2020.11.21
新型コロナウイルスの感染拡大を防止すべく、世界最高峰のエンターテインメント、NBAは3月13日(現地時間12日、日付は以下同)より2019-20レギュラーシーズンを中断することを余儀なくされた。6月に入り、7月31日からフロリダ州オーランドで22チームが参戦し、シーズンを再開することが決まった中、65試合前後を消化した各チームならびにその主要選手たちを振り返っていきたい。
※データは日本時間3月12日終了時点、%=パーセント、評価は上から順にS、A、B、C、D、Eの6段階
所属:サクラメント・キングス(ウェスタン・カンファレンス11位)
総合評価:A
■プロフィール
生年月日(年齢):1997年12月20日生まれ(22歳)
ポジション:ガード
身長/体重:190センチ/83キロ
NBAキャリア:3年目
<今季ここまでの功績>
特になし
<2019-20シーズン 個人成績>
平均出場時間:31.7分
平均得点:20.4得点
平均リバウンド:4.0本
平均アシスト:6.8本
平均スティール:1.4本
平均ブロック:0.5本
フィールドゴール成功率:47.5%
3ポイント成功率:30.7%
フリースロー成功率:70.3%
■主要項目におけるシーズンハイ(相手チーム名は略称)
出場時間:38分21秒(20年1月11日/対バックス)
得点:34得点(20年1月31日/対クリッパーズ)★
リバウンド:9本(2度)
アシスト:13本(19年12月30日/対ナゲッツ)
スティール:5本(20年1月3日/対グリズリーズ)
ブロック:2本(4度)
フィ―ルドゴール成功数:14本(20年1月31日/対クリッパーズ)★
3ポイント成功数:4本(20年2月21日/対グリズリーズ)
フリースロー成功数:11本(19年10月26日/対ブレイザーズ)★(キャリアハイタイ)
★=キャリアハイ
昨夏FIBAワールドカップに向けたアメリカ代表のトレーニングキャンプで、フォックスは当初ロースター候補選手たちとのセレクトチーム(練習相手)として参加。そこで評価を上げ、ロースター候補の仲間入りを果たした。共にプレーしていたボストン・セルティックスの選手たちはフォックスについて『ESPN』へこう話していた。
「彼はあんまり速く見えない選手でさえも、速くプレーさせてしまうんだ」(マーカス・スマート)
「まったくすごいヤツだよ。彼は超速いんだ。あのクイックネスは尋常じゃないし、コートの端から端まで走り切るスピードは信じられないね。彼がもっと速くならなきゃいけないだなんて、恐ろしい限りさ」(ケンバ・ウォーカー)
フォックス自身も「ここにいることができるのは、俺にとっては大きな機会だと思ってる。選手としてもっともっと成長しなきゃいけないと思ってるからね。俺はリーダーとして、ゲーム全体を把握できるような選手になりたいんだ。だからもしこのチームの一員になって彼らと旅することができれば、それは間違いなく大きな成功になる」と話していたものの、8月18日に「今シーズンに集中するため」として出場を辞退。
そうして迎えた今季。キングスは開幕5連敗から徐々に持ち直し、11月に入って2連勝。フォックスは「まだシーズンは始まったばかりだけど、俺たちは正しい方向に向かってると感じている。ディフェンスも良くなっている」と話していたものの、左足首をネンザしてしまい、約1か月の戦線離脱を余儀なくされた。
12月18日のシャーロット・ホーネッツ戦で復帰したフォックスは、早速チームトップの19得点8アシストをマーク。チームは敗れてしまったものの、ルーク・ウォルトンHC(ヘッドコーチ)は「ディアロン・フォックスが戻ってきてくれて良かったよ。見ていてすごく良かったし、いい動きをしていた。それにいくつかいいショットと得点機会を我々にもたらしてくれた。ここから彼はもっと良くなるだろうし、このゲームから学んでくれると思う」と司令塔の復帰を歓迎。
年明けからはアグレッシブに点を取りに行き、1月31日のロサンゼルス・クリッパーズ戦ではキャリアハイの34得点に8アシスト4スティール2ブロックの活躍で大金星に大きく貢献。その後も20得点以上を連発し、キングスのトップスコアラーへと飛躍を遂げた。
1月以降は月間平均でいずれも20得点以上をマークしており、3月は中断前までの5試合で平均23.8得点、フィールドゴール成功率49.4%、フリースロー成功率92.5%と絶好調のまま自粛期間に突入。
フォックスが年明け以降に好調を保てた理由として挙がるのは2つ。1つは今季から加入したベテラン、コリー・ジョセフの存在だろう。「彼はバスケットボールをよく知ってるベテランであり、チャンピオンシップを勝ち取った経験がある。彼のような選手からは、もう学ぶことしかないんじゃないかな。彼はガードとしてリーグでもベストなディフェンス力を持つ選手の1人だから、彼と練習でマッチアップすることで、俺の成長を手助けしてくれるはずさ」とフォックスも話しており、タイプの違うジョセフとのマッチアップをこなしたことで、これまで以上にペイントアタックへの突破口を開くことが可能となった。
もう1つはバックコートの相棒が変わったこと。キングスは1月下旬からスコアラーのバディ・ヒールドに代わり、ボグダン・ボグダノビッチを先発シューティングガードに抜擢。シュート力に加え、プレーメイクも可能なボグダノビッチがスターターに入ったことで、フォックスはよりスコアリングに専念できるようになったと言えるだろう。
6月上旬に今季の第二幕に関する詳細が徐々に明らかとなり、ウェスト11位のキングスは8位のメンフィス・グリズリーズを3.5ゲーム差で追う展開の中、シーディングゲーム(順位決定戦)に参戦することとなった。
中断期間に髪を切り、22歳なのに「まるで14歳に見える」と地元メディアに報じられたフォックスは、バブルと呼ばれる開催地でチーム練習に励んでいたのだが、7月16日に左足首をネンザ。そこから戦線離脱していたものの、26日に行われたミルウォーキー・バックスとのスクリメージ(練習試合)2戦目から復帰。約19分のプレータイムで7得点6アシストとまずまずのプレーを見せていることはキングスにとって朗報だ。
リーグ最高級のスピードを誇るフォックスは、トランジションで一気にギアを上げてディフェンダーを置き去りにし、軽やかなステップワークから2、3人を交わしてフィニッシュまで持ち込むことができる。ハーフコートでも緩急をつけて一気にディフェンス陣を突破できるため、ヘッドフェイクだけで2人のディフェンダーを欺くことができ、チームメートへのチャンスメイクももちろん可能で、そのスピーディな動きは見ていて爽快。
「どんな結末になろうと、皆が俺たちのことを脅威と見てなくとも、俺たちはコートに立ち、全試合に勝利してプレーオフ進出を決めるべくプレーする」。
フォックスが語った言葉のとおり、キングスが抱くプレーオフ進出への想いは強い。2006年を最後に大舞台から遠ざかっているだけに、チーム一丸となってウェスト最後のプレーオフのスポットを目指してシーディングゲームに臨むに違いない。
今季序盤に「彼は落ち着いてると、普段よりもいいプレーをしている。だから(相手からすれば)怒らせるようにしなきゃいけないね。そうでもしないと、目の前でダンクをたたき込んでくるよ」とヒールドが語っていたことから、キングスが第二幕で勝利を重ねていくためのカギは、フォックスが冷静にプレーできるかどうかなのかもしれない。
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