもらえるようなプレーを心がけていきたいです。

インタビューに応じてくれたキム・ダンビ [写真]=田島早苗


取材協力:WKBLWリーグ、株式会社ウィル/通訳:鄭竜基

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