2020.04.23
9月14日(土)から3日間に渡ってウィングアリーナ刈谷で行われた「B.LEAGUE EARLY CUP 2019 TOKAI」。今週末に開幕を控えるB2のチームがチームとしての仕上がりがやはり早いのもあり、いい戦いを演じていたという言葉を残すのが正解であろう。それでも最終的にはファイナルが昨年と同じカードとなったのは、B1で戦っているチームがしっかりと格の違いを見せつけたと断言できる。
その中で初日に行われた1回戦でアースフレンズ東京Zが三遠ネオフェニックスを倒してアップセットを起こした。この事はこの大会をより面白くしたと同時に、大きな印象を与えた。東京Zを率いる東頭俊典ヘッドコーチはこの勝利に対して1つの結果であり、この大会はプレシーズンとして捉えて色々な事を試したと前置きしつつ、「この大会に対してコンディションを1番辛い所に持ってくるように調整していて、戦えるかという不安が少しありつつも戦い抜けたという結果に関しては良かったです。選手たちが頑張ってプレーしてくれたし、更に選手自らが求めているテーマに対してコート上で表現してくれた部分が見えてコーチ冥利に尽きます」と3日間を振り返った。
そしてこの大会にはNBAサマーリーグのメンフィス・グリズリーズで渡邊雄太とチームメイトとなり、チャンピオンに輝いたファイティングイーグルス名古屋に所属しているベンジャミン・ローソンがいた。豪快なダンクなど1試合平均20得点を獲得し、会場を何度もどよめかせていた。渡邊とはサマーリーグ中にBリーグや日本バスケ全体の事を2人で数時間話したというエピソードを披露した後に、その上で今大会に関してチームとして自分を活かしてくれた事に手応えを感じながら「ネクストレベルだったサマーリーグや昨シーズン戦ったB1での経験を伝えて、自分の高さとフィジカルを活かしてプレーし、B1昇格を掴みたい」とシーズンに向けた意気込みを語ってくれた。
この2チームをそれぞれ下してファイナルの舞台にやってきたのが、名古屋ダイヤモンドドルフィンズとシーホース三河であった。ゲームは新潟アルビレックスBBから三河に移籍したダバンテ・ガードナーを中心に金丸晃輔や川村卓也と3人で69得点、更にはシックスマンとしても活躍が期待される成長著しい長野誠史も2桁得点をあげるなどオフェンスで強さを見せて快勝し、この大会を制した。「今日は最後まで粘り強く戦って勝利を収められました。日本人選手が2桁得点を取れるとチームは強くなります。今シーズンは昨シーズンの悔しさを忘れず、とにかく勝利という結果を出さないといけません。その中で今シーズンは得点力がある選手が多くいますし、更には機動力もあります。より攻撃的にスピーディーにチームでボールも人も動きながらプレーをして、ファンやブースターに喜んでもらえるバスケットを展開していきたいです」と三河の鈴木貴美一ヘッドコーチはシーズンへの展望も含めて話してくれた。
チームの支柱である桜木ジェイアールは「今日も疲れたね」と言いながらも、いつもと違ってその顔は笑顔でチームとしての手応えを感じている。「オフェンスでのスペーシングは昨シーズンよりも良くなっているし、得点が取れる選手も多くて凄くプレーしやすいから気分はいいです。しっかりとチームとして噛み合えば、リーグの中で非常に危険で強いチームになれると確信しています」
一方の名古屋Dは相手の攻撃に対して、昨シーズン以上の激しく強いディフェンスを見せていくものの外国籍選手のファールトラブルが影響してしまい、2連覇とはならなかった。梶山信吾ヘッドコーチは「相手が素晴らしかったです、ファウルトラブルなどで自分たちがやりたいディフェンスができませんでした」とファイナルでの戦いを悔やんだ。しかし、戦った2試合を通して攻防両面でより激しく強いバスケットをコート上で披露したのは間違いない。そこはやはり昨シーズンからロスターが新加入したイシュマル・レーン以外は変わらない部分が大きいと話した。「理解度がゼロからではないので、そこは大きいです。ディフェンスは年々良くなっているので、そこを徹底してやっていきたいですし、それが結果にも繋がると感じています。更に言うと今シーズンは選手がヘロヘロになるまで走らせて、原点に返って動き出しの部分から徹底して練習しています。そういう部分は試合で表現されてきていると思っています」
このファイナル、世界の舞台で戦って悔しい思いをした名古屋Dの安藤周人が出場した。実はチーム合流がファイナルの前日、全くチームでの練習をせずに出場したのである。そこには彼の強い思いが梶山HCの心を動かしたと凄くいい秘話が存在していた。「前日までは出すつもりはありませんでした。安藤自身が日を重ねるごとに試合をしたいという気持ちが自分に伝わってきて、それは凄く嬉しかったです。自信と元気を取り戻して欲しく、ファーストプレーを彼に託しました。気持ちよくシュート打ってくれて良かったです。うちのエースとして、そしてこれからワンランク上の選手になる為に大舞台でも高確率でシュートを決めないといけません。その自覚を持ってしっかりとシュートをこれから決めて欲しいです」。
そんな安藤は「3カ月間、ずっと気を張りながら時間を過ごしてきた中で自分のチームに戻ってきて今日は楽しもうと思ってプレーしました。そういう意味では楽しめたので良かったです。チームメイトが頑張っている姿を見ていて、試合に出たいという気持ちになりました。志願して試合に出させてもらい、更には優先してシュートを打たせてくれて、本当に感謝しかありません」と試合を振り返った。
出場6チームがそれぞれテーマを持ってタイトルを懸けて戦った、刈谷の地でのアーリーカップ。様々なストーリーやドラマがあった中で課題と収穫が見えた格好となり、いよいよ突入する厳しい戦いへ向けたいい準備になったに違いない。いよいよ本当の戦いがスタートする。
文・写真=鳴神富一
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