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『BLACK SAMURAI』が日本の育成年代にもたらすものとは…松井啓十郎が現地で見た“世界基準”

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 八村塁が主宰する「BLACK SAMURAI」は、2025年に初開催された中高生向け育成プロジェクト「BLACK SAMURAI 2025 THE CAMP」で大きな一歩を踏み出した。NBAで実績を積んできたフィル・ハンディ氏を招き、全国から集まった選手たちが競い合ったキャンプは、日本の育成年代に“世界基準”を持ち込む試みでもあった。

 その現場にリードアシスタントコーチとして参加したのが、元バスケットボール男子日本代表選手の松井啓十郎だ。高校・大学時代をアメリカで過ごし、現役選手としての視点もあわせ持つKJが、BLACK SAMURAIの取り組みで何を見て、感じたのか。「BLACK SAMURAI」が日本バスケットボール界にもたらす価値を聞いた。

インタビュー=藤田皓己(バスケットボールキング編集部)

■初開催の現場で感じた“世界基準”

――昨年開催された「BLACK SAMURAI 2025 THE CAMP」にリードアシスタントコーチとして参加されましたが、率直に現場で感じた第一印象から伺えますか。

KJ 僕自身、初めてのことだったので全く想像がついていなかったのですが、フィル・ハンディがどんな指導をするのか、事前に動画などで少し調べていて、コーチとしても非常にワクワクしていました。

 実際に現場に入ると、八村選手がさまざまなドリルの中で自らお手本を見せてくれて、一ファンとしても「やはり八村選手はすごいな」と率直に感じましたね。フィル・ハンディの教え方を含め、キャンプ全体を通してアメリカらしいスケールの大きさを強く感じました。

――松井選手はこれまでも日米でさまざまなバスケットボールキャンプを経験されてきたと思いますが、それらと比較していかがでしたか。

KJ 僕が実際に参加したナイキオールアジアや、アメリカでのマイケルジョーダンキャンプやファイブスターキャンプなど、歴史ある大規模なキャンプに近い形式だと感じました。

 数日間、他のキャンパーと同じホテルで過ごし、朝から練習して、お昼を食べてまた夜に練習する。今回も八村選手がキャンパーのためにホテルを用意し、そこからアリーナに通うという形を取っていました。日本だと場所の確保なども含めて実現が難しい部分もあると思うのですが、世界基準の環境がしっかり用意されていたと思います。

■通常のクリニックとは異なる“競争”の場

――日本でこれまで行われてきた通常のキャンプやクリニックと、BLACK SAMURAIが取り組むビジョンとで、最も違いを感じたのはどのあたりでしょうか。

KJ 一番の違いは「競争させる」という点です。通常のクリニックは、地域のミニバスや小中学校の子どもたちを集めて、コーチ陣が教えたものを学んでいくスタイルが一般的です。しかし今回は、全国から中高生が集まり、同年代のライバルたちと競争して、最終的に選抜チームに選ばれることを目指します。一人ひとりが「選ばれたい」という強い思いを持っているからこそ、素晴らしいコンペティションが作れていると感じました。

――今年は名古屋がトッププレーヤー向けの完全招待制、富山では地元との交流など、イベントの会場ごとにターゲットが明確にカテゴライズされています。こうした取り組みについては、どうご覧になっていますか。

KJ 初開催だった昨年は、例えば「練習中の待ち時間を減らしたい」ということでコート1面にリングを3つ置いてみたり試行錯誤がありました。今年は2回目の開催ということで、内容や実施方法がさらにアップデートされていくと思いますし、カテゴライズ分けもその一つだと思います。

 トップ層が集まる名古屋のSUMMITでは、将来の日本を背負う同世代の選手たちが同じ場所で競い合います。チーム対チームの試合だと名門校同士の対決になりがちですが、キャンプは個の力がぶつかり合う1対1がベースです。自分の力をどう発揮し伸ばしていくか、その対決を見られるのは非常に良い取り組みです。

 八村選手がアメリカから素晴らしいコーチを連れてきて、そこで若い選手たちがスキルアップしていけば将来的な日本代表の底上げにもつながりますし、素晴らしい試みだと思います。

