2020.08.14
新型コロナウイルスの感染拡大を防止すべく、世界最高峰のエンターテインメント、NBAは3月13日(現地時間12日、日付は以下同)より2019-20レギュラーシーズンを中断することを余儀なくされた。6月に入り、7月31日からフロリダ州オーランドで22チームが参戦し、シーズンを再開することが決まった中、65試合前後を消化した各チームならびにその主要選手たちを振り返っていきたい。
※データは日本時間3月12日終了時点、%=パーセント、評価は上から順にS、A、B、C、D、Eの6段階
所属:ポートランド・トレイルブレイザーズ(ウェスタン・カンファレンス9位)
総合評価:A
■プロフィール
生年月日(年齢):1990年7月15日生まれ(30歳)
ポジション:ガード
身長/体重:188センチ/88キロ
NBAキャリア:8年目
<今季ここまでの功績>
オールスター選出(3年連続5度目/今年はケガのため欠場)
週間最優秀選手:2度
<2019-20シーズン 個人成績>
平均出場時間:36.9分(リーグ1位)
平均得点:28.9得点(リーグ5位)
平均リバウンド:4.3本
平均アシスト:7.8本(リーグ6位)
平均スティール:1.0本
平均ブロック:0.4本
フィールドゴール成功率:45.7%
3ポイント成功率:39.4%
フリースロー成功率:88.8%(リーグ11位)
■主要項目におけるシーズンハイ(相手チーム名は略称)
出場時間:45分08秒(20年1月21日/対ウォリアーズ)
得点:61得点(同上)★
リバウンド:10本(3度)
アシスト:13本(3度)
スティール:3本(4度)
ブロック:2本(5度)
フィ―ルドゴール成功数:19本(19年11月9日/対ネッツ)★
3ポイント成功数:11本(20年1月21日/対ウォリアーズ)★
フリースロー成功数:16本(同上)
★=キャリアハイ
昨季、リラード率いるブレイザーズは2000年以来初となるカンファレンス・ファイナル進出を果たし、自身は7月1日に2021-22シーズン以降で4年1億9,600万ドル(当時のレートで約211億6,800万円)というスーパーマックス契約を締結。
「俺はこれまで、数多くの功績を残してきた。高校(オークランド高校)、大学(ウェーバー・ステイト大学)、そしてもちろんNBAでもね。でもチームとして掲げる究極のゴールは勝つこと。チャンピオンシップを勝ち取ることなんだ。俺個人としては、MVPになりたいね。簡単な質問さ。俺はまだ、チャンピオンとMVPになったことがないんだ。だから俺はそのためにプレーしているし、そのことが俺を向上させ続けているのさ」。
昨年7月に『The Athletic』へ現状を明かしたリラードは、キャリア8年目となった今季も開幕からエンジン全開。今季最初の2試合でいずれも30得点以上をマークし、ブレイザーズの選手としては1987-88シーズンのキキ・バンダウェイ(元ブレイザーズほか)以来初となる快挙を達成。
10月26日のサクラメント・キングス戦では第4クォーターだけで13得点(計35得点)と早速“デイム・タイム”を開演し、ブレイザーズを今季初勝利へと導いた。
今季のリラードはスコアリングに磨きをかけており、11月9日のブルックリン・ネッツ戦で60得点、今年1月21日のゴールデンステイト・ウォリアーズ戦ではいずれもキャリアハイとなる11本の3ポイント成功と61得点を奪取。
平均得点でもキャリアベストを記録するリラードを支えているのは“ロゴ・スリー”とも称されるディープスリー。「ハーフコートを越えた時点からシュートレンジになるのでは?」と恐れられる男は、今季も自慢のリーサルウェポンを繰り出し、対戦相手の選手やコーチ陣を唖然とさせた。
リラードだけでなく、ジェームズ・ハーデン(ヒューストン・ロケッツ)やステフィン・カリー(ウォリアーズ)、トレイ・ヤング(アトランタ・ホークス)といった選手たちがこのディープスリーを決めているのだが、リラードは「これは決して偶然なんかじゃない」と断言し、「彼らは時間を費やして(ディープスリーを)こなしている。そうすることで心地よくなり、自信を持つようになったんだ」と『The Athletic』へ発言。
そして自身は一昨年の夏にトレーナーらと一緒に「俺たちは実にいろんな方法でディープスリーを練習してきた。(ボールを)バウンドさせずにシュート、ジャンプせずにシュート。流れのない中でシュート、しゃがんだ状態から起き上がってシュート。俺はそうやって心地よくない態勢からも放ってきた。その中で、正確なショットを放てるようにやってきたんだ」と明かした。
