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5月23日に開幕した「女子U25世界車いすバスケットボール選手権大会」(タイ)。大会2日目の24日、日本は予選プール第2戦で南アフリカと対戦した。第1クォーターで20-4と大量リードを奪うと、第2クォーター以降も攻防にわたって主導権を握り続けた日本は、81-8で圧勝。今大会初の白星をあげた。
チームの修正能力の高さと、格の違いを見せつけた一戦となった――。
日本は、前日の予選プール第1戦で前回覇者のイギリスに30―47で敗れた。試合直後は悔しさをにじませていた選手が多かった。だが、すでにA代表にも選ばれ国際大会の経験を積んでいる柳本あまねや財満いずみなどが積極的に声をかけ、夜の公式練習の際には全員がしっかりと気持ちを切り替えていた。
南アフリカ戦で最も危惧されたのは、日本らしさを見失うことにあった。実力差がある相手との対戦は、案外難しい。相手に合わせてしまってリズムを崩したり、大味な試合となりプレーに精細さが欠けることも少なくないからだ。チームの士気を高め、最後まで集中して戦うことはそう簡単なことではない。
しかし、この試合ではそうした緩みは一度も見られなかった。第2、第4クォーターでは、南アフリカに一度もネットを揺らさせなかったことが、その証の一つと言える。40分間、日本は格の違いを見せ続けた。
また、チームの修正能力の高さもうかがわせた。前日のイギリス戦では成功率が28%だったフィールドゴールは、この試合では49.4%を誇った。対戦相手が違うとはいえ、前日のイギリスが31%だったこと、そして南アフリカ戦の日本と同様に70-16とトルコに大勝した優勝候補の筆頭であるアメリカが50%だったことを考えれば、49.4%が日本の攻撃力の高さを示していると言っても過言ではない。
そして、その数字の背景には修正があった。前日のイギリス戦での日本の攻撃は、両サイドの2on2からミドルシュートを打つというアウトサイド一辺倒の攻撃シーンがほとんどだった。だが、この日の南アフリカ戦では各選手が積極的に1on1で勝負し、インサイドにダイブするシーンが数多く見られた。攻撃の幅が広がり、逆にアウトサイドからのシュートも余裕を持って打つことができたのだ。
その修正によって、前日とは一変したプレーを見せたのが碓井琴音だ。「中でも外でも勝負できるのが持ち味」である碓井だが、イギリス戦ではミドルシュートばかりとなり、ことごとくリングに嫌われ、FG成功率はわずか15%にとどまった。一方、積極的にインサイド勝負にいった南アフリカ戦では61%の高確率でシュートを決め、チーム最多の23得点をたたき出した。
この碓井を筆頭に、日本は9人が得点し、そのうち5人が2ケタにのぼった。そのうちの1人が立岡ほたるだ。立岡は持ち点1.5のローポインターで、守備を最大の持ち味としている。この試合でも随所にその持ち味が光っていたが、攻撃面でも10得点とチームに貢献。前日は持ち点1.0の財満がチーム最多得点をマークしており、ローポインターにも得点力のある選手がそろっているのが日本の強みとなっている。
また、「ハイポインターとして頑張らなくてはいけない」と碓井が語るように、こうしたローポインターの活躍がハイポインターへの刺激ともなっており、チーム全体の力を押し上げている要因となっている。
一方、この試合でも大きな課題として浮上したのが、ターンオーバーの多さだ。前日の16よりも少ないとはいえ12と2ケタを数えた。特にカットインする選手へのアシストが合わないシーンが多いように見受けられる。こうしたミスを減らすことで、さらに日本らしさが発揮されるはずだ。
山﨑沢香ヘッドコーチはこう語る。
「この試合はミスがあっても、そこでリズムが崩れることなく、ディフェンスで立て直すことができたことは良かったと思います。しかし、ミスをもっと減らすことができれば、当然得点につながる。今後はさらに精度の高いバスケをしていきたいと思います」
大会3日目の25日には予選プール最終戦で地元タイと対戦する。26日から始まるトーナメントの組み合わせに関わる大事な一戦。さらにその後に控える厳しい戦いに向かううえで勢いをつけるためにも、重要な試合だ。勝敗はもちろん、どれだけ高い精度で日本のバスケをすることができるのかにも注目したい。
文・写真=斎藤寿子
試合の模様は「女子U25世界選手権公式HP」でライブ配信されています。
https://www.youtube.com/user/iwbforg/featured