2019.12.31
今オフシーズン、制限付きフリーエージェントとしてブルックリン・ネッツと4年1億1700万ドル(約126億円)のマックス契約を結んだ後、ゴールデンステイト・ウォリアーズへサイン&トレードで移籍したディアンジェロ・ラッセル。ウォリアーズは現ネッツのケビン・デュラントが退団の意思を固めたことで、見返りにラッセルを獲得する形となり、クレイ・トンプソンの左ひざ前十字じん帯断裂によるシーズン全休が予想される中、23歳の昨季オールスター選手に期待と注目が集まった。
だが新シーズンが始まると、ウォリアーズは新体制によるケミストリーの不完全さや主力選手たちのケガに苦しむ。チームリーダーとも言えるドレイモンド・グリーンは左手人差し指ねん挫で数試合を欠場すると、ステフィン・カリーに至っては10月終盤に左手を骨折し、復帰には少なくとも3カ月は必要とされている。そしてラッセルも右手親指の負傷。この5年間の王朝を支え続けたショーン・リビングストンが引退し、アンドレ・イグダーラもサラリー調整でメンフィス・グリズリーズへ放出されたため、大ベテランたちのサポートも受けられず、残された若手たちだけで奮起するしかなかった。
12月12日(現地時間11日)の時点で戦績5勝20敗とウェスタン・カンファレンス最下位。輝かしい5年間から一転してここまで成績を落とすことを果たして誰が予想できただろうか。そして開幕前から兼ねて噂されていたラッセルのトレードが、ここへきて再浮上している。チームとしてはチームが停滞してしまった以上、今後を視野に入れた政策の見直しが必要だろうし、今季13試合で平均22.0得点3.7リバウンド6.2アシストを記録して、キャリアハイ52得点を叩き出したラッセルのマーケットにおける価値は高いはずだ。だがこれが多くのNBA選手たちがそろえて口にする“ビジネス”だとしても、シビアな世界であることに変わりはない。
しかしラッセル本人は、「シンプルなこと。気にしていない」と、『The Athletic』のアンソニー・スレーター記者のインタビューに毅然として応じ、「いつこのチームを去るかはわからないから、できるだけ早く多くのことを、ここにいる人たちから学んでいる。それが今僕がしていることだよ」と現状をつづった。
また、「この件に関してはコントロールできないからね。(ゼネラルマネージャーの)ボブ・マイヤーズのように、自らトレードで見返りに指名権を手に入れようといったコントロールはできないんだ。それは彼の仕事だ」ともコメント。「コントロールもできないし口出しもできない。特に僕がトレードの一部になっていることについては。だからこの件に心配してエナジーを無駄にはしないよ」と最後は語り、周囲の雑音に捕らわれないプロフェッショナルとしての意思を示した。
もしウォリアーズが負傷者に苦しまず成績を残せていたら、ラッセルは将来の重要な戦力として、トレードの噂はここまで大きなものにはならなかったかもしれない。だが状況が当初予定していたものより大きく異なり、措置が必要となったとすれば、見返りには犠牲が必ず伴う。新天地1年目で晴れてマックス契約を手にしたにもかかわらず、いつ自分がチームから放出されるかわからないこの状況は、ラッセル本人が一番複雑なはずだ。それでもノイズに惑わされず前を向き続けるその姿からは、ポテンシャルのみならずメンタリティも素晴らしいことが垣間見えることだろう。
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