2020.02.04

亡きコービーへ捧げる、男子プロゴルフのPGAツアーに見たレジェンド追悼の粋な計らい

選手たちがコービーのジャージを着用し、最終日は名物16番ホールもコービー仕様に[写真]=Getty Images

 1月27日(現地時間26日)、不慮の事故により命を落としたコービー・ブライアント(元ロサンゼルス・レイカーズ)の訃報は、世界を悲しみに包んだ。NBAの各試合では、24秒ショットクロックバイオレーションまたは8秒バイオレーションでコービーに哀悼の意を表し、ステイプルズ・センターには献花場が設置され、多くのファンが偉大なレジェンドに別れを告げた。

 生きている中で、物事へ取り組み、成長する姿勢。努力を止めず、高みを目指す哲学。バスケットの枠を超越するマンバ・メンタリティーの体現者が1人の人間として生前に与えた影響は計り知れず、その背中には羨望の眼差しが向けられると同時に、真のロールモデルとして彼のスピリットは人々の心の中に宿っている。

 コービー追悼は、バスケットボール以外の競技でも行われている。例えば、NFLの頂上決戦である第53回スーパーボウルの試合開始前にもスタジアムでセレモニーを実施。また、サッカーブラジル代表のネイマール(パリ・サンジェルマン)は、ゴールパフォーマンスで左右の手を使い「24」を表現していた。無論、世界各国の男子トップゴルファーが集うPGAツアーでも、それは例外ではない。

“BRYANT”の文字が入った24番のシャツを着用するネイマール[写真]=Getty Images


スーパーボウルの試合前に追悼セレモニーが行われた[写真]=Getty Images

 1月28日から2月2日にかけてアリゾナ州で開催されたウェイストマネジメント フェニックスオープンは、PGAツアー屈指の観客動員数を誇る一大大会である。最終日を首位で迎えるものの、プレーオフで惜敗したトニー・フィナウは、コービーに魅了されたレイカーネイションの一員。訃報の翌日、彼はInstagram上に以下のコメントを残している。

「この悲劇のニュースに僕の心は深く傷つき、悲しみに暮れています。言葉が見つかりません。彼の家族や友人の皆さまには、深くお悔やみ申し上げます。僕が人生を通してあなたから学んだ喜びとインスピレーション、そして勝利に貪欲な姿勢は、これからも忘れません。僕はあなたを見て、レイカーズのファンになりました。マンバ・メンタリティーがどういうものなのかを世界に示してくれたことに心から感謝しています。皆がマンバがいないことを寂しく思うでしょう。レジェンドよ、安らかに」

 そのトニーは連日、ブラックマンバに敬意を表して、彼がデビューから10シーズン着用した背番号「8」のレイカーズジャージを纏い、舞台となるTPCスコッツデールの名物、16番ホールに登場。トニーが16番に到着するとたびたびコービーコールが巻き起こり、難易度の高いロングパットを沈めた際にはシュートフォームを真似するなど、大会を通じて観衆の沸かせた。また、トニーはウェアのみならず、ロイヤルパープルとレイカーゴールドのレイカーズカラーで特注したゴルフシューズでラウンドを回り、シューズの内側にはコービーの背番号を組み合わせたマンバ・デイを示す「8.24」のナンバリングが施されていた。

 コービーにトリビュートを捧げたのは、トニーだけではない。松山英樹と同組でプレーしたジャスティン・トーマスは、ローワー・メリオン高校時代にコービーが身につけていた「33」のジャージを着用。また、マックス・ホマやマシュー・ウルフらもコービーのレイカーズジャージを着てプレーした。

 また、最終日はフェニックスの16番も、コービー仕様となった。パー3のショートホール、ティーの前に立ったゴルファーたちは、見慣れぬカップの位置に一瞬躊躇したかもしれない。この日はコービーの背番号にちなみ、カップの位置を24ヤード奥、グリーンのエッジ左から8ヤードの場所に設置。そして、カップに立てられるピンフラッグにも表裏に「8」と「24」の数字があしらわれ、そのフラッグは午前8時24分にピンへと差し込まれた。早朝、スタッフの作業を見守るファンからも「コービー」の声が飛び交い、一連の作業を記録した動画には、思わず涙腺が緩んでしまう。

https://www.instagram.com/p/B8EuP-iFKt4/

 実に紳士のスポーツらしい、粋な計らい。なお、大会はウェブ・シンプソンが優勝。2018年のザ・プレーヤーズ選手権以来、ツアー通算6勝目の勝利となった。

文=Meiji

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