その甲斐あって、ディフェンダーは3ポイントエリア付近にいるリラードを注視せざるを得ず、ショルダーフェイクやヘッドフェイクを使ってペイントアタックを繰り出し、今季はリング下で60.7%という高いショット成功率を記録。今季キャリア最高のアシスト数を記録している要因の1つと言っていいだろう。
1月中旬からは8試合連続で34得点以上を奪う驚異的なスコアリングショーを見せ、そのうち3試合で50得点ゲームを達成。その間、チームも5勝3敗と勝ち越し、リーグ最高級のスコアリングガードであることを証明。
ケガのためオールスター出場こそならなかったものの、会場となったイリノイ州シカゴへ向かい、ラッパーの“Dame D.O.L.L.A.”としてサタデーナイトに登場するなど、存在感を発揮していた。
3月のシーズン中断までの時点で、チームは惜しくもウェスト9位にとどまったものの、リラード自身は1月30日のロケッツ戦でキャリア初のトリプルダブル(36得点10リバウンド11アシスト)を達成。出場58試合のうち1ケタ得点に終わったのはわずか1度(9得点)と、安定したパフォーマンスを披露し、今年1月には現役4人目となる8シーズン目で通算1万4000得点に到達するなど、ブレイザーズのトップスコアラーとして自己最高と言っても過言ではないシーズンを送っている。
中断期間の5月27日。リーグが再開に向けて動いている中、リラードは『Yahoo! Sports』の電話取材に応じ、「俺たちにプレーオフへ進出できる“本当の機会”がないなら、俺はこのチームの一員として同行するだろうが、出場するつもりはない。今の段階ではそう言っておこう」と発言するなど、プレーオフ出場に対する熱い思いを口にし、注目を集めた。
その後、今月末から始まる第二幕へ参戦することが決まったブレイザーズは、ニューオーリンズ・ペリカンズ、サクラメント・キングスと共に3.5ゲーム差で8位のメンフィス・グリズリーズを追いかけて、8試合のシーディングゲーム(順位決定戦)に挑む。
ロドニー・フッド(ケガ)とトレバー・アリーザ、ケイレブ・スワニガン(共に個人的事情)は不参加のため、ベストメンバーで戦うことはできないものの、ユスフ・ヌルキッチとザック・コリンズというビッグマン勢がケガから復帰。カーメロ・アンソニーもシェイプアップに成功しているだけに、ブレイザーズのプレーオフ進出を推す声があるのも事実。
「あの2人と一緒にプレーすることでできる攻防両面における戦い方を楽しみにしてる。ピック&ロールをより高い位置で仕掛けられるし、相手ボールに対してよりプレッシャーをかけていくこともできる。これまでと比べて、リバウンドはかなり良くなるだろう。また、2人ともパスに優れているからね。彼らがコートに戻ってきた姿を見るのは楽しいね」。
リラードは7月中旬に『ESPN』へそう話しており、24日に行われたスクリメージ初戦でも両選手は上々の復帰戦を飾っていた。
「今シーズン、俺たちがこれまで何をしてきたかは関係ない。俺たちにはプレーオフへ出場するために8試合あるということ」とバックコートの相棒CJ・マッカラムが口にしたとおり、ブレイザーズの使命はシーディングゲームで全勝すべく戦い、8位へと浮上あるいは8位チームとのゲーム差を4.0ゲーム以内に縮めてプレーイン・トーナメントへ持ち込むこと。
だがブレイザーズのスケジュールは初戦でグリズリーズとの直接対決が組まれているほか、8試合のうち6試合が勝率5割を上回るチームとの対戦なだけに、厳しい状況が待ち受けている。
「俺たちにはゆっくりしてる時間なんてないし、物事を把握しようとする時間もない。積極的に、アグレッシブにやっていくしかないんだ。もし失敗してしまえばそれまで。少なくとも、精神面で徐々に慣れていくような余裕なんて俺たちにはない」。
7日に『AP』へ言い放ったリラードの言葉どおり、ブレイザーズは1戦必勝でシーディングゲームに臨めなければ、プレーオフ進出への道が絶たれてしまうだけに、初戦から“プレーオフモード”で臨むことが求められている。
自己最高級のシーズンを送るリラードにとって、今季の最終章はどんな結末となるのか。リーグ屈指のスコアリングガードが魅せるであろう、超絶パフォーマンスは必見だ。
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