2020.04.10

ケガ人続出の中、ビールが大エースとしてウィザーズをけん引/2019-20NBA通信簿チーム編⑮

シーズンを通してスターターとしてプレーを続けたビール(左)と八村(右)[写真]=Getty Images
フリーライター

新型コロナウイルスの感染拡大を防止すべく、世界最高峰のエンターテインメント、NBAは3月13日(現地時間12日、日付は以下同)より2019-20レギュラーシーズンを中断することを余儀なくされた。シーズン再開は早くても6月中旬から下旬にかけてと現地メディアが報じている中、65試合前後を消化した各チームならびにその主要選手たちを振り返っていきたい。
※データは日本時間3月12日終了時点、%=パーセント、評価は上から順にS、A、B、C、D、Eの6段階

2019-20シーズンNBA通信簿チーム編⑮ワシントン・ウィザーズ

イースタン・カンファレンス(サウスイースト・ディビジョン)
総合評価:B

■ここまでの戦績
今季戦績:24勝40敗(勝率37.5%/イースト9位)
ホーム戦績:16勝16敗(勝率50.0%)
アウェー戦績:8勝24敗(勝率25.0%)

■主要チームスタッツ(カッコ内はリーグ順位)
平均得点:115.6(6位)
平均失点:119.7(30位)
平均リバウンド:41.7本(29位)
平均アシスト:25.3本(12位)
平均スティール:8.1本(11位)
平均ブロック:4.3本(24位)
オフェンシブ・レーティング:111.1(13位)
ディフェンシブ・レーティング:115.0(30位)

今季ブレイクしたベルターンス。3ポイントのほか、ハンドリングや矢のような鋭いパスでも魅せた[写真]=Getty Images

■主要スタッツリーダー
平均出場時間:ブラッドリー・ビール(36.0分)
平均得点:ブラッドリー・ビール(30.5得点)
平均リバウンド:トーマス・ブライアント(6.8本)
平均アシスト:ブラッドリー・ビール(6.1本)
平均スティール:トロイ・ブラウンJr.他1人(1.2本)
平均ブロック:イアン・マヒンミ(1.2本)

■主な開幕後の選手またはコーチの動き
加入:シャバズ・ネイピアー、ジェローム・ロビンソン、アンジェス・パセチニクス(2way→本契約)
退団:アイザイア・トーマス、ジョーダン・マクレイ、クリス・チオッザ、CJ・マイルズ

インサイドにおけるパワフルなプレーに加え、3ポイントやパサーとしても活躍したブライアント[写真]=Getty Images

ウォール不在に加えてケガ人続出の中、ビールを中心に健闘を見せる

 ジョン・ウォールというオールスター常連かつリーグ屈指のポイントガード(PG)不在で迎えた今季。ウィザーズはブラッドリー・ビールの周囲にトーマス・ブライアント八村塁イザック・ボンガという若手にイシュ・スミスというベテランPGというスターターで臨んだ。

 開幕2戦目でオクラホマシティ・サンダーを下して1勝1敗としたものの、ビールの存在が突出していることは否めず、チームは次第に黒星先行へ。オフェンスでリーグ屈指の破壊力を持っていてもディフェンスが難となってそれ以上の失点を喫してしまい、シーズンを通して大きな改善には至らず。

 ウォール不在によって、スコアリングとプレーメイカーを兼任しなければならない状況となったビ―ルにはダブルチームあるいはトリプルチームという厳しいマークがつき、時にはボックス&ワンという珍しい戦術で徹底マークを受けることもあった。

 スコット・ブルックスHC(ヘッドコーチ)、トミー・シェパードGM(ゼネラルマネジャー)は開幕から将来に向けての選手育成にフォーカスしていた中、チームは昨年12月あたりからケガ人続出。ブライアント、モリッツ・ヴァグナー、ダービス・ベルターンス、八村、ビールといった主力が代わる代わるケガのため戦線離脱となり、ベストメンバーを組むことがほとんどできなかったことは大きな誤算だったと言っていい。

