2025.12.28
12月27日、東京体育館。メインコートで行われた「SoftBank ウインターカップ2025」男子準々決勝は、今大会屈指のドラマチックな展開となった。石川県代表の北陸学院は、今夏のインターハイ王者・鳥取城北(鳥取県)を相手に、一時22点ものリードを許しながらも、驚異的な粘りで残り3分には2点差まで詰め寄った。しかし、あと一歩が届かず61-65で惜敗。試合後、2年生シューターの藤原弘大がメディア対応した。
今大会の藤原は、北陸学院の得点源の一角を担った。1回戦の成立学園(東京都)戦では3ポイント5本を含む24得点。3回戦の福島東陵戦(福島県)でも19得点を挙げ、その勝負強さと爆発力でチームをベスト8まで押し上げてきた。しかし、インターハイ王者との大一番、その勝負のメインコートで彼は苦しんだ。
徹底したマークとプレッシャーの前にリズムを崩し、得意の3ポイントシュートは7本放って成功はゼロ。2ポイントシュートを合わせてわずか4得点という、彼本来の姿からは遠い数字に終わった。

準々決勝では4得点に終わった藤原[写真]=伊藤大允
「今まで3試合に比べて、これほどタフなゲームはありませんでした。相手はインターハイ・チャンピオンという大きな肩書きがある。自分たちはそこに対して『ジャイアントキリング』を起こそうと全員で話し合って入ったのですが……。相手のディフェンスにはまってしまい、自分のペースで打てなかった。緊張もあって、本来のプレーが全くできなかったことが、本当に悔いに残っています」
試合は小笠原和真が32得点と大爆発し、神保旺介も12得点と奮闘して追い上げただけに、自身の沈黙が、藤原には何よりも重くのしかかっていた。
2年生ながら主力としてプレーをしてきた藤原にとって、この大会は「自分を育ててくれた3年生に恩返しをする場所」でもあった。
「試合に出られない3年生、ベンチに入れない3年生がたくさんいる中で、自分たち下級生がコートに立たせてもらっている。だからこそ、自分が3年生を支えるんだという強い気持ちで挑んだつもりでした。でも、最後はコミュニケーションの部分などで先輩たちに頼り、任せてしまった部分があった。もう終わってしまったことですが、もっと自分にできることがあったのではないかと思ってしまいます」
ウインターカップが終われば、新チームでの活動がスタート、藤原は最上級生となる。「来年は自分たちが引っ張る立場。この悔しさを糧に、もう一度自分たちでチームを作り直したい」と、藤原は涙を拭い、次なるステージへの決意を口にした。
また、今大会は、四日市メリノール学院中学出身の選手たちの活躍に注目が集まっている。現在の高校2年生が中学3年のとき、四日市メリノール学院中は全国中学校大会とJr.ウインターカップの2冠を達成。その中心メンバーたちは現在、全国の強豪校へと散り、それぞれの場所で頂点を目指しており、まさに「キセキの世代」と称していいだろう。

四日市メリノール学院中OBが多くを占める福大大濠[写真]=SoftBank ウインターカップ2025
その中で、本田蕗以、桜井照大、そして白谷柱誠ジャックの3人は福岡大学附属大濠高校(福岡県)、中村颯斗は東山高校(京都府)へ進学。中学時代に苦楽を共にしたチームメートは、強豪校の主力として今やトーナメントの至る所に立ちはだかる最大のライバルだ。
藤原は「(北陸学院の)濱屋(史篤)先生のバスケット、自分の持ち味であるシュートを活かせるアップテンポなスタイルに惹かれた」と、進学を決意。入学後は、ディフェンスの強度や状況に応じた緻密なアジャストを学んでいる。「ここに来て、シュートだけでなく、ドライブからのペイントタッチやアシストなど、ハンドラーとしての役割も求められるようになりました。そこを徹底し、安定させることが来年への課題です」。
「(別々のチームに行った仲間の存在は)もちろん意識します。プレーの面でも、中村のシュートや本田のペイントアタックにまだ負けている部分がある。でも、僕が目指すのは『チームとして勝つ日本一』。そこだけは譲れません」
思い出されるのは、中学時代の恩師・山﨑修監督が事あるごとに話してくれた、「藤原がいたからウチは強かったんだ」という影での称賛だ。それを伝えると、藤原は「そんなことを言ってくれていたなんて……初めて聞きました」と、泣いていた表情が笑顔に変わった。
メインコートで味わった「3ポイント成功ゼロ」という現実。しかし、この苦い経験こそが、彼をさらなる高みへと押し上げる最大のエネルギーになるはずだ。インターハイ王者に肉薄した北陸学院の「キセキの世代」藤原弘大。彼の真価が問われる最終学年は、この瞬間から始まっている。
文=入江美紀雄
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