2023.07.16

アメリカ進学は「全然正解じゃなかった」渡邊雄太が高校生40人に金言送る

渡邊は念願の主催クリニックを終え「僕自身が一番楽しめた」と振り返った[写真]=金田慎平
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■ 盛りだくさんの7時間「もっと教えたかった」

 バスケットボール男子日本代表の渡邊雄太(フェニックス・サンズ)が15日、都内で高校生を対象にしたバスケットボールクリニックを開催した。

 男女40人の学生から歓声と拍手で迎えられた渡邊は、自ら考案した練習メニューで、時折実演を交えながらシュートやパス、ピックアンドロールなどを指導。基礎からNBAで活用される応用技術まで、「今はできなくてもこういうプレーがあるということを知っておくことでバスケットの見方が変わる」と未来ある若者にテクニックを授けた。

 技術指導で特に力を込めていたのがオフボールにおけるプレーの重要性。「今の子たちは、僕らが高校生の頃には考えられないくらいドリブルは上手いけど、オフボールの動きが疎かになっている」と語りかけ、「オフボールの動きはシンプルだけど、点は取りやすい。得点はみんなでとるもの」とアドバイスを送った。

 協賛したナイキ社のスタッフによるシューズの選び方講座や、サン・クロレラ社による栄養補給などの座学も行われ、最後は自らシューティングを披露。現役NBAプレーヤーが約7時間もの時間を割きながら「もっと教えたかった」と振り返るほど盛りだくさんの内容だった。

午後は景品を争うゲームで盛り上がった[写真]=金田慎平

■ 帰国後の手のひら返し「俺の努力がそうさせた」

 クリニックを締めくくるスピーチでは、高校卒業後に賛否が起こったというアメリカへの大学進学からNBA6年目を迎える現在まで、そのキャリアを振り返りながら、参加した高校生たちへ向けて次のように語りかけた。

「いまNBA選手になれているから、あのとき反対されたアメリカ行きが『正解だったね』と言われる。手のひらを返したように『アメリカ行きの選択は正解だ』と言われる。もちろん俺ももう大人やから、そんなことでいちいち言い返さず『ありがとうございます!アメリカ行って正解でした!』って言うけど、正直『アメリカ行きは正解』なんて言えるほど、そんなぬるい道じゃなかった。めちゃくちゃ厳しかった。結果として正解だったけど、俺の中ではその時その時の選択で考えたら全然正解じゃなかった。だけど、俺の努力がそうさせた。そしていまこうしてNBA選手になった」

「日本に残っていたらもっと楽できたかもしれんし、もしかしたら別の人生を歩んでいたかもしれない。その瞬間に何が正解かというのはない。いろんな選択をしていかなきゃいけない中で、選んだ時に正解になるか不正解になるかじゃなくて、選んだ後が大事になるから」

「仮にもし俺がNBA選手になれてなかったら、『アメリカ行きは失敗だったね』と言われてたやろうし。でも俺はそれだけちゃんと努力はしてきたから、なるべくしてNBA選手になれていると思っている部分もある。もしこれでNBA選手になれてなかったら、胸を張って『アメリカ行きは正解だった』と言いながら日本に帰ってきたと思う。それだけ自分は努力できたかなという感覚がある」

渡邊が作ってきた掛け声で高校生と団結する場面も[写真]=金田慎平

「みなさんはこれから大変なこともまだまだ待っているし、楽しいことばかりじゃないけど、今日みたいな楽しい時間とかも思い出しながら、一個一個いろいろな選択が迫ってくる中で、自分にとって何が一番いいのかというのをしっかり考えて、そして自分が選択した先に、自分が努力した先に何が待っているのかを考えて、一日一日の過程を大事にしながら生活してもらえたらなと思います」

 コロナ禍の影響もあって、ようやく念願が叶ってクリニック開催にこぎつけたという渡邊。終了後のメディア対応では、「僕自信が一番楽しめた。純粋にバスケットを楽しんでいる子たちを見て、初心に戻れた」と振り返った。

 また、「なかなか日本にいてNBA選手と触れ合う機会が無いと思っていて、自分も小さい頃にNBA選手と触れ合う機会なんて一度も無かった。日本人NBA選手としてできることはたくさんあるので、今日はその一つに過ぎないのかなと思っています」ともコメント。来シーズン以降も継続的にクリニックを開催する意向を示した。

8月25日開幕のワールドカップでは日本代表の主軸として期待がかかる渡邊[写真]=金田慎平

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