2018.05.21
「B.LEAGUE CHAMPIONSHIP 2017-18」クォーターファイナル、東地区王者の千葉ジェッツと死闘を演じた川崎ブレイブサンダース。5月13日の第2戦に勝利を収め、セミファイナル進出を懸けた第3戦に臨んだが惜しくも敗戦。この日が、68年間続いた「東芝」としてのラストゲームになった。シーズン中から「東芝のために優勝という結果で恩返しをしたい」という思いを持って戦ったチームであったが、その目標は夢半ばで途絶えた。
千葉の大野篤史ヘッドコーチは現役時代に何度も東芝と対戦した。「ライバルというほど、ライバルにはなれなかったチームに自分はいて。僕がルーキーの頃は北さん(北卓也HC)や節政さん(節政貴弘氏)が全盛期で、すごくいいチームだった。それを踏襲して、今のチームができていると思う。チームで戦うというスタイルなど、本当に見習うべきところはたくさんあった。北HCからはいろいろなアドバイスをいただいていたので、東芝としてなくなるのは残念。だけど、今まで培ってきたカルチャーは新しいチームに活かしていけると思う」と、感慨深い表情でコメントした。
そして、ラストゲームを迎えた川崎の選手たち。感謝の気持ちと同時に、優勝という最高の形で終わることができないことへの申し訳なさを口にした。
現役時代から通算23年間チームに在籍している北卓也HCは「東芝に入社してやっていたので、今は自分がプレーできるわけではないけど、東芝のためにという思いでやっていた。やはり有終の美で終わりたいという思いはあって、でもなかなかそうさせてくれなかった。東芝に対してもファンやスポンサーの方々、関係してくれている人たちの期待に応えられなくて、本当に申し訳ない気持ち」と語った後に、時より涙目になりながら次のように続けた。
「これだけのファンが来てくれたことに対して、ビックリしているし、非常にうれしかった。これはファンが選手を後押ししたいという気持ちはあるが、何と言っても昨シーズンのファイナル(vs栃木ブレックス)。あれだけ真っ黄色のところでゲームをしなければいけなかったところから、クラブスタッフの皆さんが本当に後押しをしてくれた成果が出ていると思う。本当に少しずつ川崎ブレイブサンダースというチームが変わってきているなと感じているので、これがもっともっと人気が出て、常勝チームになれるように発展していくことを願っていくだけですね」
シューターの辻直人は涙が止まらなかった。「本当にこういう結果で終わらせてしまったのは申し訳ない気持ちでいっぱい。いろいろな問題はあったと思うが、クリアしてBリーグに参入できた。荒木(雅己)社長をはじめ、そういった方のために本当に勝ちたかった。自分の今日の出来というのはふがいなく思うし、本当に申し訳ないと思っている」と、誰よりも責任を感じていた彼の思いが溢れ出た瞬間が、この時だった。
栗原貴宏は感情が高ぶり、途中言葉が詰まりながらも「最初は社員として入って、本当に社員での経験はバスケットに限らず、自分が今後生きていく中でだったと思う。あとは会社が僕たちをバスケットに集中できるように、様々なサポートをしてくれたし、そのお陰でリーグ戦2回と天皇杯1回と優勝もできた。そこに関しては感謝の気持ちが本当に大きくて。東芝として最後の今シーズン、少しでも長くできたら良かったが、初戦で負けてしまって。東芝としては終わるが、まだ川崎のバスケットしては続いていくと思う。東芝に対しては、ありがとうございましたという気持ちです」とコメントした。
エースのニック・ファジーカスは「東芝のお陰で、落ち目だった自分のキャリアを再び取り戻すことができた。本当に東芝がいなくなるのは残念だが、これから川崎ブレイブサンダースとしてがんばっていくしかないです」と感謝の気持ちを述べると、今シーズンから加入したジョシュ・デービスも「本当にこのチームの一員になれて良かった。みんなが非常に謙虚で、常にハードワーカーで一生懸命プレーするメンバーなので、このメンバーとプレーできて本当に良かった。一緒にいて本当に楽しかったので、素晴らしいシーズンだったと感じている」と、チームに対しての感謝に溢れていた。
そして、司令塔の篠山竜青は「本当に感謝の気持ちでいっぱいです。結果が出ない時も、チームがすごく弱い時も自分は経験しているが、そういう時に温かく声援を送ってくれたし、会社全体としてバスケットボール部を支えてくれた会社だったので。そういう支えが60年を超えたからこそ、今こうやってチームが存在していると思う。本当に関わってくれた人、皆さんに感謝の言葉を述べたいと思う」と、まっすぐ前を向いて力強く語った。
1つの歴史が終わった瞬間。最後は有終の美で飾ることができなかったが、東芝として日本バスケットボール界に残した功績は素晴らしい。そして、川崎は来シーズンから新しい歴史のスタートを切る。今までの歴史をベースに、さらに進化したチームがきっと見られるであろう。最後はこの言葉で締めくくりたい、「ありがとう、東芝」
文=鳴神富一
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