2025.08.13
エースの一撃が初の日本一を大きく手繰り寄せた。
8月1日、ジップアリーナ岡山で行われた「令和7年度全国高等学校総合体育大会 バスケットボール競技大会(インターハイ)」男子決勝戦は、残り30秒を切った時点で60−58。優勝の行方が最後まで読めない展開のなか、鳥取城北高校(鳥取県)はハロルド アズカ(3年)の3ポイントシュートでリードを5点に広げ、最終スコア64−58で勝利。2010年以来となる優勝を狙った八王子学園八王子高校(東京都)との激闘を制し、悲願の初優勝を飾った。
「明日どんなバスケをするか、僕はまだ決めてないです。相手がこれをしたら、これをする。相手がダブルチームとかトリプルチームに来たら、他の人に(ボールを)わたす。ディフェンスが来たら、そこで考えます」
仙台大学附属明成高校(宮城県)を3点差で振りきった準決勝後、アズカはそう口にしていた。
堅いディフェンスから速い攻撃につなげる、というスタイルはチームの大前提。その中でもアズカは、2メートルの高さと内外問わずプレーできる器用さを武器に「チームのために何でもする」中心選手である。
八王子学園八王子戦では、ゴール下を制圧するニャン セハセダト(2年)と対峙した。「0番(セハセダト)めちゃくちゃ強かった」と相手の圧倒的なパワーに苦しんだものの、アズカも負けじと11リバウンド4ブロックをマークして堂々と渡り合った。
オフェンスでは両チーム最多となる24得点の大活躍でエースの働きを見せた。決勝までの4試合では3ポイント成功率が合わせて12分の2と振るわず、帝京長岡高校(新潟県)との準々決勝での3ポイントは8本打って成功は1本のみ。しかし、この大一番では8本中5本の高確率で長距離を射抜いた。
「前の試合まではあんまり良くなかったけど、先生が『もっと自信持って打っていいよ』って言ってくれたから自信持って打った。今日は入ったから良かった」
そう振り返ったアズカの活躍には、河上貴博コーチも「今日は集中していましたね」とコメント。河上コーチの直接的な指示ではなく、アズカや選手たちの判断で3ポイントからの得点が伸びたと述べた。
「基本的には選手たちの判断からアズカの3ポイントが生まれました。アズカの外からのシュートが決まればやっぱりチームも落ち着きますし、相手ディフェンスも結構離れていたので本人も気持ちよく打てたと思います」
昨年も唯一無二の存在として初のウインターカップ準優勝に貢献した背番号28は、新チームでは新美鯉星(3年)とともにチームの先頭に立つ。ダブルキャプテンの1人として大事にしていることは、どんな状況でも周りを平常心にさせることだとアズカは言う。
「アズカと新美くんがキャプテンだから、もし試合中にアズカの顔が良くなかったら周りが緊張しちゃう。みんなに落ち着いてもらうのもアズカの仕事」
アズカのリーダーシップも光り、鳥取城北はチーム一丸となって初の栄冠を手にした。自身もまた、仲間に支えられた1人。中国大会で負ったケガのため今大会は決して万全なコンディションではなかったが、代わりに1年生センターのフィリモン タムロンが先発の大役を見事に務めあげた。
タムロンについては、「めっちゃうれしいです。まだ(日本に来て)4カ月くらいだけど、日本のバスケのシステムが分かってるからうれしいです。めちゃくちゃ活躍しました」と満面の笑みを見せた。
「日本一はそんなに簡単じゃないし、日本に来たばっかりのときからの夢だったから、めちゃくちゃうれしいです」
インターハイ制覇の喜びをそう表現した鳥取城北の最強留学生は、「次の目標はウインターカップ優勝」と宣言。王者としての誇りを胸に、再び頂点を目指す。
文=小沼克年
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