2020.07.23

グリズリーズをプレーオフ出場圏内へ導いた驚異の新人モラント/2019-20NBA通信簿選手編23

得点とアシストでグリズリーズをリードするモラント[写真]=Getty Images
フリーライター

新型コロナウイルスの感染拡大を防止すべく、世界最高峰のエンターテインメント、NBAは3月13日(現地時間12日、日付は以下同)より2019-20レギュラーシーズンを中断することを余儀なくされた。6月に入り、7月31日からフロリダ州オーランドで22チームが参戦し、シーズンを再開することが決まった中、65試合前後を消化した各チームならびにその主要選手たちを振り返っていきたい。
※データは日本時間3月12日終了時点、%=パーセント、評価は上から順にS、A、B、C、D、Eの6段階

2019-20シーズンNBA通信簿選手編23 ジャ・モラント

所属:メンフィス・グリズリーズ(ウェスタン・カンファレンス8位)
総合評価:A

■プロフィール
生年月日(年齢):1999年8月10日生まれ(20歳)
ポジション:ガード
身長/体重:190センチ/79キロ
NBAキャリア:1年目
  
<今季ここまでの功績>
ライジングスターズチャレンジ選出(初)
月間最優秀新人賞:3度(10-11、12、1月)

<2019-20シーズン 個人成績>
平均出場時間:30.0分
平均得点:17.6得点
平均リバウンド:3.5本
平均アシスト:6.9本(リーグ13位)
平均スティール:0.9本
平均ブロック:0.3本
フィールドゴール成功率:49.1%
3ポイント成功率:36.7%
フリースロー成功率:77.0%

■主要項目におけるシーズンハイ(相手チーム名は略称)
出場時間:36分53秒(20年1月15日/対ロケッツ)★
得点:30得点(19年10月28日/対ネッツ)★
リバウンド:10本(20年2月10日/対ウィザーズ)★
アシスト:14本(2度)★(キャリアハイタイ)
スティール:5本(19年11月24日/対レイカーズ)★
ブロック:2本(19年12月22日/対キングス)★
フィ―ルドゴール成功数:13本(19年10月28日/対ネッツ)★
3ポイント成功数:4本(2度)★(キャリアハイタイ)
フリースロー成功数:8本(19年11月7日/対ウルブズ)★
★=キャリアハイ

アグレッシブなリングアタックから繰り出すモラントのダンクは迫力満点[写真]=Getty Images

「チームメートたちと一緒に、大勢の観客の前でメンフィスのためにプレーできることがうれしいし、感謝している」と話す新人王最有力候補

 昨季途中から終了後にかけて、マイク・コンリー(現ユタ・ジャズ)、マルク・ガソル(現トロント・ラプターズ)というチームを支えてきたベテラン陣がチームを去り、グリズリーズは昨年のドラフト全体2位指名の細身のポイントガード、モラントにチームを託すこととなった。

 190センチ79キロのモラントは爆発的な身体能力を持ち、変幻自在のボールハンドリングとクリエイティビティあふれるムーブを繰り出し、コート上で異彩を放つルーキー。

 とはいえ、モラントはわずか20歳。ロースターにオールスター級の実力者がおらず、若手や中堅で構成されるグリズリーズが強豪ぞろいのウェストで勝ち星を重ねていくには時期尚早で、プレーオフ進出争いへ参戦するには数年かかるだろうというのが前評判だった。

 ところが、モラント率いるグリズリーズは、11月末までは黒星続きだったものの、12月に入って台頭。新たに指揮官として招へいされたテイラー・ジェンキンズHC(ヘッドコーチ)が掲げるボールムーブの多用と3ポイントを着実に実行し、8勝8敗で12月を終えると、1月にはユタ・ジャズと並んでウェストトップタイの11勝4敗の好成績。

 グリズリーズはこの月にフランチャイズ史上最高となる月間平均118.9得点(リーグ3位)をマークし、28.6アシスト、ペイントエリアで平均60.3得点という高数字をたたき出し、ジェンキンズHCは月間最優秀ヘッドコーチ賞に輝いている。

