2023.06.16
横浜ビー・コルセアーズに特別指定選手として加入し、2021年11月13日には当時のBリーグ史上最年少出場選手となったジェイコブス晶(現在18歳)が、NBAがオーストラリアに持つ「NBAグローバルアカデミー」で成長を続けている。日本人選手として初めて同アカデミーの全日程に参加している200センチの新星は、「向上させなければならないところは多くあるが、どんどん自信を持ち始めることができている」と充実した日々を送っている。
去年12月のラスベガス遠征時、ジェイコブスに同アカデミーに加わってからの気持ちの変化やこれからについて聞くことができた。
取材・文=山脇明子
ーーNBAアカデミーでは、どんな毎日を送っているのですか?
ジェイコブス 朝からずっとバスケという感じです。朝起きて準備して、朝の練習はシューティングで、シューティングの後はウェイトトレーニングで、そのあと3時間ぐらい空いて、そこからチームの練習があって、そのあと自主練でシュートして、寝てという日々の連続です。
ーー選ばれたハイレベルな選手たちの中でのバスケットはどうですか?
ジェイコブス アカデミーの中には、ゴンザガ大学に行く選手やすごくハイメジャーのディビジョン1(以下DI)の大学からオファーを得ている選手がいるんですけど、その中でも自分はできていると感じています。レベルはやはりすごく高いですが、その中で一緒にできているので自信に繋がっています。
ーーハイレベルな環境でやっていく中で、横浜BCでの経験はどのように役立っていますか?
ジェイコブス ビー・コルセアーズでの経験はすごく大きいです。プレーやフィジカルやスピードだけではなくて、大きい声を出すこととか、そういうのは全部こっちでも言われていることなので、来る前にビー・コルセアーズで学べたのはとても役に立っています。
ーー自分より年上のプロ選手たちと一緒にプレーできたのは、貴重な経験ですね。
ジェイコブス はい。プロという世界のバスケが学べたので、同じ年の選手より、もっと良くできている部分はあると思います。
ーーアカデミーを終えたあとはどのような進路を目指しているのですか?
ジェイコブス アメリカのDIの大学でプレーすることが、これからの目標です。DIの大学からオファーは来ていますが、まだどこに行くかは決めていません。
ーー新型コロナウイルス感染拡大の影響でバスケットボールをする場を求めて日本に来ましたが、それ以前はアメリカの高校でプレーしていました。DIでプレーするというのは、アメリカにいたときから目標だったのですか?
ジェイコブス いえ、何年か前までは、自分がDIに入る選択肢があるとは思っていなかったので、そんなに考えていませんでした。
ーー自分にはDIの大学に行けるだけの能力がないと思っていたのですか?
ジェイコブス 能力がないというよりは、自分がいた状況では、大学に行くのは難しいかなと思っていました。そのときは、自分のバスケットボール能力にも自信がなかったので、このアカデミーに入って、大学の方と話をして、来てほしいと言われてから、『DIでプレーすることが一番いい選択肢だ』と、目標を変えました(笑)
ーー日本でバスケをしようとアメリカを出てから実際にオファーを貰うまでの間に状況が大きく変化しましたが、その間「自分はDIでやれるんじゃないか」と思ったことはありませんでしたか。
ジェイコブス NBAアカデミーのトライアウトで、ハイメジャーのDIの大学への進学が決まっている選手何人かと一緒にやって、その中でしっかりプレーできました。そのときに『(DIの)大学に行けるかな?』と思いましたが、当時はまだオファーがありませんでした。
ーーオファーを貰ったのはいつ頃ですか?
ジェイコブス (昨年7月に)アトランタでNBAアカデミーゲームがあり、そのときから話がきはじめました。実際に大学のコーチやスカウトから『来てほしい』と言われると、『自分にもできるんじゃないかな』と自信がどんどん出てきました。シュートにはまだ課題もありますし、これから伸ばしていかないといけないところもたくさんありますが、今は自信を持ってやることができています。
ーー先ほどゴンザガ大に行く選手がいるという話をしていましたが、ゴンザガ大でプレーする八村塁選手(ロサンゼルス・レイカーズ)の大学時代のプレーは見たことがありますか?
ジェイコブス はい。最初に見たのはマウイでデューク大学と対戦したマウイ・インビテーショナルの決勝戦です。たまたまテレビでやっているのを見て、『あれ? 八村って日本人の名前じゃない?』と思って。家族と見ていたんですけど、そのまま試合を見ていたらやはり日本人で、そこから彼のことをフォローし始めました。
ーーあの試合では、ザイオン・ウィリアムソン(ニューオーリンズ・ペリカンズ)やRJ・バレット(ニューヨーク・ニックス)ら将来のNBA選手を擁するデューク大に勝って、八村選手は最優秀選手(MVP)に輝きました。あのときのプレーを見てどう思いましたか?
ジェイコブス すごく感動しました。そのとき、僕はまだアメリカにいたんですけど、アメリカの大学のハイレベルな世界で日本人がプレーしているということは知らなかったんです。八村選手のプレーを見て、すごくうれしい気持ちもありましたし、自分はそんなに高いレベルのバスケをやっていなかったんですけど、彼みたいになれたらいいなという気持ちになりました。
ーー同じハーフの八村選手は、あなたにとってどんな存在ですか?
ジェイコブス NBAで活躍している姿を見ていると、やっぱり自分もその中に入りたいという気持ちが強くなります。NBAにはまだ日本人選手が少ないので、そういった意味でも自分も入れるように頑張りたいです。今目指しているのはDIの大学ですが、最終の目標はNBAです。そのために、もっと上手くならなければなりません。コーチらが、僕がもっといい選手になれるように教えてくれ、手伝ってくれていますし、最終的にはDⅠ以上のレベルに行きたいと思っています。
ーー(インタビュー時、見に来ていた)Gリーグは、DⅠの先のレベルの一つでもありますが、見ていてどう思いますか?
ジェイコブス やはりフィジカルがすごいと思います。フィジカルとスピードに加え、ポジションがすぐ変わるところが、今の自分がやっていることと一番大きな違いだと思います。自分があそこに混ざってできると思うのは、シュートやカッティングとか、小さい部分ですが、そこはこのレベルでできるという自信はあります。でもそれだけではやっていくことはできないので、フィジカルとスピードをもっとつけていくことを課題としてやっていかなければなりません。
ーー夢に少しずつ近づいている実感はありますか?
ジェイコブス はい。この1年だけで、すごく近くなっていると思います。努力をすれば、どんどん近づけるという自信も出てきましたし、これからもっと頑張りたいという気持ちでいっぱいです。
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