2023.08.23

【ワールドカップ注目選手】ルカ・ドンチッチ(スロベニア代表)「今大会最強の超万能スーパースター」

ワールドカップ制覇を目指すスロベニアの大黒柱・ドンチッチ[写真]=伊藤大允
NBA好きが高じて飲食業界から出版業界へ転職。その後バスケットボール雑誌の編集を経てフリーランスに。現在はNBAやBリーグのライターとして活動中。

8月25日から9月10日にかけて開催される「FIBAバスケットボールワールドカップ2023」。4年に一度の世界一決定戦を前に、バスケットボールキングでは今大会で活躍が期待される注目選手をピックアップした。

文=秋山裕之

■ 言わずとしれたNBA最高峰のスーパースター

 スロベニア共和国の首都リュブリャナで1999年2月28日に誕生したルカ・ドンチッチは、8歳でオリンピアのユースプレーヤーとしてバスケットボールキャリアをスタート。13歳でスペインのレアル・マドリーと5年契約を結び、2017-18シーズンにはユーロリーグ優勝へ導き、史上最年少でユーロリーグMVPとファイナル4のMVPに輝く。

 すると2018年のドラフト1巡目3位でアトランタ・ホークスから指名後、トレードでマブスへ移籍してNBA入り。ルーキーシーズン(2018-19)からチーム得点王となって新人王に選出され、翌2019-20から2022-23まで4シーズン連続でオールスターとオールNBAファーストチーム入りと、24歳ながらすでにNBA最高級の選手としての地位を確立した。

 プレーオフには2020年から2022年にかけて3年連続で出場し、2022年にはカンファレンス・ファイナル進出の立役者に。プレーオフ通算28試合の出場ながら、キャリア平均32.5得点はマイケル・ジョーダン(元シカゴ・ブルズほか/同33.5得点)に次ぐNBA歴代2位。

 昨シーズンはプレーオフ出場を逃したものの、平均32.4得点は自己最高かつリーグ2位で、1シーズンにおけるマブスの球団史上最高得点記録も更新。さらに8.6リバウンド8.0アシスト1.4スティールを残し、キャリア5年ながら通算トリプルダブル達成回数でNBA歴代10位の56回に達している。

 NBA有数の万能戦士が、スロベニア代表デビューを飾ったのは「FIBAユーロバスケット2017」。この大会で、同代表は金メダルに輝き、ドンチッチはMVPのゴラン・ドラギッチ(現無所属)とともにオールスター5(ベスト5)に選出された。

 そして2021年の東京オリンピックで大会平均23.8得点9.7リバウンド9.5アシストと暴れ回り、初出場ながら4位に入る快進撃。その一方、「FIBAユーロバスケット2022」では平均26.0得点7.7リバウンド6.6アシストを残すも大会6位で終了。今年7月末の会見で「この国全体をがっかりさせてしまった。その責任は僕にある」と悔やんでいた。

■ 今大会最強の男が見据えるのは頂点

19日に行われた日本との強化試合では23得点7リバウンド7アシストを記録[写真]=伊藤大允


 201センチ104キロのサイズを誇る男は、他を圧倒する速さや跳躍力こそないものの、体の強さや予知能力、視野の広さに加え、シュートやパス、ドリブルといったスキルをハイレベルで兼備しており、ポストプレーやドライブ、ジャンパーなどで得点を量産する。

 そして、まるでゲームの世界から飛び出してきたかのような驚きのパスも必見だ。先日、有明アリーナで開催された日本代表との強化試合でも、トップ下から左腕1本でゴール下へ通す正確かつ鋭いノールックパス、トップからドライブし、左ウイングにいた味方へビハインド・ザ・バックパスを鮮やかに通すなど随所に“ルカ・マジック”を披露。

 体の使い方を熟知しており、ビッグマンを外へ引きずり出してステップバックからディープスリー、小柄なガードを相手にミッドポストやローポストで攻め立てて得点を量産することが可能。強烈なダンクを炸裂させることもあり、相手のファウルを誘ってフリースローを獲得して着実に点をつなぐこともできる。

 スロベニア代表のキャプテンとして臨む自身初のワールドカップに向けて、ドンチッチは「ゴールはいつだって同じ。僕らはどんな時でもチャンピオンシップを奪いに行く。ゴールはそれを勝ち取ることにある」と意気込んでいた。

 25日からスタートする「FIBAバスケットボールワールドカップ2023」で、おそらく最も有名な大物選手はドンチッチとなる。先日、FIBAライターのジェフ・テイラー記者は「ルカを止められるチームはない。抑えることもできない。じゃあどうするかって? ひざまずいて祈ることだ」と評していたように、ドンチッチはこの大会でアンストッパブルな存在となる可能性を大いに秘めている。

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