2025.09.12

千葉J・西村文男の引退を伊藤大司GMが語る…「まだやれる」親友への思いと絆

Bリーグ初年度にも伊藤(右)と西村のマッチアップは実現した [写真]=B.LEAGUE
バスケットボールキング編集部

 千葉ジェッツ西村文男が、今シーズン限りで現役を退く。バスケットボールを共にしてきた幼なじみであり、現在アルバルク東京のゼネラルマネージャーを務める伊藤大司が、長年の親友について思いを語った。

 西村と伊藤は三重県の清和クラブに所属し、県代表として出場した全国ミニバス大会で準優勝を果たした。さらに鈴鹿市立創徳中学校に進学すると、全国中学校大会で準優勝に輝き、早くから年代を代表する存在として注目を集めていた。

 伊藤と西村の関係は小学1年生から始まった。放課後には体育館に通い、リングを低くして1対1を繰り返す日々を過ごした。下級生だった2人は授業が早く終わるため、誰よりも先に体育館に入り、コートを独占して練習することができた。「授業を終えてすぐ体育館に行き、2人でボールをついていた」と伊藤は振り返る。当初は決して突出した強豪チームではなかったが、やがて全国大会に出場するまでに成長した。

 創徳中を卒業すると、西村は北陸高校(福井県)へ進学し、インターハイ優勝を経験した。一方の伊藤はアメリカに渡り、全米でも名門として知られるモントロスクリスチャン高校へ留学。高校卒業後は、西村が東海大学、伊藤がポートランド大学へ進み、それぞれの舞台で研鑽を積んだ。大学卒業後は再び日本で再会し、西村は日立サンロッカーズ(現サンロッカーズ渋谷)、伊藤はトヨタ自動車アルバルク(現アルバルク東京)に入団。1年の差はあったが、再び同じリーグでコートに立つこととなった。

 印象深い瞬間として伊藤が挙げるのは、JBLでの初めてのマッチアップだ。西村からスティールを奪い、アンスポーツマンライクファウルを誘った場面は今も鮮明に覚えているという。

 2011年には、日本代表としてともにウィリアム・ジョーンズカップに出場し、ついに中学時代から交わした「いつか代表で一緒に戦おう」という約束が実現した瞬間を迎えた。ともに先発に指名され、伊藤は「センターサークルに向かう途中、『覚えてる?あの約束』と声をかけ合った。試合前なのに胸が熱くなった」と振り返る。しかし大会中に伊藤はぎっくり腰を発症し、ズボンを脱ぐこともできず西村に助けられてしまう。「結局、次の試合には出られなかった」と苦笑いで当時を思い返した。

 長いキャリアを通じて輝きを放った西村に対し、伊藤は「年々プレータイムが減る中でも、自分の役割を全うする姿勢は尊敬に値する」と称えつつも、「まだまだやれると思う気持ちはある」と本音も漏らした。そのうえで「引退を寂しいと思うより、むしろ次のステージでの成功を期待している」と語る。さらに「バスケ以外の分野でも必ず高いレベルで結果を残せる人。彼ならやれるはず」とエールを送りつつ、「バスケットIQを若いガード陣に伝えてほしい」と、指導者として後進を育てることにも期待を寄せた。

 天然なキャラで練習前にスタッフを和ませながら、いざ試合になれば責任感とプライドを発揮する。そんなオンとオフの切り替えも、西村の大きな魅力だった。2人が現役時代はオフシーズンにしか交流することもなかったが、伊藤が先に引退すると、気軽に食事に行くことも増えたという。「(19)86年世代がまだ頑張っているのを見るのはうれしい。フミオも誇りに思う」と伊藤は語る。

 小学校1年生のときに初めて出会ったから、清和クラブでの全国ミス準優勝、創徳中での全中準優勝、別々の進路を歩んで再会したJBLの舞台、そして日本代表で果たした約束まで。2人をつなぐ歴史は厚く長い。その絆は、西村のユニフォーム姿が見納めとなる今も、決して色あせることはないはずだ。

文=入江美紀雄

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