12月に入ってから、ウィザーズはフロントコートのケガ人続出に悩まされた[写真]=Getty Images

 NBAの指揮官として10年以上の経験を持つブルックスHCも「これほどケガ人が続出したシーズンはなかった」と明かすほどの戦力ダウンに陥った。特にフロントコートのケガ人は深刻で、12月中旬以降にCJ・マイルズ、2way契約のクリス・チオッザ(現ブルックリン・ネッツ)を解雇すると、アンジェス・パセチニクスと2way契約(その後に本契約を締結)、八村とゴンザガ大学でチームメートだったジョナサン・ウィリアムズと10日間契約(その後に2way契約へ変更)を結び、バックコートにはディフェンダーのゲイリー・ペイトン2世を加える補強を断行。

 その甲斐あってか、年末年始にはホームでマイアミ・ヒート、デンバー・ナゲッツ、ボストン・セルティックスという格上を撃破するサプライズ。スミスが得意のミドルレンジで攻めたて、トロイ・ブラウンJr.やギャリソン・マシューズ、ジョーダン・マクレイ(現デトロイト・ピストンズ)らが躍動。インサイドで奮闘したベテランビッグマン、イアン・マヒンミの活躍も光っていた。

 年明け以降から徐々に主力がラインナップに戻り、2月に入って八村が復帰したことでベストメンバーとなったウィザーズは、オールスターブレイク前の7試合で5勝を挙げてイースト8位のオーランド・マジックに3.0ゲーム差まで肉薄。

 これにはエースのビールも「俺たちは今、いい位置にいる。オールスターブレイク後にリーグを騒がせることができるだろうね」と話し、意気揚々と後半戦を迎えたのだが、成績で下回るクリーブランド・キャバリアーズ、シカゴ・ブルズに連敗を喫し、ミルウォーキー・バックス相手に好勝負を演じるも惜敗して3連敗。ブルックリン・ネッツ戦では途中加入のジェローム・ロビンソンの決勝弾で辛勝したものの、プレーオフへの道は閉ざされたと言っても過言ではない。

 その後もビールを中心に八村やブライアント、途中加入のシャバズ・ネイピアーらの活躍で勝利を飾るも、3月に入ってからはベテランのマヒンミを出場させず、ビールと若手で戦い、11日にニューヨーク・ニックスを下した後にシーズン中断を迎えた。

ビールは21試合連続25得点以上をマークするなど大エースとして高得点を連発した[写真]=Getty Images

来季巻き返しを図るウィザーズ、八村がさらにアグレッシブになれるか注目

 現時点でイースト8位のオーランド・マジック(30勝35敗)とのゲーム差は5.5。今後シーズンが再開されたとしても、ウィザーズが2年ぶりにプレーオフへ返り咲く可能性は皆無に等しい。

 その中で、ウィザーズがやるべきことは来季完全復活することが期待されるウォール、エースのビールの周囲に誰を配置してプレーオフへ進出するかどうか。ケガのため欠場していた期間を除き、ビールと共にスターターの座を死守した八村、シャープシューターとして飛躍的な成長を遂げたベルターンス、インサイドで存在感を発揮したブライアントは当確だろう。

 チームメートたちへパスをさばくことができるスミス、ウイングのブラウンJr.とロビンソンは来季も契約下にあるため、ロースターに残すことが期待できる。制限なしフリーエージェントとなるベルターンスはチームと相思相愛のため再契約が見込めるのだが、マヒンミとネイピアーについては微妙か。

 ウォール、ビールと仲がいいネイピアーが来季ベンチにいることは頼もしいのだが、スミスほどゲームメイクを得意としておらず、かといってウォールほどのオフェンス力はない。スミスがハムストリングを痛めて欠場している間、ブラウンJr.やロビンソンにボールハンドラーの役割を与えていたことを考えれば、ネイピアーと再契約を結ばない可能性もあるだろう。

 ウィザーズは来季に向けて決断を下すことが多いだろうが、将来性を秘めているチームなのは事実。オールスターブレイク中に「僕のポイントとしては『どれだけアグレッシブになれるか』というのがこれからの伸びしろにつながってくる」と話した八村は間違いなく将来のチーム構想に入っており、今後も成長を続けてほしいところだ。

八村がスコアラーとしてひと皮むければ相手チームにとって脅威になると期待したい[写真]=Getty Images

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