2025.08.17
東海大学に入学して間もない7月に退学し、プロの世界へ飛び込んだ渡邉伶音。福岡大学附属大濠高校時代にはチームをウインターカップ優勝に導き、アンダーカテゴリーの日本代表でも主軸として活躍。さらには、トップチームである男子日本代表(A代表)のディベロップメントキャンプにも選出された、日本バスケットボール界の将来を嘱望される逸材だ。そんな彼が新たな挑戦の舞台として選んだアルティーリ千葉では、これまで経験のない「3番ポジション」へのコンバートという大きな壁に立ち向かっている。
チームは現在、主力に故障者が相次ぐ苦しい状況にある。しかし、そのピンチは19歳の若武者にとって大きなチャンスとなった。先発定着を目指す渡邉は、3月11日に行われたアルバルク東京戦でもスターティングファイブに名を連ねた。東地区上位を争う強豪とのアウェー戦。試合は81-87で逆転負けを喫したものの、渡邉は32分18秒の出場で3本の3ポイントシュートを含む13得点、6リバウンドを記録し、出場時間や得点など多くのスタッツでキャリアハイを達成する堂々たるパフォーマンスを見せた。
「自分のポジションにケガ人が多くて、自分が長い時間出るんじゃないかという予測はできていました」と試合を振り返る渡邉。第1クォーターはフル出場を果たしたが、「久々の感覚だったので少し体に負担が来た部分もありましたが、アルバルクさんは後半に向けてもっとアグレッシブにやってくるだろうという気持ちの準備はできていました」と語る。
この日は、A東京の強力なウイング陣とマッチアップする場面も多かった。特にスコアラーのマーカス・フォスターとのマッチアップについて、「相手からすればサイズのある自分に対して、スピードで切っていけという指示が出ていたと思います。そのなかで自分なりに試行錯誤して、自分がつきやすい間合いというのを少し感覚としてつかめた部分はありました」と手応えを口にする。一方で、「後半にかけてのクラッチタイムの勝負強さ、ユーロステップでかわされたりしたときに、しっかり歯を食いしばって守りきれなかったのは悔しかった」と、トップレベルの選手の技術を肌で感じ、さらなる成長への糧としている。

A東京の得点源、フォスターとマッチアップ [写真]=B.LEAGUE
オフェンス面でも確かな進化を見せている。序盤から3ポイントシュートを沈めたことについては、「相手がアンダーしてきているときは迷わず打てと言われているので、そこを遂行できたのは良かったです」と振り返る。さらに、「ドライブに対してゴールへカットしていく動きは、自分にパスが入らなくても味方がシュートを打ったときにリバウンドが取れます。ただ、なかにいすぎるとスペーシングが悪くなるので、考えながらカッティングのプレーをもっと増やしていくべきだと思っています」と、状況判断の質も高まりつつある。
プロの世界での日々は、決して平坦な道のりではなかった。インサイドでプレーしてきたこれまでのキャリアから一転、プロの最高峰レベルで3番ポジションに挑戦することの難しさは想像以上だった。「最初からうまくいくわけがないという気持ちでやっていましたが、短い時間で悪い結果を残してしまうこともあり、正直楽しくない日々が続いていました」と率直な思いを明かす。
それでも、チームの危機が渡邉の意識を変えた。「自分が出ているからこそできるプレーをどんどんやらなきゃいけないし、ケガ人が帰ってきても自分を信用して使ってもらえる選手にならなければいけない」と語るように、前節の秋田ノーザンハピネッツ戦から強く意識し始めたというそのアグレッシブな姿勢が、この日のキャリアハイという結果につながった。
プロに入ってからの成長について問われると、「うちは相手の動きを読んでリードでプレーすることが多いので、相手の動きを見る力は伸びました。プロと学生バスケは全然違って1人ひとりの責任感も違いますし、スカウティングの遂行力も上がっています。今日はコーチにリバウンドに絡めと言われていたので、自分が取れなくてもチップアウトして残すというプレーは意識してできました」と冷静に語ってみせた。
アンドレ・レマニスヘッドコーチも、若き才能の飛躍に目を細める。「どの若い選手もそうですが、10分の3くらいのパフォーマンスのときもあれば、10分の7のときもあり、また10分の2に戻ってしまうというように波があるものです。しかし、渡邉選手に関してはこの1カ月で底上げができてきて、悪くても10分の5や10分の6といったパフォーマンスを出せるようになってきました。ティッピングポイント(転換点)に入ってきていると感じています」と評価する。

シーズンが進むにつれプロの顔になってきた [写真]=B.LEAGUE
さらに指揮官は、「これまでビッグマンとしてプレーしてきた彼が3番ポジションとしてスキルセットを増やしたいと望んで来てくれたことを、私はうれしく思っていました。今日はファウルアウトしたから最後に出られなかっただけで、32分出場して13得点、フォスターやビッグマンなどチャレンジングなマッチアップを任せながらリバウンドも6本取りました。19歳でA東京のようなチームに対してこれだけのスタッツを残せたのは非常に素晴らしいことです」と賛辞を贈った。
「19歳という年齢は言い訳にならない。もうプロなので」と力強く語る渡邉の瞳に、一切の妥協はない。新しいポジションへの挑戦も渡邉のポテンシャルを高める1つの要素でしかない。確かな自信をつかみ始めた19歳は、貪欲な成長意欲とコートで放つ存在感を秘め、A千葉にとってかけがえのない大きな武器となっていくはずだ。
文=入江美紀雄
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