2025.07.21

賭博関与疑惑のテリー・ロジアーに関連する賭けの詳細が明らかに…大量ベットが全的中

疑惑をかけられたロジアー[写真] = Getty Images

 テリー・ロジアー(マイアミ・ヒート)は、シャーロット・ホーネッツに在籍していた2023ー24シーズンにスポーツ賭博に関与した疑いが持たれている。NBAは同年中に調査を終え、「リーグ規定違反なし」と結論。これについて、リーグやヒートからの追加コメントはなく、まもなくヒートでのトレーニングキャンプに臨むと思われている。

 しかし、連邦局は未だに本件の調査を継続中。『ESPN』はこの度、情報開示請求で入手した文書の詳細を公開し、ロジアーにかけられた疑惑の全容を明らかにしている。

 該当試合は、2023年3月23日に開催されたシャーロット・ホーネッツ対ニューオーリンズ・ペリカンズ戦。とある賭博師は、ミシシッピ州ビロクシのスポーツブックで、ロジアーの各種スタッツのアンダー(ブックメーカー運営側が設定したスコアよりも下と予想すること)に計1万3759ドル(約200万円)をベッティング。この試合、ロジアーは試合開始わずか10分で足の負傷を理由に退場しており、その結果、賭博師は賭けの全30件をすべて的中させたのだった。異常を監視する「U.S. Integrity」によれば、この日は少なくとも複数州に及ぶ6社以上のスポーツブックにおいて、ロジアーに関連する疑わしい賭けを検知しており、その大半がミシシッピ州とルイジアナ州で発生していたとしている。

 文書に含まれる賭けリストの最大額は、ロジアーのリバウンド5.5本未満に対して店頭で2700ドル(約40万円)をベットしたビロクシの賭博師によるものだった。残りの29件は、セルフサービスのスポーツ賭博キオスクで賭けられたもので、午前9時37分から数百ドルずつに分割してベッティングが行われたという。さらに、『ESPN』の情報筋によれば、ニューオーリンズの複数のスポーツブックでも、ロジアーに対する想定以上のアンダー予想が朝から午後半ばにかけて殺到。そして、試合当日の午後2時24分、「U.S. Integrity」はテリー・ロジアーのプレーヤープロップ(特定の選手が該当試合でどのような数字を残すか)において、市場で疑わしい賭けを察知したとして全国アラートを発出し、主要スポーツブックの大半はアラートから1時間以内にロジアー関連の賭けを停止したという。

 本稿執筆時において、リーグはロジアーへのプレーを制限しておらず、起訴や告発もされていないが、同選手は現在もニューヨーク東地区連邦検事局の調査に協力している。未だ疑惑の晴れないロジアーについて、選手の弁護士を務めるジム・トラスティ氏は、調査は継続中だが、ロジアーはその標的ではないと述べ、現在の境遇に不満を呈した。

「彼はスポーツ界のビッグネームで、このような目に遭っているのは不公平です。調査が終わった際には、2023年と同じ結論に達したことを100パーセント、明確に伝えてくれるものと期待しています」

 トラスティ氏によれば、ロジアーは2023年にNBAとFBIの担当者と複数回面談し、初期調査で不正行為はなかったと判定されている。しかし、ギャンブル業界の情報筋は、賭博関与によりNBAから永久追放を受けたジョンテイ・ポーター(元トロント・ラプターズ)に賭けていた一部のベッティングアカウントが、ホーネッツ対ペリカンズ戦でもロジアーのプレーヤープロップにベッティングを行っていたと証言。トラスティ氏は、ロジアーがポーター事件の関係者とは一切つながりがないと述べているが、調査が長期化している理由には、このような背景も関連しているのかもしれない。

 しかし、強調するべきは、ロジアー本人がインサイダー情報を漏洩または操作した決定的証拠は示されていないということだろう。連邦当局は引き続き、口座の資金フローや各種記録を解析しているが、現時点でロジアーは不起訴であり、無処分の状態にとどまっている。

 ロジアーは来シーズン、約2660万ドル(約39億5000万円)を受け取るリーグのスタープレーヤーだ。合理的に考えれば、そのクラスの選手が約200万円のギャンブル成立のためにキャリアを棒に振るとは考えづらい。しかし、ポーターの一件では、試験的なベッティングの2カ月後に大口ベットが出現。これは賭け額の上限内で当たりを出し、監視のアルゴリズムをくぐり抜けられるかを確認してから大口を投じるという手段だった。

 トラスティ氏の「ロジアーは捜査対象ではなく、協力者です」というコメントにあるとおり、連邦当局がロジアー関連のベッティングについて捜査を続ける理由は、一連の不審な賭けを解明し、インサイダー不正の“隠れた文脈”を炙り出そうとしているからなのかもしれない。

文=Meiji

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