ジェンキンズHC(左)とモラント(右)[写真]=Getty Images

 そのグリズリーズ躍進を支えたのがモラントだった。コート上を縦横無尽に駆け回り、アクロバティックなプレーの数々で観衆を沸かせた男は、1月まで3か月連続で月間最優秀新人賞に輝き、グリズリーズを予想外の高順位へと導く殊勲者となった。

 1月15日のヒューストン・ロケッツ戦では、フィールドゴール11投中10本(うち3ポイントは4投中3本)、フリースロー3本全て決め切り、チームトップの26得点に5リバウンド8アシスト1スティール1ブロックをマークして勝利に大きく貢献。

 勝敗がかかった第4クォーターでも、ジャンパーに3ポイントプレー、3ポイントを放り込んだ。「僕は毎日練習してる。だから自分のショットには自信を持ってるんだ。自分のことを疑問視する人たちは、僕がシュートを決めることができないと言ってたけど、彼らが間違っているんだと証明している。スクリーンの時に僕から目を離したら、シュートを決めて相手に注意させるだけさ」と自信満々。

「僕はすごく楽しんでる。全てのことを楽しんでいるんだ。チームメートたちと一緒に、大勢の観客の前でメンフィスのためにプレーできることがうれしいし、感謝している」。

 ロケッツ戦後にそう述べたルーキーは、2月以降もチームを8勝8敗へと導き、ウェスト8位の32勝33敗という好成績へと引き上げてシーズン中断を迎えた。今季のルーキーでもトップクラスの個人成績に加え、チームをプレーオフ出場圏内に導いていることから、今季の新人王はこの男で決まりだろう。

創造性豊かなボールハンドリングもモラントの強みの1つ[写真]=Yasushi KOBAYASHI

プレーオフ出場と史上3人目の歴史的快挙をかけて臨む第二幕
「これまでと同様に、チーム一丸となって勝利を目指すことだけを考えてる」

 新型コロナウイルスの影響により、長い自粛期間となったものの、モラントは自身のハイライトを100回以上見ては研究し、肉体改造にも取り組み、約5.4キロの増量に成功するなど、バスケットボールのために多くの時間を費やしてきた。

「身体が強くなったことで、激しいコンタクトにも耐えられるようになった。身体を活かしたプレーの幅も広がったし、いろんなスクリーンを回避できるようにもなったんだ。これはオーランドで再開されるシーズンへ向けて、僕が最優先していた課題だった。僕のプレースタイルを活かすためには、身体の強さが最も重要だから」。

 第二幕へ向けて7月上旬に行われたインタビューでそう語ったモラント。グリズリーズはポートランド・トレイルブレイザーズ、ニューオーリンズ・ペリカンズ、サクラメント・キングスがそれぞれ3.5ゲーム差で追う中、プレーオフ進出をかけてシーディングゲーム(順位決定戦)に挑む。

モラントがアウトサイドシュートに磨きをかければさらなる脅威に[写真]=Getty Images

「今シーズンを通して『僕らのことを見下す人たちを見返してやりたい』という気持ちでプレーしてきた。だから再開後もそれを続けるだけ。これまでと同様に、チーム一丸となって勝利を目指すことだけを考えてる。シーズン再開に向けてモチベーションが高まってるんだ」とモラントも第二幕へ向けて気合十分。

 シーディングゲーム終了時点で、8位チームと9位チームが4.0ゲーム差以内であれば、プレーイン・トーナメントが開催され、8位チームが1勝、あるいは9位チームが2戦先勝すればプレーオフ最後のスポットに入ることとなる。

 『Elias Sports Bureau』によると、もしモラント率いるグリズリーズがプレーオフへ進むことができれば、エルジン・ベイラー(元ロサンゼルス・レイカーズ)、マイケル・ジョーダン(元シカゴ・ブルズほか)に次いで史上3人目の快挙(得点とアシストでチームトップの数字を残してプレーオフへと導いたルーキー)を達成することになる。

 史上3人目の快挙達成、そしてグリズリーズにとって3年ぶりのプレーオフ返り咲きは、手の届くところまで来ている。そのカギを握るのは、もちろんモラントだ。

今季最大のサプライズとなったグリズリーズの主役のプレーは第二幕でも必見だ[写真]=Getty Images

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