――参加していた選手たちの取り組み方で、特に印象に残っている場面はありましたか。

KJ 僕の担当グループは10〜12人ほどだったので、他のキャンパーをじっくり見る機会は限られていたのですが、その中でも仙台大学附属明成高校の今野(瑛心)君は印象的でしたね。フィル・ハンディがデモンストレーションを終えてドリルが始まる時、すぐに一番前へ並んで、一つひとつのメニューに100パーセントの力で真面目に取り組んでいました。そういう積極的な姿勢を持つ子は、やはりどんどん伸びるんだろうなと。実際、彼は最終的に選抜チームにも選ばれ、試合でもハードワークを見せて力を発揮していました。

■巨大アリーナでプレーする意味

――今回のキャンプの舞台は、1万人規模を収容できる「IGアリーナ」でした。この巨大な環境でプレーすることには、どのような意味があると感じましたか。

KJ アメリカのファイブスターやフープサミットなどもそうですが、トップレベルになるとあのような巨大なアリーナで試合をさせられるんです。八村選手には、日本の選手たちが将来世界へチャレンジしていく上で、1万人のお客さんに見られるプレッシャーの中で本来の力を発揮できるか、早いうちから経験させたいという狙いがあったのだと思います。この経験があれば、将来アメリカの大学などに進学した際にも、環境の変化に飲まれず、緊張せずにプレーできるはずです。

――観客を入れるというのも、これまでの日本のキャンプにはあまりない要素だったのではないでしょうか。

KJ そうですね。通常のキャンプのオールスター戦は、選ばれなかったキャンパーたちが周りに座ってトップ選手のプレーを見てモチベーションを高める、というクローズドな形がほとんどです。しかし、今回は一般のお客さんを入れているので、高校生たちにとっては「観客を満足させられるプレーができるかどうか」という大きなチャレンジの場になっていました。非常に良い試合内容でしたし、選手たちにとっては素晴らしい経験になったと思います。

八村塁とフィル・ハンディから得た学び

――中高生の選手だけでなく、指導者向けのクリニックも行われていましたね。

KJ フィル・ハンディがコーチ向けにQ&A形式で答えたり、フロアで直接指導したりする時間がありました。フィル・ハンディは本当にハードワーカーで、本来ならキャンパーに教えるだけで十分なはずなのに、「日本に来たからには…」と指導者たちへのコーチングも精力的にこなしてくれました。NBAのサマーリーグ期間中にもコーチ向けの指導が行われたりしますが、そういったNBAならではの取り組みを日本に持ち込んでくれたのだと感じました。

――松井選手ご自身にとって、今回のキャンプで得た最大の学びは何でしょうか。

KJ 世界のトップを走っている選手やコーチが来て、彼らの口から直接哲学を伝えられ、その行動を目の当たりにすることで「これが世界トップ基準なのか」と痛感しました。同時に、リードアシスタントコーチとして、それを子どもたちにうまく伝えなければいけないという責任も強く感じました。将来僕がコーチの道に進むかは分かりませんが、八村選手が考えていることやトップの基準に触れられたことで、自分の所属チームへの還元や、今後の練習の取り組み方への大きなヒントを得られたと思っています。

――現場で特に強く記憶に残っているエピソードはありますか。

KJ IGアリーナにたくさんのコートを作って、あれだけの素晴らしい環境でやれたスケール感は印象的でした。そして何より、八村選手のワークアウトを間近で見られたことは非常に貴重でした。30分という限られた時間の中で一切休まずにやりきる姿を見て、圧倒的な集中力と質の高さを肌で感じました。

――皆さん固唾を飲んで見つめていましたが、やはりあのワークアウトが八村選手の凄みを最も感じる瞬間だったんですね。

KJ 本当に見入ってしまいましたね。やっているメニュー自体は決して複雑で難しいものではないんです。ただ、ドリブル一つにしても、ポストアップの姿勢の低さ、ジャンプシュートの打点の高さ、体の強さなど、言葉では表せないような凄みがありました。あれは実際に生で見ないとイメージが湧かない次元のものだと思います。

