2023.04.10

ケイン・ロバーツインタビュー…自分が積んできた経験が後輩たちの道標になれば

NBA入りを目指すロバーツに、過去、現在、未来を聞いた [写真]=Stony Brook Athletics
ロサンゼルス在住。1995年に渡米、現在は通信社の通信員として、MLB、NBAを中心に取材を行っている。

 全米大学体育協会(NCAA)1部(DⅠ)のストーニーブルック大学で2年生のシーズンを終えたケイン・ロバーツが3月28日、転校するための選手リストに自らが名前を載せたことを知らせるツイートをリツイート。同大からの転校を決断したことを明らかにした。

 1年目は31試合中15試合(スターター1試合)の出場で平均8.2分0.9得点0.7アシストだったが、2年目の今季は33試合すべてに出場し、26試合でスターター出場、平均24.4分3.0得点1.7アシストを記録。3ポイントシュート成功率は36.7パーセントをマークしていた。

 決断理由とこれから、そしてアメリカの高校、Bリーグ、DⅠという自らが歩んできた道について聞いた。

取材・文=山脇明子

自分の持ち味を発揮できる機会を求めて転校を決意

ーー転校を決断した理由は何だったのですか?
ロバーツ 自分の持ち味を発揮できる機会が欲しかったからです。ストーニーブルック大では、その機会が十分にあったとは言えませんでした。

ーーBリーグに戻るという選択肢もあるのでしょうか?
ロバーツ 今はすべてのオプションに対してオープンです。その(決断の)時点でBリーグに戻ってプレーすることが自分にとってベストな選択肢と思えば、Bリーグでプレーすることもあり得ます。

ーーとはいえ、2年生の今季はスターターに定着していました。どのようなシーズンでしたか?満足していますか?
ロバーツ スターターになることができて、本当に幸運でした。全体的にとてもいい経験ができたシーズンでした。満足度を1から10の間で示すとしたら、自らの(スターターという)ポジションを得たことに関しては、10だと言えます。でも現実的に見れば、まだ課題はありますし、7か8です。その課題をしっかり身に着けて向上できれば、9から10になれると思います。取り組まないといけないことはありますが、ポジティブな面もたくさんありました。

ストーニーブルック大2年目のシーズンは先発に定着、スタッツも向上した [写真]=Stony Brook Athletics


ーーどういう面を向上させたいですか?
ロバーツ アシスト/ターンオーバー比(ターンオーバー1つに対するアシスト数)がそんなに良くなかったので、その部分は絶対に向上させないといけません。このアシスト数を5~6つに持っていきたいですし、1試合平均ターンオーバーを1以下にしたいです。

ーー1年生だった2021-22シーズンは、あまり出番がありませんでしたが、ジノ・フォードヘッドコーチによると、シニア(4年生)が多かったそうですね。
ロバーツ 昨季はとても年齢の高いチームでした。だから1年生の僕としては、自分のチームにおける役割や自分のどの部分が生かせるかを見出さなければなりませんでしたし、学ばなければなりませんでした。自分がやりたいという気持ちを抑えて一歩下がり、今は学習過程なのだと理解して、コーチが僕に教えようとしていることを受け止め、先輩から学ぶことが大事でした。

ーー今季はすべての試合に出場しましたよね。1年生の時に比べてプレー時間が伸びたうえに毎試合出場できたことは、楽しいことでしたか? それとも大変なことだったのでしょうか?
ロバーツ 1年生の時はあまり出場時間がなかったので、今季はどうなるかと思っていましたが、機会がくれば、しっかりできるよう準備はしていました。出場機会を得られるようになってからは、もっと楽しくバスケットができるようになりました。以前のようにコートで思い切りプレーできるようになって本当にうれしかったです。だから楽しかったですね。

ーー1月5日のモンマス大学戦であなたが自己最多の15得点を挙げた時は、ロッカールームでチームメートがあなたを祝ってくれました。どのような気分でしたか?
ロバーツ 最高でした。あの時はウォームアップの時からとてもいい感じで、すべてのショットが決まっていたし、フォロースルーもすべていい感じでした。だから自信を持って試合に臨むことができました。チームメートが祝ってくれたのは、最高の思い出ですし、あの経験で僕にどんなことができるかをチームに示すことができ、より自信を持つことができました。コーチも僕をもっとプレーさせることができるという信頼を深めてくれたと思います。

Bリーグでの1年はかけがいのない経験

ーーあなたは南カリフォルニアのサンタマルガリータ・カトリック高校でプレーしましたね。
ロバーツ サンタマルガリータには4年生の時に転校し、バーシティチーム(一軍)で1年プレーしました。でもそのあとBリーグでプレーしたことが、アメリカの大学から注目を集めることができたきっかけです。サンタマルガリータ高でも、決して悪くはありませんでしたが、もっと出来たと思いますし、まだDⅠからオファーを得るほどの準備はできていなかったと思います。あの経験があって、そのあとBリーグでプレーする機会を得られたことが、自分がDⅠでやっていけることにつながったのだと思います。

ーーサンタマルガリータ・カトリック高校でバスケットをし始めた時にそれまで日本でやっていた時との違いは感じましたか?
ロバーツ 正直、僕が感じたのは、日本の選手の方が速さはあるということです。アメリカとの大きな違いは、サイズと運動能力。日本人は速いし、ファーストステップも速い。またディフェンスも上手いです。一方でアメリカ人は運動能力に恵まれている選手が多いです。

ーー Bリーグでの経験をどのように受け止めていますか?
ロバーツ 素晴らしい経験でした。本当に楽しかったです。もちろん僕の最大の目標はNBA選手になることですが、もしそうでなくてもBリーグに戻れたら凄くうれしいです。Bリーグで最高の経験をさせてもらったし、本当に楽しかった。高校を出て18歳の僕に多くを学ばせてくれました。25歳やもっと年齢が上の選手と一緒にプレーできる機会なんて、そうあるものではありません。年上の選手たちのおかげでバスケットボールIQも身に着きましたし、僕は速く、跳躍力もありますが、それだけではない多くのことを教えてもらいました。シーズンのどういう時に、または試合のどの場面でどういうメンタリティでいるべきかも彼らから学んだことで、大学でも役立てることができています。Bリーグでの1年は、僕にとってかけがえのない経験となりました。本当に最高でした。

ーー山ノ内勇登選手(アースフレンズ東京ZからDⅠのラマー大学へ進学。来季は同じくDⅠのポートランド大学へ転校予定)が、2年ほど前インスタライブをした時に、まだ進学が決まっていない山ノ内選手にあなたがBリーグを勧めていましたね。
ロバーツ あのあと彼は僕にDMをしてきたんです。そしてBリーグのことを聞いてきました。あの時Bリーグのことを言ったのは、自分が実際にやって、多くの選手にああいう選択肢があることを伝えることができると思ったからです。

ーー日本には、今多くの若くていい選手がいるので、あなたの切り開いた道は、確かにそういった選手たちの道しるべになりますね。
ロバーツ 僕が最初に始めた時は、全体像というのが見えませんでしたが、やっているうちに自分が歩んだこの道は、アメリカに行く十分なお金や機会がない選手たちがプロとしてプレーし、存在を知ってもらえる最高のチャンスだと思い始めました。多くの選手がBリーグでプレーしたがっていて、その道を自分が開くことができたかなと思っています。

東京Zでの経験が自身を高めてくれたとロバーツは振り返る [写真]=Stony Brook Athletics

BASKETBALLKING VIDEO