――八村選手がキャリアの全盛期にこうした経験を日本の子どもたちや指導者に還元することの価値について、どう受け止めていますか。

KJ これだけ脂の乗った現役トップのNBAプレーヤーが、毎年日本でキャンプを開催してくれるなんて、本当にレアで贅沢なことです。彼自身の身体的・時間的な負担を考えても凄まじいことですが、それを犠牲にしてでもやってくれることに深く感謝しています。

 僕自身も小学生の頃にマイケル・ジョーダンと1対1をする機会があり、それがきっかけで「NBAに行きたい」と強く思うようになりました。今の子どもたちが現役トップのNBA選手に直接触れられるというのは、今後のバスケットボール人生を変えるほどの大きな出来事だと思います。

――まさに「お金では買えない経験」ですね。

KJ 間違いないです。昨年もものすごい倍率の中から選ばれた選手たちが参加しましたし、行きたくても行けない、見たくても見られない人がたくさんいます。そんな中で、僕自身もリードアシスタントコーチとして参加させていただき、本当にグッとくるものがありました。選手だけでなく、関わったコーチやスタッフにとっても、かけがえのない財産になるキャンプだと感じています。

■世界基準に近づくために必要なこと

――高校・大学時代をアメリカで過ごされた松井選手から見て、日米の育成環境における最も大きな違いはどこにあると感じますか。

KJ やはり「ハングリーさ」と「勝ち負けへのこだわり」が全く違いますね。日本だとバスケ部に入りたいと思えば、基本的には誰でも入部できます。でもアメリカはトライアウト制なので、実力がなければ落とされ、他のスポーツに挑戦するしかありません。常に競争の土台に乗せられ続ける環境です。それに加えて、「バスケで生活していくんだ」「絶対にNBAに行くんだ」というハングリー精神は、海外の選手の方が圧倒的に強いと感じます。

――今後、日本代表が世界でさらに上を目指していくためには、やはりアメリカのキャンプのようなエッセンスを取り入れていく必要があると言えますか。

KJ そう思います。現在、世界のバスケットは間違いなくアメリカがトップです。もちろん、すべてをそのまま真似する必要はありませんが、世界一の国から良い部分を素直に学び、積極的に取り入れていくことは、レベルアップへの一番の近道になるはずです。

――若いトップ選手たちが今後「世界基準」に到達するためには、どのようなアクションや素質が必要だとお考えですか。

KJ 高いレベルの環境に自ら身を置くことですね。僕自身、決して身体能力が高かったり身長があったりするわけではありませんが、アメリカに渡って「シュート」という明確な武器を習得して帰ってきたからこそ、日本代表にも選ばれることができたと思っています。

 日本国内だけでなく、アメリカでもヨーロッパでもオーストラリアでもいいので、海外に視野を向けること。転校までしなくても、夏休みや冬休みのキャンプを利用して少し環境を変え、厳しい競争の中で揉まれる経験を若いうちから積んでおくことが、世界基準を目指す上で非常に大切だと思います。

BLACK SAMURAI 2026 開催概要

▼Daiichi Life Group PRESENTS BLACK SAMURAI KOBE CAMP
日程:8月4日(月)~5日(火)
会場:GLION ARENA KOBE(神戸)

BLACK SAMURAI SUMMIT 2026
日程:8月6日(水)~8日(金)
会場:IGアリーナ(名古屋)

▼YKK AP PRESENTS BLACK SAMURAI 富山 Homecoming
日程:8月22日(土)
会場:YKK AP ARENA(富山)

BLACK SAMURAI 各公式サイト

▼Daiichi Life Group PRESENTS BLACK SAMURAI KOBE CAMP
https://blacksamurai.jp/2026/kobecamp/

▼BLACK SAMURAI SUMMIT 2026
https://blacksamurai.jp/2026/summit/

▼YKK AP PRESENTS BLACK SAMURAI 富山 Homecoming
https://blacksamurai.jp/2026/toyama/

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